鎮魂・里山里海の風
※本内容は、5月18日の北國新聞朝刊に掲載したものの原稿になります。
私は能楽を嗜む大学生だ。
地元石川が能登半島地震で被害を受けたことに無常感を覚えた私は、
一人の人間として力になれることがあればと思い、
避難所で暮らす方々の話し相手をするボランティアに参加した。
交流のなかで、珠洲市出身の九十代女性の話に興味をそそられた。
「芸は身を助けるっていうげんけど、私は民謡や詩吟、京都で観世流の能を学んで、楽しく人生を過ごさせてもろたわ。」と感慨深げ。
そんな彼女との話に花が咲き、レクリエーションで急遽彼女と私がそれぞれ詩吟と謡曲を披露することに。
お客さんは数十人、演目は、「花筐クルイ」と「高砂」。気がつけば、避難所が檜舞台に。
二人の舞台が終わると、静寂のなかで涙する方や、アンコールを求め個別テントに招待して下さる方も。
能楽は死者のみならず、生者も、そして謡い手の心までも綺麗にしてくれる、としみじみ…
人に寄り添い他人の為に涙する、それこそ人間が人間たらしめる源泉。
能登は優しや土までも。
一期一会の貴重な舞台、もりたさんありがとうございました。
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