nreal がAWE2019で見せてくれた「消費者向けARグラス時代の幕開け」
先日、AWE USA 2019という世界最大のARコミュニティイベントに参加してきました!
このイベントで「nreal light」というARグラスの価格やスペックの公式発表があり、自分に大きな衝撃を与えました。
今回のブログではAWEでのnrealのデモ体験がどんなものだったのか、そして自分はそこからどんな可能性を感じたのかについて紹介します。
AWE USA 2019について
AWEは「Augmented World Expo」の略称で、毎年ARのキーパーソンや企業が数多く参加するARの世界最大コミュニティイベントです。
今回自分が参加したAWE USA 2019は10周年目で、AWE全体として特に気合が入ったものになっていました。毎年参加されている方から聞いた話では、ここ2,3年でかなり人数や規模が拡大したといいます。
今回はアメリカのサンタクララにある「Santa Clara Convention Center」という施設を丸々貸し切っての開催となりました。
nrealとnreal lightについて
nreal は中国のARハードウェアスタートアップで、「nreal light」というARグラスを開発しています。
元Magicleap のエンジニアを中心に立ち上げられており、「手軽に使えるMRデバイス」を開発することを目標としています。
今年1月に開催されたCES 2019でもnreal lightは展示されており、CESでのアワードのBest Startupに選ばれるなど、以前から注目されているスタートアップでした。
AWE USA 2019では、二日目の朝のセッションで姿を見せ、今まで公式に語られることなかった価格や発売時期、スペックなどについて正式発表されました。
中でもnreal lightの価格が「$499」という破格の数字で発表された際には観衆から拍手が巻き起こるほどの興奮が会場を包み込んだのが印象的でした。
その他発表された詳細なスペックや情報については長くなってしまうので本記事では割愛しますが、以下の自分のツイッターやMoguraVRさんの記事を参考にしてください。
6DoFトラッキングで平面検知やイメージトラッキングもできるので、基本的には「ARKitなどのスマホARで実現できるARコンテンツをメガネで実現できる」と考えるとわかりやすいと思います。
デモブースでの3つのAR体験
今回のAWEでのnrealのデモブースには3つのタイプのデモが用意されていました。
1つ目は「Future Home」という未来の家を模した空間での展示です。
仕切られたデモスペースにはソファと机、電気スタンドが置かれ、リビングルームのような空間を模していました。
こちらの展示はコンテンツとのインタラクションもあって、個人的に一番感動したデモになります。
最初に体験者がソファに座ってnreal lightを掛けると右手に大きな音符が描かれたパッドとカラーピッカーがARで見ることが出来ます。
nreal lightに接続されているAndroidのスマホがコントローラー代わりになっていて、画面をタップして選択などすることができます。
音符の箇所を選択するとnreal lightの指向性スピーカーから音楽が流れはじめ、カラーピッカーで色を指定すると電気スタンドのライトの色がカラーピッカーで選択した色に変化します。
これはいわゆる生活空間でのIoTとARを組み合わせた非常に実践的なデモで、将来的に家電をnreal lightを通して操作したりすることが実感できました。
また机の上に目をやると仮想のレーザーポインタが用意されていて、コントローラーでそれを拾って床にポインタを指すとこれまたARで描画された仮想の猫がその指した先を追いかけるという「ARねこじゃらし」も体験できました(笑)
机にマーカーが貼ってあるため、机と床の高低差を認識できたため、床を走り回っていた仮想の猫が机の上に飛び乗ってくるような場面もあり、びっくりして思わず声を上げてしまいました。
くっきりと猫が描画されていたので、猫の実在感がかなりあって、nreal lightがあればアニメ「電脳コイル」のデンスケのように「バーチャルペットを飼う」というのも夢ではなくなるなと感じました。
またこのFuture Homeには他に「AR Cinema」と「Shopping」というアプリが用意されていました。
「AR Cinema」は空間に巨大なARスクリーンを設置して、100ほどある映画の中から自由に体験者が選択した映画を見ることができるというものです。
ARのメリットを活かして、部屋のどこにでも、どんなサイズでも設置することができるというのをデモのなかで体験できました。
また「Shopping」では空間上に2D UIで家具の一覧が表示されており、家具を選択すると空間上に3Dでその家具をフィッティングできるというものでした。
もちろん家具の色やサイズも変更することができ、未来のオンラインショッピング体験をリアルに体験できました。
nreal lightが一般消費者のなかでもつかうことができるということを身をもって体験できる素晴らしいデモでした。
2つ目は台の上に置かれたマーカー上にARコンテンツが表示されるというデモです。インタラクションなどはないARコンテンツが10種類ほどみることができました。
このデモでもnrealの輝度と空間認識の凄さに驚かされました。これまで体験したARグラスで一番「目の前に在る」と感じることができた体験だったと思います。
