明るい夜に出かけた僕は

僕がラジオと出会ったのは、高校1年の時。友人が聴いていた「SCHOOL OF LOCK!」を家にあったラジカセで聴き始めたのが始まりだった。

この頃から学校に通うことが辛くなり、まともに授業が受けられなくなっていた僕にとって、パーソナリティのとーやま校長やあしざわ教頭は当時の僕の心の支えとなっていた。

このSCHOOL OF LOCK!をきっかけに、他のラジオも聴いてみようと新聞のラジオ欄を見てみると、AMの方に当時放送されていた「バカリズムのオールナイトニッポンGOLD」の文字が。これが深夜ラジオにハマるきっかけになり、「オードリーのオールナイトニッポン」、「アルコ&ピースのオールナイトニッポン」シリーズ、「朝井リョウ・加藤千恵のオールナイトニッポン0」などの番組を聞き漁るようになる。

それからは、生活の一部にラジオがあり、そのおかげでラジオとともにつらい時期を乗り越えることができた。


そんな僕も大学に合格し、素晴らしいキャンパスライフを送るべく、あるサークルに入部すると、そこにもラジオがあった。地元のコミュニティ局で番組を持つことになったのだ。

初めは裏方仕事を好んで多くやっていたが、ラジオ業務にも慣れてきた僕はいつしかパーソナリティをするようになり、今では、週末の朝に毎週マイクの前に座っている。いっちょまえに曲フリなんかしちゃっている。「くるり」で「東京」とか言っちゃっている。人と会話するのが難儀だった数年前の自分が今の状況を見たらびっくりでは済まない。


そんなラジオに取り憑かれた僕は、今年の春に就活を迎えた。もちろんメディア志望で、様々なマスメディアを受けた。パーソナリティ経験を武器にして。


しかし、そうは甘くなかった。全敗。


「マスコミ向いてなかったんだよ。」笑いながら友人に嘲る僕。心で泣く僕。

落ちるのはなんとなく分かっていたし、ダメ元の気持ちではいた。だけどちゃんと落ち込んだ。


ただ、ありがたいことに他の業種で内定を複数貰うことができ、来春から晴れて社会人になれることになった。嬉しかった。

だけど、諦めきれない。なんだか、ラジオとの関係を整理したい。そう思った。



僕は、気づいたら卒論にラジオを盛り込んでいた。

僕は文学専攻で、文学作品についての卒論を執筆することになるが、テーマに選んだのは、『明るい夜に出かけて』。

佐藤多佳子『明るい夜に出かけて』は、アルコ&ピースのオールナイトニッポンが物語内に登場し、大きな役割を果たす作品だ。

僕がこの作品を選定した故に、真面目なゼミの雰囲気で、「アルコ&ピースのオールナイトニッポンとはどんな番組ですか?」、「この平子氏という方はどういうキャラクターですか」みたいな質問が飛び交う。つい不意に笑ってしまいそうになることもある。

そんな『明るい夜に出かけて』には、富山という主人公が登場する。この富山に僕はシンパシーを強く感じている。というのも、ラジオ好きで同じコンビニでバイトをしているという点や、高校時代に学校と距離を置いていた僕と同様に大学を休学している富山という、何か高校時代にもがき苦しんでいた僕の姿を見ているような気持ちになる。

僕は、この数年前の自分の生き写しのような富山について論文を書くことで、過去への決別をして自分の気持ちを整理しようと考えた。そしてラジオへの未練も。

闇夜から過去の僕と富山を連れ出すために、僕は今日も明るい夜に出かける。



なんて、かっこよく終わりたかったけど、ここにきてアルピーの酒井さんが結婚という報道が。僕はまだラジオに囚われ続けるのかも。

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