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大失態から「緊張と付き合う方法」を学ぶ

以前の記事で、困難も笑顔で乗り切る、ということを書きました。
人前で話す機会は、相当多いです。
しかーし、だからと言って緊張しないわけではありません。

講師業を仕事にして長いですが、若かりし頃は司会の依頼も結構ありました。
研修先の代表や役員から依頼を受けて、全社員大会とかロールプレイング大会とか表彰式とかの司会をやってほしいと声が掛かることがあるのです。
依頼されると大変光栄で、スケジュールが空いている限りはお受けするようにしていました。
(研修は講師の都合で開催日程を変更してくれることもありますが、こういった司会の仕事は日程ありきが多く、研修本番がすでに入っていると無理ですから。)

けれど、私はとても緊張しやすいタイプなんです。そのため大勢の人の前で話す時は本番を迎えるまでドキドキです。
緊張への対策、もちろんしてますよ。

とにかく練習します。時間の許す限り。
ひたすら練習します。場所はどこでも。


自宅では壁に向かって、お風呂に浸かって、一人でぶつぶつしゃべります。
電車や飛行機での移動中は心の中で唱えるようにして練習します。声は出さないけれど、口は動かしているから車内や機内で隣に座った人から怪しい人だと思われてそう・・・。
これだけ練習しても、大舞台の本番開始前は本当に、口から心臓が飛び出すんじゃないかと感じるほど動悸が激しくなり、手に汗を握ります。
本番がスタートして少し時間が経過すると、ようやく冷静さを取り戻します。

無事に終わると心の底からほっとし、そして何といってもクライアントや参加者からお褒めの言葉や感謝の気持ちを伝えられると、「やって良かった」と思うのです。
だから毎回、練習中は「今後は司会の仕事はお断りするぞー!」と思うのに、また依頼があると受けちゃうんですよねぇ。

司会を終えた後に、感想を聞かれることもあります。そんな時は正直に「めちゃくちゃ緊張しました」「手が震えましたよ」と言うと、見事に「いやいやー、全く緊張しているように見えなかったですよ。」「よく言いますよ、あんなに堂々としゃべってて。(笑い)」という反応が返ってきます。
まぁ、自然な笑顔には自信がありますから。

しかし、『どうしてわかってくれないんだ・・・』と思うわけです。

私には司会の仕事で大失態があります。
新型車研修会の車両解説インストラクターをしていたご縁で、ラインオフパーティーの司会を務めました。
このラインオフパーティーとは、新型車が完成して、市販に向けて工場のラインが稼働されることを祝って、開発に携わった技術者たちや、様々な協力会社の皆様をお招きして、ホテルで開催されるパーティーのことです。
通常はアナウンサーやラジオパーソナリティに司会を依頼をされていると聞いていました。
しかし、全国の自動車販売会社に新型車の魅力をお伝えする仕事を担当していた私にも、「せっかくであれば車をよく知ってくれている人にお願いしたい」と声が掛かったのです。

何度か務めたのですが、T自動車を代表する高級車、あの王冠マークが輝く「ク○○ン」のラインオフパーティーの時です。参加者は300人を超えていたでしょうか。

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(さすがに当時の写真は残っていなかったので、2015年に富山県の自動車販売会社様から依頼を受けて、マスコミ向け記者発表の司会を担当した時の写真。小さいけれど、演台でマイクを持っている白いスーツの人が私です。イメージはこんな感じ。)

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(始まる前はこんな感じのイメージ。)

では回想シーンをお読みください。

「今回も十分に練習した、大丈夫、大丈夫。」心の中で自分に声を掛ける。舞台の袖で手のひらに「人」と3回書いて飲み込む。
大きな深呼吸を繰り返し、「よし」と心の中で気合を入れて司会の演台へ進んだ。
会場の照明が落とされ、始まる演出。空気が引き締まる。
『ただいまより、・・・』よし、第一声は決まった。
名乗りもスムーズだ。
いよいよ新型ク○○ンを覆ったサテンの布をオープンする、最も盛り上がるシーンだ。
参加者から見て、舞台の右手側に車両は鎮座されている。
さあ、注目を集めよう。
『それでは皆様、舞台の左手をご覧ください!』
(しまったーーーーーーー。)会場の空気が凍ったのがわかった。
司会者からは左手だが、参加者からは右手に見えるのに。
『失礼いたしました。どうぞ舞台右手をご覧ください。
(あはは)
会場の数ヶ所から和やかな笑い声が聞こえたのがわかった。
世の中、お優しい人もいるもんだ。

こんな感じでした。
生きた心地もしなかったです。これ、絶対間違っちゃいけない時にやらかしたわけです。
その後はもちろん立て直し、以降ノーミスで司会を終えました。
猛省してしばらく穴に入っておきたかったのですが、そういうわけにもいきません。終了後、すぐさま担当者に冒頭のミスについて丁重に謝罪しました。

笑顔で「あはは、あれ、やっちゃいましたね。いやいや、アナウンサーに頼んだんじゃなくて、関係者に頼んだっぽくて、親しみ湧いた人もいるんじゃないかな。」というような寛容なコメントだったと記憶しています。

むしろ蔑むような目線で、「あそこで間違えるなんて」と言われた方が、気持ちとしては受け止められたかもしれません。
この出来事のおかげで、ますます大舞台では緊張に拍車がかかりました。

だから、毎回準備を入念にします。
新しいチャレンジや何百人もの前で講演する機会はその後、何度も何度もありましたが、慣れることは一切なく、前日の夜は大失敗する夢を見て冷や汗をかき、思いっきり緊張して本番を迎えるのです。

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(そういえば、この時も久しぶりの司会の仕事で緊張したなぁ。終了後に「依頼して良かった!」とクライアントからお褒めの言葉をいただいたのだけど、1回だけものすごく言いにくい会社名を噛むという失敗をやらかしたんだった。ああ、黒歴史。)

でも、プロとして司会業をしている友人から「イベントで、『本日の司会を務めます、○○ ○○と申しましゅ』って言っちゃったことあるよ」と聞いた時には勇気をもらいました。

最近では、変わらず緊張するもののポーカーフェイスはますます鍛えられ、「すごいですね、心臓に毛でも生えてるんですか?」「どうして緊張しないんですか?」と声がかかるようになりました。
その度に「違うんだー、違うんだよ」と声を大にして心の中で叫びます。そして笑顔でこう答えます。
「ええ、よく心臓に毛が生えてると言われます(にっこり笑顔)」
そんなわけ、あるかーい、とむしろ笑えちゃいます。

もうね、実際言葉にして「いえ、緊張してましたよ」と言っても理解してもらえないですから。でもね、緊張するんです。
世の中、本当に緊張しない人もいるんでしょうね。そんな人が羨ましい。

だからこそ、研修生の「ロープレ、緊張します」、就活生の「面接、緊張します」という気持ちが痛いほどよくわかります。

理解者になれるのです。気持ちがわかるっていうのは、研修生や就活生に様々なことを伝える上で役に立つはずですから、緊張しやすいことをラッキーだと前向きに捉え、緊張と一生付き合って行きます。

noteでは公言しておこう。
「私は緊張しやすい人です」
ああ、すっきりした。


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