グラス自体がサングラスのように暗くなっているので、輝度が高くみえるというのもありますが、それでもARコンテンツの存在感を出し、安定してトラッキングさせているのは素晴らしかったです。
頑張ってスマホでnreal lightから見える風景を撮影した動画がこちらになります。くっきりと空間に描画されている様子がおわかりいただけると思います。
視野角も申し分ないですし、何よりもnreal lightが軽くて「ARグラスを掛けている」というのを忘れてしまいそうになるほどでした。
3つ目は一番簡易的なスタンディング型のブースで、立ってさくっとnreal lightが体験できるようになっていました。
こちらが体験時に見れるコンテンツの様子です。この動画でもnrealからみれるARがくっきりと浮かんでいることがわかると思います。
展示コンテンツの幅を広げて、ガッツリ体験したい人からさらっと体験したい人まで、できるだけ多くの人にnreal lightを生で体験してもらおうという姿勢もnrealの素晴らしい点の一つだったと思います。
これは消費者向けARグラスの「正解」ではないが「始まり」である
nreal lightはARグラスとして必ずしも正解でも完璧でもないと思っています。
MagicleapOneなどと違って、まだハンドジェスチャもアイトラッキングもできませんし、コントローラーもまだスマホです。
デモブースで話したnrealメンバーもまだ屋外での使用には問題があるという話をしていました。グラス部分がサングラスなので夜など暗い場所で現実空間を視認しにくいという問題もあります。
しかし「消費者向けARグラスの始まり」としては申し分ないところまで来たと思っています。
値段もスマホ周りの他のガジェットの一つを買うのとそこまで大差がないほどに価格が下がりました。
接続するスマホにはSnapdragon855が搭載されていることが求められますが、nreal lightの正式発売の2020年までにはそういったスマホもそこまで価格的に問題にならないと考えています。
nreal の CEOもセッションのなかで2019年末には600万台、2020年には1300万台のスマートフォンにSnapdragon 855 が搭載される予定と話していました。
nrealのセッション中にはQualcommのXRのトップも壇上に登場して、nrealを後押しするなど異例の対応を見せていて、かなりQualcommがnrealに力を入れていることがわかります。
先程も記載したようにnreal lightで実現できるAR表現はだいたいARKit, ARCoreでできることと同等なので、これまでARKit, ARCoreでARコンテンツを開発してきた知見はnreal lightを使ったARアプリ開発に必ず生きてきます。
なので、かなり多くの人がすでにnreal lightの開発者として見込めることになると考えています。
日本でもKDDIが日本展開、実証実験を全面バックアップすると発表したので、日本でのデベロッパーの盛り上がりにも期待できそうです!
そしてセッションで登壇していたnrealのCEO、Chi Xuもかなり切れ者で、nrealという会社自体にかなり期待が持てると感じました。
初代のiPhoneだって、遡ればたくさんの不便な部分や完全ではないところがありましたが、そこから今世界ではiPhoneを知らない人はいないところまで生活に欠かせないような存在になっています。
少し大げさかもしれませんが、自分はnreal lightは初代iPhoneと同じくらいのインパクトを与えて、世の中の消費者向けARグラスの普及の足掛けになると考えています。
AWE Nite Tokyoのコミュニティとイベントの紹介
今回はnrealについてご紹介しましたが、AWEで登場したデバイスやデモについて知りたい方々はAWE Nite Tokyoが開催するAWE USA 参加報告会が開催されます。
またTwitter、FacebookでAWE Nite Tokyoからも多くのAR情報を発信していますので、こちらもぜひご覧ください!
イラストレーター紹介
今回、nreal lightのデモ体験をより読者の方々に伝わりやすくなるように、デモ体験の挿絵を伊藤ダミアンに描いていただきました!
彼女はAR/VRに精通しながら、それらの情景や魅力をイラストに落としこむ力もあります。彼女にAR/VRのコンテンツのイラストを描いてもらうとよりコンテンツの魅力を発信しやすいと思うので、もしイラストを依頼されたい方はTwitterからDMにてご連絡してみてください!
最後に
弊社MESONではARを使った消費者向けのアプリケーション開発を様々な企業の方と一緒に手がけています。
MESONはARサービスを企画から開発、デザイン、そしてその後のグロースまで全て手がけながら、企業の方と一緒に多くの人に使われるARサービスを創り出していきます。
もちろん将来的にはnreal lightを使ったARコンテンツも開発する予定です!
そういったARコンテンツの開発にご興味がある企業さま、もしくはMESONでAR開発に携わりたい方はぜひ弊社ホームページ、もしくはTwitterのDMからご連絡ください!
一緒に多くの人々に使われるARアプリケーションを開発しましょう!
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