「ずっと、お坊ちゃまコンプレックスがありました」新垣才が”ブランディング”に向き合うワケ
「7つの習慣」などの本の図解や、誰でも簡単にプレゼン資料がつくれる「シンプルスライドテンプレート」の配布、人の”強み”を客観的に引き出す「Twitterコンサル」で人気を集める新垣才さん。
なぜ彼は、「自分」のみならず、個人や企業の「ブランド」に着目し、育てようとするのか。
今、彼が取り組んでいることや、やりたいことの根底にある思いについて聞きました。
〈取材・文・撮影=ゆぴ(@milkprincess17)〉
——才さんは「図解」「スライド配布」「Twitterコンサル」など様々なことに取り組んでいるようですが、結局何をしてる人なんですか?
ひとつめは、ブランディングです。
SNSやWebメディアなどのコンサルを含め、個人・事業・企業のブランドを設計し、「らしさ」をつくる仕事をしています。
ふたつめは、経営者向け図解コーチングです。
アイデアマンタイプの経営者って、アイデアはどんどん思い付いて行動力も素晴らしい一方で、自分の頭の整理整頓が苦手だったり、経営者という立場上孤独を感じてたりするんですよね。
そんな経営者の壁打ち相手として、対話を通しながらアイデアを整理し、やりたいことの方向性を図解で可視化するコーチングをやっています。
基本的に「消去法」の人生だった
——そもそもなぜ、「ブランディング」に興味を持ったんですか?
僕、いわゆる ”お坊ちゃま” なんですよ。
(はい?)
「お坊ちゃまコンプレックス」があるんです。人生における大事な選択を、すべて消去法で決めて生きてきた、という。
もともと、僕はずっと「好きなこと、やりたいことがない」というのが1番の悩みでした。中学受験も、習い事も、親に進められるがままで。
自分で言うのも何ですが、基本的に要領が良いので、大体のことで80点は取れるんです。でも、結局ぜんぶ中途半端になって、100点は取れないタイプ。
小学生のときも泳ぐのが好きじゃなかったのにスイミングスクールに通っていました。普通にクロールまでは泳げるようになるけど、バタフライを習う前には辞める、みたいな。
——ほぉ…。
なかでも特に勉学系は得意でしたね。たとえば大学受験のときは、高校3年生の5月からカードゲームにハマったので、夏休みはまったく勉強せず、秋以降も参考書読みながらデッキを組んだりしてて。
受験当日は「これ落ちたな」と思っていたのですが、ありがたいことに第一志望の大学に合格していました。
(クラスに1人はいるよねこういう人)
——人生イージーかよ。その志望校はどうやって決めたんですか?
消去法で決めました。
「東京に行きたい」という思いだけは漠然とあったので、それを親に伝えると「学費的に国立だと嬉しい」「東京に行くなら地元の大学よりいいところにして」と言われて。
それで、友だちの志望校を聞いたら、たまたまその条件に合う学校だったので、「じゃあ自分もそこを目指そう」という感じで決まりました。
志望学部もいくつかあるなかで、「やりたくないこと」から考えていって、残ったのが「経営・情報・生命」の3学部だったんですよ。
あとは世間的に「これからはITの時代だ」というのを高校生ながらによく聞いていたので、「じゃあ情報かな」みたいな。
(マジで軸ねぇ)
でも、実際に入ってみたら、そこは「プログラミングが大好き」な人たちの巣窟だったんですよ。「一生プログラミングをしていたい!」「中学生からプログラミングしてました!」みたいな変態ハイスペだらけ。
そんな、1ヶ月かかるような授業課題を5時間で終わらせてしまうような人たちに囲まれているうちに、だんだんと自己肯定感が下がっていってしまいました。
「まわりは好きなことに打ち込んでいて、スキルもあるのに自分は何をやってるんだろう」って。
将来を考えると息苦しくなって、自分がこのままエンジニアになる想像をすると「嫌だなぁ」という気持ちが芽生えてきました。
でも、結局やりたいこともないので就活もせずに、大学院の情報学部にそのまま進んだのですが、とうとうメンタルブレイクして。入学1ヶ月で研究室を辞めて、引きこもりになりました。
「やりたくないけど、やりたいこともない」という穴にハマってしまったんです。
——それは辛いですね…。
はじめて挫折らしい挫折を経験しました。そこで改めて「自分は今までずっと、適当な選択をしてきたな」と思い、初めて自分をじっくりと見つめ直す機会をつくったんです。
自分が本当に好きなこと、やっていて楽しいことをいろんな視点から考えました。
そこで、自分は「物づくり」ではなく「人と関わること」が好きで、戦略的に考えながらも人を育てていく経営やマネジメントをやってみたい、という思いに気付けたんですよ。
やりたいことができたら、人が変わった
そこからの行動は速かったですね。
情報学部から経営学部への再受験を決めて、再入学してからは人が変わったかのように積極的になりました。
情報学部を専攻していたときは授業へのやる気もなくて、将来も描けないままボンヤリと受けていた僕が、経営学部では進んで手を挙げて発言するようになった。
あれだけやりたいことがなくて生き辛さを感じていたのに、次々とやりたいことが出てくるようになったんです。
興味の幅が増え、ファイナンシャルプランナーや中小企業診断士の勉強もしましたし、就活にハマり、1年間で1,000時間使ってリサーチやインターンをしてました。
——1,000時間も!
「やりたいことがない」人から、「やりたいことが多すぎる」人になったんですよ(笑)。
あとは、オンラインサロンに入り、そこで「図解」という新たな自分の強みも見つかりました。僕、世の中が全部「図」で見えるんですけど。
(!?)
でも、それは昔から自然にやっていたことだったから、普通のことだと思っていたんです。
いつもとは違う環境で周りの人たちと接する中で、「どうもこれは自分の強み、自分らしさらしいぞ」ということに気付きました。
気付かなかったけど、「好きなこと」や「強み」は自分のなかに眠っていたんです。
「うまくやる」のではなく「らしくやる」こと
「何者にもなれてない」と感じるのはとても辛い状態です。僕も、「自分はこれだ」という軸もないし、自信をもってできることもなかった。
でも、やりたいことが見つかってから、それまでの自分は…僕の場合は適当に過ごしていたんだな、ということに気付きました。
ある意味で怯えていたんだと思います。他人と比べてしまえば、自分よりうまくできる人を羨んでしまったり、傷ついたりするじゃないですか。
でも、大切なのは「自分らしさ」なのだということに気付きました。
それが、僕が今やっていることに繋がっています。
——自分らしさ、ですか。
はい。最近「らしさ」についてよく考えるんですけど、「らしさ」って、自分の価値観に合っていて、「好き」か「得意」を活かしていることだと思うんです。
世の中には、昔の僕みたいに「自分らしさ」が見えないまま、やりたくないことを「なんとなく」やっている人がいます。
でも、それって実は多くの人に当てはまっていて、本当は自分らしく過ごしたいけれど、その方法がわからない状態なんだと思うんです。
なぜなら「自分らしさ」って、自分一人で気付くことは難しいから。
だから、そんな人たちが、その人らしく生きられるような社会を作りたい。企業も一緒ですね。「らしさ」が溢れる企業ってやっぱカッコいいし素敵じゃないですか。
そして、「らしさ」を生み出し引き出し、世の中に伝えて、世の中からもそう思ってもらうのがブランディング。
僕が今、ブランディングや経営者へのコーチングに取り組む根底には、そんな思いがあります。
〈取材・文・撮影=ゆぴ(@milkprincess17)〉
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