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0から作る難しさ、楽しさ。迷いを経て見えてきたものとは|デザイナーインタビュー

2021年4月、アクアリングが企画・制作したブラザー工業様のWebコンテンツ「ORIGAMI LETTER」が、ドイツ「iFデザインアワード2021※」において、最優秀賞である「iFゴールドアワード」を受賞しました。

そこで、「ORIGAMI LETTER」プロジェクトにデザイナーとして参加した顧 然(ぐー らん)さんに、自身のデザインに対する考え方やプロジェクトの裏側をうかがいました。
運用の仕事を中心に経験を積んできた顧さんですが、クリエイティブを0からつくる仕事に取り組むことでデザインに対する考え方にどんな変化があったのでしょうか?

iFデザインアワード
iFデザインアワードは、世界的に最も権威あるデザイン賞の一つです。ブラザー様と制作した「ORIGAMI LETTER」はその中から特に優れたデザインと判断され、2020年にコミュニケーションデザイン部門のゴールドを受賞しました。
顧 然(ぐー らん)
2017年中途入社。大学ではグラフィックデザインを専攻し、卒業後デザイン会社に入社してWebデザイナーとしてキャリアをスタート。その後アクアリングに入社、現在は既存サイトの運用から新規Webサイトのグランドデザインまで幅広くデザイン活動を行う。


アクアリングで実感した大切なスキル

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——具体的なプロジェクトのお話の前に、顧さん自身について少しうかがいたいです。
顧さんがアクアリングに入社を決めたきっかけはなんだったのでしょうか?

アクアリングは、前職の先輩が働いていたのでその繋がりで紹介してもらいました。ちょうどその頃イラストレーターの道に進むことも考えていて迷ったのですが、アクアリングのほうが将来的に大きな仕事ができそうだと思い入社を決めました。

——アクアリングに入社して、仕事の進め方や考え方に変化はありましたか?

前職はスピード重視・効率重視で修正はほとんど入らず、自分がつくりたいものをつくっていたので、入社当初は仕事の粒感や価値観の違いにかなり戸惑いました。

Webデザインの仕事はただphotoshopが使えればいいわけではなく、「情報を整理する力」と「コミュニケーション能力」がかなり重視される仕事だなと思います。

——具体的に、「情報を整理する力」や「コミュニケーション能力」を求められていると感じたエピソードがあれば教えてください。

「情報を整理する力」については、複数のページをまたいで見出しや本文のスタイルを統一していく、モジュールの概念を知ったことですね。

アクアリングに入社するまではモジュールの概念を知らなかったので、同じサイトなのにページごとに違うデザインになってしまっていて……。

モジュールを意識し始めた当初は、1つのページの中ではそのスタイルがうまく機能していても別のページに流用すると全くきれいにレイアウトできないこともありました。
汎用性を持たせることや、どの情報を一番目立たせるかといった優先順位をつける考え方が足りなかったなと思いますね。

「コミュニケーション能力」に関しては、前職ではデザイナーがお客さんとのやりとりをすることはなく、すべて営業さんを通して話が来ていました。でもアクアリングの場合、運用でも直接お客さんと話す機会が多くて。最初はそれがすごく怖かったです。

——わたしも入社したばかりの時はそうでした。
新規Webサイト構築の場合、さらに上のレイヤーでデザインの根拠を説明する機会もありますし、背伸びできる環境なのかもしれませんね。

そうですね、成長できる環境があることはとてもありがたいです。


純粋に「見る人を楽しませる」ものをつくる

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——顧さんが今まで関わってきたプロジェクトについて教えてください。

運用担当で入社して、さまざまな案件に携わってきました。LPなどの小さめの案件が多かったのですが、最近はある程度長期の案件も担当しています。

——運用担当として入社されたのは、なにか理由があったからなのでしょうか?

理由があったわけではなく、当時募集があったのが運用担当のデザイナーだったんです。ただ、ゆくゆくは大きめの案件もやってみたいという話は入社時からしていました。自分が目立つのは得意じゃないですが、自分がつくったものはとにかく目立ってほしいという欲があります(笑)

——今年、「ORIGAMI LETTER」でiFデザインアワードを受賞されましたよね。こちらのプロジェクトの概要を教えてください。

折り紙という日本の伝統文化を通じてメッセージを伝えることができるコンテンツです。折り紙はもともと和紙を折り目正しく折って心をこめて包んで渡す「折形」という礼法からきていて、メッセージを折り紙のかたちにして送ることで、メッセージに想いを込めて伝えようというのがコンセプトです。もともとドバイ万博に合わせた企画だったので、日本の文化とイスラム美術の要素を融合したデザインになっています。


——ドバイ万博で日本の文化を伝えるというテーマの中で、どのようなプロセスでデザインコンセプトを固めていきましたか?

クリエイティブに関しては比較的自由度が高かったので、最初はとにかくインプットをひたすらしていました。ドバイ万博自体の情報があまりなかったため、ドバイやイスラム圏の文化に関することからインプットをしてアイデアを詰めていきました。

イスラム圏は偶像崇拝が禁止されているので、文字を装飾として使う文化があります。そこで、折り紙の柄にも文字を使いたいと思い、「A letter for you」という文字を装飾として入れています。

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▲鶴の折り紙展開図。羽の部分に「a letter for you」という文字が入っている


——サイトに使われている、アラベスク調のテクスチャにも由来があるのでしょうか?

