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給与額は、「自分」で考える。 「自己申告型給与制度」を導入して2年。 変化を振り返る。

コーポレートデザイングループの原( @y_hara_aquaring )です。
「自己申告型給与制度」を採用面談で紹介する際に「そんな制度があるんですね。はじめて聞きました。」という声を耳にします。

そこで、今回は当社が導入している「自己申告型給与制度」と「導入後の変化」についてお話します。

制度の細かな運用方法は常にアップデートしていく必要もあるので、今回は「この制度がなぜAQUARINGにマッチしているのか」にポイントを絞り、お伝えしたいと思います。

AQUARINGの「自己申告型給与制度」とは?

まずは「自己申告型給与制度」の概要を簡単にご説明します。
この給与制度の特徴は、「過去の実績」に対する評価ではなく、「未来の貢献(半年後)」に対して、それに値する「希望給与額」を申告する制度です。つまり、「組織への貢献内容」=「給与額」を自分で考え申告するもので、給与額の自己申告はあくまで副次的なものとなります。

給与額は申告がそのまま反映されるのではなく、当社では役員との面談(貢献面談)で決定します。会社(役員)としては、社員一人ひとりの成長や事業の前進、会社全体の成長という視点で給与額を承認しているので、給与を「投資」と捉えています。貢献内容が実行されなければ、会社は投資が失敗ということになるわけです。

ちなみに、申告額と貢献内容が釣り合わない場合は、役員は給与額を下げるという考えではなく、基本的に貢献内容の難易度を上げることを一緒に検討します。こうした話し合いを通じて、会社としての期待するレベル感や、強化したいポイントを伝えています。また、貢献内容の難易度が高いのに申告額が少ない場合は、役員から市場価値も考慮しながら給与額を逆提示して、全体の公平性を保っています。

給与額は「結果に対する対価」ではなく、「未来の貢献に対する投資」と捉えているので、「投資」を成功させることが、経営にとっては重要になります。そのため、経営方針を伝える努力や、3か月に一度の頻度で、進捗状況を確認する面談を実施しています。面談では、貢献内容が適正かどうか。進捗が芳しくない場合は、原因を一緒に探り、実現の確度を上げていきます。つまり、「貢献できること」を社員自ら考え、その貢献の実現を「会社が応援する制度」とも言えます。

◎制度のポイント
・社員は、未来(半年間)の貢献内容を自分で決める。
・貢献内容に応じて、それに見合った給与額を社員が自ら考え申告する。
・貢献内容は、役員と社員が面談で話し合い決定となる。
・役員は、社員への「投資」として給与額を承認する。
・貢献内容と給与額が釣り合わない場合は、貢献内容の難易度を上げる調整をする。

「社員視点」からみる変化と課題

 「チーム」×「キャリア」で考えることで、
「貢献内容=成長の起点」に。

この制度は、会社全体やプロジェクトチーム、社内タスクチームなど、あらゆる「チーム」への貢献を自分で考え、実行することで成立します。

貢献内容は「自分ができること」を起点に、「将来的に自分がなりたいキャリアにむかって必要なこと」と「現在のチームや組織に必要で、かつ自分が貢献できること」を考えます。つまり「自分の成長」と「チームへの貢献」という、両側面が重なり合う部分を自分で見つけて決定するため、自分の成長と組織全体を見つめる機会になります。自分の強みを伸ばすこと、逆に克服した弱点の強化や、将来的なキャリアを考えることから、自ら挑戦したい業務を決めることは、成長の起点にもなります。

また、チームや組織の状況を社員全員が主体的に見渡すことになるため、経営側や他のメンバーが気づいていない「課題の発見」とともに、気づいた課題に「解決策の提示」がされるので、全方位的に改善も加速されていくメリットがあります。

経営陣だけではなく、オーナーシップの視点で考えられる社員が増えることが、当社の目指す会社の姿です。このように、自分と組織の視点から「自律的」に貢献を考え、実行できるようになることが、この制度導入の目的でもあり、その実現にも役立っています。

「実行する責任感」を獲得することで、個人の成長に繋げる。

誰かに言われてやるのではなく自分で決めたことは実行性も高くなりますし、実行性を高めるための努力そのものが、自分の成長につながることも大きなモチベーションとなります。

会社と貢献内容を決めることは「貢献内容を実現するための中心的な役割を会社から任される=実行する責任を負うこと」になります。この責任感こそが実行性を高め、ゴールに向かうための推進力につながり、個人の「成長」につながります。

貢献内容は、単に個のスキル習得をゴールにするのではなく、「会社全体の成長」にどのように貢献できるかの視点で考えます。特に社内の横断的なプロジェクトでは、推進するための仕組みを考えることや、状況が停滞しているとしたらその理由を見極め進める経験が実際に積みやすく成長の機会が期待できます。

