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思想・哲学・宗教・人物(My favorite notes)

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思想・哲学・宗教など心や意識をテーマにしたお気に入り記事をまとめています。スキさせて頂いただけでは物足りない、感銘を受けた記事、とても為になった記事、何度も読み返したいような記事…
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2023年6月の記事一覧

「家」について

 今年亡くなった音楽家バート・バカラックとハル・デイヴィッドによる作品に「ア・ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム( A House is Not a Home)」という曲(ルーサー・ヴァンドロスやディオンヌ・ワーウィックが歌ったことでも有名です)があります。  内容は「愛する人のいない家は”House”ではあっても、”Home”ではない」といった、感傷を誘うものではありますが、「”House”は”Home”ではない」という一見さりげない言葉には、世俗的な意味を超えた何とも深いも

三島由紀夫が訴えた「生命尊重以上の価値」「歴史と伝統の国、日本」

昨秋の4大学学生アンケート調査によれば、「自国が侵略されたら」「逃げる」が72%、「戦う」が17%、「受け入れる」が12%であった。数年前の自衛隊員の意識調査でも、退職後緊急事態の場合に再任用に応じると答えたのは、幹部は8割を超えたが、20代の陸士は約2割であったという。  同じ質問に対して外国人留学生の9割以上が「戦う」と答えた。これらの極端な差は一体何故生じたのか?昭和45年11月25日、三島由紀夫は市ヶ谷の自衛隊駐屯地で割腹自決し、自衛隊員に訴えた「檄文」で次のように述

チベット仏教で正しい認識を究める

 チベット仏教と正しい認識 認識には正しいものと誤ったものがあります。 それは世間一般と一致する事で、誤解や錯覚は誤った認識、それに対し見た通り存在する視覚は正しい認識です。 チベット仏教を修学する僧院では、どの宗派も正しい認識が何であるかの探究を議論しながら学びます。その時にインドの戒師ディグナーガや戒師ダルマキールティの論理学や認識論に関わる著作を使用します。 大事なのは、お釈迦様は最初から正しい認識の方だった訳ではなく、様々な経験から錯覚や誤解や煩悩を取り除き、

言葉考 『人類の起源 古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』

本書で興味を覚えたことの中に言語と遺伝子の関係についての記述がある。 DNAの変化と言語の変化が似ているというのは以前から認識されていることで、生物学や人類学の文脈で言語が語られるのも、言語学の文脈で生物や人類が語られるのも目新しいことではない。同じ言語集団の中で婚姻が行われる傾向があるので、言語と遺伝子が関連するのは当然なのである。しかし、ここにあるように、変化の速度が全く異なるので、そう鮮やかに関連づけることができるわけでもない。やはり、どこかしかに謎は残るものだ。

篠田謙一 『人類の起源 古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』 中公新書

映画『リトル・マーメイド』のアリエルを演じている人の肌の色が話題になっているらしい。自他の別というのは誰にとっても己の存在に関わる重大事だ。肌の色がどうこうというのは、どうでもいいことのように思う人もいるだろうし、重大事と考える人もいるのだろう。「みんな違って、みんないい」という他人事だからこそ言えるようなキレイゴトを何の躊躇いもなく声高に唱える人がいるが、そんな人の中にもアリエルの肌の色に拘りを見せる人がいるのだろうか。 イギリスで発見された最も古い人骨の一つは約一万年前

善い心を育てる(全訳)

アチャン・チャー  最近、世間では功徳を積むことが流行っているようです。ここ、ワット・パー・ポンにも、連日多くの人々がやって来ます。旅行のついでに、この僧院に立ち寄る人もいるようです。そうした人たちは大変忙しくしているので、私と会って、ゆっくりと話をする暇もありません。なぜ、そんなに忙しいのにわざわざこの僧院へとやって来るのか? どうやらほとんどの人々は、功徳を期待して、このワット・パー・ポンを訪れているようです。反対に、悪行為から離れようとこの僧院へやって来る人は、ほとん

武士道とは

長い米国生活の間、日本人と見るとすぐに「Samurai」について聞かれるし、武術稽古していることもあり自然と向き合う課題でした。 武士道と云ふは死ぬ事とみつけたり 葉隠の有名な一節ですね。 以前は、 戦などに際して死ぬことを恐れず、 何時死んでも悔いを残さない心持ちで 生死をかけて過ごす心構え と解釈していました。 しかし、 「死ぬこととみつけたり」は、 「生きることを大切にする」 だから いつ死んでも悔いがない心構えができている つまり、 「大切に生き