はい、鶴を折って開いた時の展開図をもとに作りました。鶴は日本の折り紙の代表格でわかりやすいので、鶴をモチーフとしています。

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▲背景に広がる、アラベスク調のテクスチャ


——すごく繊細で、日本らしさも伝わってくる美しい模様ですね。
0からクリエイティブをつくることは、これまで携わってきた運用とはまた違った難しさがあったと思いますが、どこに難しさを感じましたか?

最初にインプットする期間を作ること自体、今回が初めてでした。私が携わっている運用はお客さんから提供された情報や要望がまずあって、それに対して最適解を提案していく仕事が比較的多いです。それが特になく0から考えてくださいという依頼は初めてでしたし、実際に作ってみても正解かどうかわからなくて。

プロジェクトメンバーにフィードバックをもらっても、どの方向に修正すればいいんだろう?ともやもやしていました。
かなり紆余曲折しましたが、最初期に提案したラフデザインに近いテイストに落ち着きました。でもその紆余曲折があったからこそ、最初の案が良いと判断できたんだと思います。

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▲初期デザインイメージ

——正解を探す作業は、美術系大学の課題に通じるところもありますね。

そうですね。ただ、課題とは違ってクライアントがいて、その先にユーザーがいます。自分の好きなものをただ作っていればいいわけではないので、そこが難しいところです。どうしてこの見た目にするのかという説明は必要ですし、かといって全てを理屈で説明できるものはつまらないので…そのバランスをつかむのに苦労しました。

——このプロジェクトで自分が成長できたと思うポイントを教えてください。

だいぶ考え方が変わりました。アクアリングに入ってからずっと運用案件をやっていたので、わかりやすさに視点が狭まってしまい、学生の頃に感じていたビジュアルデザインをつくることの楽しさを長らく忘れていたな…ということに気付かされた案件でした。

——0からつくるのは大変ではありますが、生み出す楽しさがありますよね。

そうですね。この案件も最初は正解を探さないといけないという考え方で取り組んでいて苦しかったのですが、もっと単純に「見る人を楽しませる」考え方をベースに進めていいんだ!ということが新たな発見でした。

もともと大学の時は「単純に楽しいからつくる」という感覚でグラフィックを作っていたので、その気持ちを思い出しながら作ることができて楽しかったです。

情報を整理する力と、ものづくりを楽しむ視点のバランスを大切にして今後もデザインしていきたいと思います。


自信を持ってデザイナーと名乗れるようになりたい

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——これからアクアリングでやってみたいこと、挑戦したいことはありますか?

それこそ「ORIGAMI LETTER」のような世界観を作り込むような案件があれば、チャレンジというかリベンジしたいですね。

——やり残したことがあったんでしょうか?

そうですね、今だったらもうすこしスマートにできたんじゃないかなと思うところがあって。

グラフィックの世界観をもっと明確につくりこんで、はっきりとした体験イメージを想起させられるデザインを次はつくりたいと思っています。たとえば、せっかくアラベスク文様を使用するコンセプトだったので一面アラベスクのモスク内部に入った瞬間の感動を想起できるような。

あと、今思えばもっと自分本位でもよかったんじゃないかなと。自分の考えをしっかり反映すべき部分も他のメンバーに正解を求めがちになってしまい、これなら否定はされないかな……と消極的になってしまったところもありました。

自分はこういう絵がつくりたいんだ!という想いをまずは自信をもって表現できるようにしたいです。

——自分が思い描くものを積極的にアピールしていくことが大事ですね。
では、顧さんは今後どんなデザイナーを目指したいですか?

お客さんに会いに行くときに、「デザイナーです」と言うことにまだすこし引け目を感じてしまっていて。お客さんの立場になってみると「クリエイティブは全部あなたにお任せすればいいのね」となると思うんです。ただその期待に応えられるだけの実力がまだないと思っていて、知識やスキルをもっと身につけたいです。

あと、単純にデザインを作るだけではなく、それ以外の強みがあるとよりいいなと思っています。イラストとデザインの仕事を両立している人が世の中にはいますが、そんなハイブリッドなデザイナーになりたいです。

——自信を持ってデザイナーと名乗れるようになるために、どういうところを伸ばしていきたいですか?

自分で手を動かしたいほうなので、できる範囲を広げたいと思っています。
例えば、イラストを素材として使いたいという時にレンポジを探すのではなくて自分で描けたり、サイトで使う写真を自分で撮れたり。そういうグラフィック的なデザインスキルを伸ばしたいですね。


インタビューを終えて

ビジュアルデザインをつくる楽しさを長らく忘れていた、と語ってくれた顧さん。
運用担当として情報を整理する力やコミュニケーション能力を培ってきたからこそ、ユーザーへの伝わりやすさとビジュアル表現の両側面にこだわったクリエイティブをつくることができ、結果的にアワード受賞につながったのではないかとお話を聞いていて思いました。
顧さんがこれからつくるデザインが楽しみです。貴重なお話をありがとうございました!


アクアリングでは、一緒に働く仲間を募集しています。
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