全員が「挑戦している」実感を持てるように。

自分の掲げた貢献内容をいかに実現できるかは、その人の実行力や推進力が問われるので、推進力が弱い人にとっては苦しい側面があるのも事実です。そうした状況をリカバーできるように、各ユニット内で相談をしたり、役員が面談時にアシストしたりして、徐々に改善できていますが、全社的に推進力を向上させる工夫は、さらに必要だろうと思っています。

また、実際に挑戦したいと思ったことに適したプロジェクトが生まれるとも限りませんし、クライアントワークである以上、100%すべてが自分たちの意向で制作できることは、ほとんどありません。そのため、クライアントへの提案や受注の方針にどのくらい幅を持たせていくのかは、難しい課題でもあります。

しかし、一人ひとりが成長できなければ、会社そのものの存続も危うくなるため、目先の数字的な受注額ではなく、みんなが挑戦したいと感じる案件へと育てていくことが、中長期的な視点で必須だと考えて取り組んでいます。全員のキャリアイメージやスキルセットを改めて確認し、受注案件と結び付ける試みを始めていますが、絶賛試行錯誤中というのが現状です。

課題はまだまだ多いのですが、全員が「挑戦している実感」を持てることを目指し、まさに今取り組んでいる最中のため、半年後にいいご報告ができることを目標に頑張りたいです。

「会社視点」からみる変化と課題

社員を信じ、成長を応援する。

改めて、本制度は「未来」に対する貢献内容に基づき、給与額を決定する制度です。故に、会社は社員がその貢献内容が達成できると信じ、任せていくことになります。給与額を判断する際に「実現性の高さ」を優先してしまうと、貢献内容がジャンプアップせず、小さく収まってしまいます。すると、会社としても大きな成長が期待できないため、みんなが「欲張った貢献」を目指せるようにする必要があります。

これは、Valueで掲げている「理想へ背伸びをする」を加速させる大事な布石を打つことにもなります。そのため、失敗を咎めるのではなく、できるだけ応援できる仕組みを大切にしていて、社員全員の貢献内容をオープンにしており、推進の際に障害になる事象は、会社として解決に動きます。特に、社内の横断的なプロジェクトへの関わりを会社としても積極的に推奨をしています。

この社内でいかに連携を生んでいくかが「実現性」を左右します。ただ全プロジェクトに役員が入っている訳ではないため、細部に目を配ることが難しく、現時点では自分で実現を意識しながら積極的に取り組む人と、目標を掲げただけで周囲への働きかけが少ない人との差が出てしまうという課題があるのも事実です。こうした状況が続けば、投資額と見合わない、結果的にフリーライドが発生する可能性もあるため、役員は各メンバーの貢献内容と実現性を見極める目が重要となるわけです。

そもそも「未来の予測」は難しいのでは?と心配されるかもしれませんが、まず会社として「社員を信頼する」という大切なベースがあります。「過去の評価」であれば正しく判断できるのか?と言うと、社員の自己評価と会社評価にギャップが生じた場合、その認識を合わせるのに苦労していました。そうした過去の経験を踏まえると、社員も経営陣も、一緒になって「未来」を考え語る場となっている現在の貢献面談は、両者とも前向きになれて有意義な場となっています。「相手を信じて、未来志向で話すことができる」ことが、この制度の最大のメリットであり、会社全体が前向きになっています。

経営情報の開示が進む。

自ら貢献できる内容を考えるためには、会社の現状や向かうべき方針を経営陣が積極的に伝えていく必要があります。目指すべきゴールへのロードマップ、売上や受注状況、各社内プロジェクトや間接費の予算や消化状況については方針が決まり次第、社内へ共有されています。ただ、まだまだ課題があるのが現状です。

というのも、経営陣が見えている情報量と社員に届いている情報量には確実に差があります。また、経営陣が社員に期待したいことや、社員相互のフィードバックを積極的に伝え合うような機会も決して多いとは言えません。また、貢献面談で役員が直接話をすることで、社員と経営との距離も近く会社の考えを伝えやすいのですが、その分、経営側の情報やスピードに依存する傾向が強くなってきています。

そのため、権限移譲をするスタッフの積極的な抜擢や、日常的なフィードバックの体系化、さらにはもっと積極的に背伸びをした高い貢献内容が生まれるような情報開示の方法など、ブラッシュアップできる余地がまだまだあるので、今後のさらなる改善に期待ができます。

