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読書記録『私は私のままで生きることにした 』

友人に勧められたことがきっかけで読んだ本。
正直、このようなエッセイ本はあまり得意ではなかった。優しい言葉はたくさんあるけど、その言葉を自分にかけて上げられることができていれば今頃もっと元気に過ごせているよ。と、どこか斜に構えていた。
でも、彼女が進めてくれるものはいつも面白い。図書館にも置いてある。せっかくなので読んでみることにした。

書籍情報

『私は私のままで生きることにした』
キム・スヒョン著、吉川南訳 
発行: 株式会社ワニブックス


よくある話。「あなたの人生はあなたのもの」

正直、Part 3くらいまではそんなことを考えていた。
自分をないがしろにする人のことは気にしない。他人のためではなく、自分のために生きよう。しんどい時はしんどいという。
耳触りが良くて暖かいけど、ありふれた言葉のように感じてしまい、「フーン、よくあるやつね」と、大層ひねくれた感じ方をしていた。
読み終わった後だから言う。「いやいやいや。お前はどこの何の立場の人間か偉そうに!」と。(恥ずかしい…)

確かにやさしいけど、とにかく「合理的」な話

おや、と思い、言葉一つ一つがスーッと入ってき始めたのが、『Part 5 よりよく生きるためのto do list』あたりからだった。

これまで何冊かの本を出して、個人的な慰めとエールを送った。
けれど、個人的な慰めを送っているつもりが、
この社会が直面している問題の表面だけをすくって、社会的な議論を遠くに押しやってしまったのではないだろうか。

キム(2019), p.198

そう、毎日過ごしていく中で感じるやりづらさって、個人だけの問題でどうしようもなくて、社会の構造とか、しみついてしまった「常識」とか、そういうものに振り回されていることがとても多いと思う。
そして、「個人の生き方」について書いている本で、そういう話に触れる本って珍しいなぁと感じた。
そこから、斜に構えて読むことをやめてみたら(ねぇ。恥ずかしいことです)、この本に書かれていることって結構「合理的な話」だということを感じ始めた。
自分を責めることも、擦切らして生きることも、それをやめるべきなのは道徳的な話ではなく「生産性がないから」「意味をなさないから」だ。
自分にやさしい言葉をかけたり、前向きな考え方をするのは、それが良いことだからというより「生産性のあることだから」だ。
そうとらえると、自分にやさしくすることが「自分をどんどんダメにする気がする」と感じてしまう私も、その先の文章もそれまでの文章も、納得感を持ちながら読み進めることができるようになった。

一番大切にしたいな、と思った話

特に「今の私が持っておくべき考え方だ」と感じたところを上げようと思う。
Part 6 『いい人生、そして意味のある人生のためのto do list』「人生に余白と失敗のための予算を確保しよう」から。

デザインした図柄を印刷するときは、下地のサイズを実際のデザインよりも少しだけ大きくして作業する。
裁断するときに誤差が出るので、あらかじめ余白を作っておいた方がいいから。
それは誤差と失敗に対する寛大さであり、安全な結果のためのノウハウでもある。
(中略)
生きていれば、おかしなことも起こりうる、人生にはこのくらいの無駄はどうしても必要だ、人生は常に効率的なんてことはありえない、
初めての人生だから自分にはちょっと難しかった、と思おう。
その後さと失敗に対する寛大さが、あなたをより安全で自由にするだろう。

キム(2019), pp. 264-266

今の私は、正直、「なんでこんな苦しい思いをしないといけないんだ」「どれだけの有用な時間を失ったのだろう」と考えてしまうことがたくさんある。きっと未来には笑って振り返られるかもしれないけど、今はどうしても。
でも、私の人生にもともと「余白と失敗のための予算」があったとしたら。
「人生にはこのくらいの無駄はどうしても必要だ」と、寛大になれたら。

実際は、寛大に慣れていないのでずーっとずーっと自分を責め続けて沼のそこなんだけど。余裕がない時はそんなことも考えられないけれど、ちょっとでも頭に隙間ができたら、この言葉を自分に繰り返しかけて上げられたらな、と思う。

本当は、本当はね!友達から勧めてもらって読み始めた時、「読んだらすっごく楽になって、気づいたら悩んでいたこと沢山解決しちゃった!」なんてお花畑みたいなこと言えたらいいなって、淡い期待を抱いていました。状況は全く持って変わらないまま。アハハ~
でも、もし私が今自分に対してこんなにどす黒いもやもやを抱えていなければ、勧められたとしてもこの本は読んでいなかったかもしれない。
回り道して休憩したからこそ出会えた景色だと思えば、ちょっと今この沈んでいる時間にも意味があるかもしれない、と感じられるのです。

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