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鏡顔|#毎週ショートショートnote |1分

 妹のアンナの表情は、いつも僕と同じになる。まるで鏡の中の顔のように。

 兄妹で遊んでいる時には笑顔。だけど、僕が足の小指を本棚にぶつけると、自分が痛いわけでもないのにアンナは今にも泣きだしそうな顔になる。

 やはり母さんがいなくなってから共感力が強くなったのだろうか。一人で僕らを育ててきた母さんが不慮の事故で亡くなったあの日、何も分かっていないであろうアンナが僕をじっと見て、わっと泣き出したのが始まりだった。そんな姿を目の当たりにし、僕はどんな手段を使ってもアンナを守ろうと誓った。そして、自分勝手な理由で母さんと離婚していた父さんに助けを求めた。

 しばらくして父さんが僕らを引取りにやってきた。僕が少し安心して笑顔になったとき、アンナは僕の方を睨んでいた。あの日以来、アンナが僕と違う表情をしていたのは初めてだった。何故だろうと思った直後、アンナの視線の先が、僕の顔よりも少し高い位置にあることに気付いた。

「アンナはずっと、僕じゃなくて、僕の後ろに憑いている、母さんと同じ表情をしていたんだね?」 

 僕が真剣な顔でそう問いかけると、アンナは満面の笑みを浮かべた。

(了)


 たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
 今週は「鏡顔」とのことです。ご企画ありがとうございます!

 一週間に一本くらいは何か書きたいのですが、そう決めてしまうと「ノルマ」や「タスク」みたいになってしまうことを恐れています。たま~に書きますので、お付き合いいただける方は今後もぜひ!

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