「人事評価制度」からみる変化と課題

未来志向の対話が生まれる。

本制度の導入前は、給与を目標設定の達成度に応じた「5段階評価」で決定をしていました。しかし、全員に適正な昇級幅を算出することは難しく、もっと金額を上げてあげたいと思うメンバーもいれば、惰性的に昇給してしまうフリーライド的なケースも生じてしまい、社員からの不満だけでなく、評価し当時給与額を決定するマネジメント側にもこうした不合理な状態に大きなストレスが掛かっていました。

導入後は、それぞれの貢献内容にあわせて給与額を決定できるため、大きな矛盾を抱える状況が解消され、評価する側の負荷も大幅に軽減されました。そのため、社員と役員で話をする目的が、「互いの評価を主張しあうこと」から、貢献内容を介して「未来(成長)の実現性を高めること」に変化したのです。給与額を承認する側が「昇給率を気にしながら評価をする」という悩みがなくなり、高い貢献を掲げてくれたメンバーにはそれに合わせた給与額を承認し、もっと貢献を期待したい人へは堂々と求めていく。こうした未来志向の対話ができるようになりました。これはとてもよい変化だと感じています。

「成長幅」や「貢献の度合い」は人それぞれ。
柔軟に、個人に即した給与額が決定できる。

多くの会社では、会社全体の売上増や事業の拡大など、会社そのものが成長すると社員への対価として給与も上がります。つまり、人事評価の基本的な視点には「会社の成長」とその対価としての「給与の昇給」があります。

しかし、会社の成長幅は直線的に上がっていくことを目指すケースが多いと思いますが、社員一人ひとりの成長は、全員が一律・直線的に成長するわけではありません。貢献の度合いも異なれば、成長幅に個人差があるにもかかわらず、社員の成長を平均的な直線で捉えようとすることで現実とのギャップが生じます。

そもそも社員それぞれの「成長幅」や「貢献の度合い」は異ります。個人で見れば、伸び盛りの時期もあれば、じっと我慢して努力が必要な時期もある。一定の昇級幅に当てはめようとすることに無理があるとも言えます。
つまり、本来の「成長幅」や「貢献の度合い」は人によってバラバラで、それに柔軟にあわせた給与制度であることで、実態に即した給与額が決定できるようになりました。

金銭的な喜びだけに依存しない。
「成長する達成感」や「給与への納得感」も向上。

結果に対する金銭的なインセンティブだけでは、「働きがい」や「やりがい」を維持することは難しいとも言われています。「目標を実現できた喜び」や「達成感による充実」の方が、昇給の喜びより大きくなることも想像できます。そのため、同じインセンティブ的な役割として昇給があるのであれば、「挑戦を決心する」ときに背中を押してくれることに期待しました。

昇給というインセンティブは、「結果に対する報償」ではなく「励ます役割」であり、「会社からの信頼」の結果とも言えます。そのため、期待に応えたいと努力も生まれるため、その目標が実現する確度が上がることにもつながります。

この制度を導入した直後に、給与額が大幅に上がったわけではないので、導入とともに劇的に不満が解消されたわけではありません。しかし、制度が運用され、貢献内容の質の向上とともに、給与額の平均も上がり、給与額全体の納得感も改善されていると言えます。

転職者にとっても、給与額への過度な期待や要求を避けることができる。

採用担当としての視点からも、この制度の良さがありました。採用フローにおいて、ミスマッチが生じないように何度も面接を重ねますが、特に全く異なる業界から入社される方の場合、給与額の判断が難しくなります。従来の昇給率が一定の制度の場合、転職者の方にとっても入社スタート時の給与額は重要となるため、高めに設定しておきたいという思いから、入社時の給与条件の交渉において駆け引きが生じます。そうすると、率直に言ってしまえば、業界未経験にもかかわらず、給与が社内基準より高く設定されるという矛盾が発生しやすくなってしまいます。

一方で、自己申告型給与の場合は、入社後の活躍や貢献に対して、適切な金額に引き上げることができます。そのため、入社時の金額交渉などの駆け引きをせず、その時点で確かだと思える給与額を提示することができます。業界未経験の方の入社も今後増えていくことを考えると、転職者の方にとっても過度な期待や要求を避けることができるという点でも、いい制度だと実感しています。

まとめ

 当社が「自己申告型給与制度」を導入して実感している変化や特にメリットがいくつもあります。特に、業務を受け身ではなく、自律的に考え、動くきっかけにできているのは確かな進歩です。とはいえ、経営情報の開示や実行力や実現性を高めるための具体的な仕組みづくりなど、まだまだ改善が必要な側面もあります。今後、改善をnoteをお知らせできることを目指し、今まで以上に、組織の活性を促進できる制度にしていきたいです。

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