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映画『夜明けのすべて』の感想

親なんだから頼ってと言われても、いつまで甘えていいのか

仕事にそもそもやりがいを求めるのが違うのか

PMSはまだまだだね

冒頭から私の心を突き刺す言葉の連続だった。一緒の映画館で観た人のなかで、この言葉が響いた人はどれだけいたかな。逆に、私がサラッと流した言葉をキャッチしている人もいたかもしれない。そんなことを感じながら見ていた。

映画『夜明けのすべて』

この映画は人によって感じ取るメッセージや、心が捉えられる場面が違うだろうなと感じた。それはたまたま私の横に座っていた、ギャルズたちの開演前のやり取りが影響してる。

ギャルA「この映画泣く系?」
ギャルB「全然泣かん。小説読んだけど」

(私の心の声)
えっ!?えぇぇええええっ!?私この子らの横、無理や(笑)。私、号泣覚悟できたのに(笑)。

なぜかというと、私自身はこの小説を嗚咽を漏らしながら読んだからだ。カナダに滞在中、バンクーバーの図書館で借りることができて読んだのだが、当時ルームシェアをしていた私は、夜中に声が漏れるのを気にしながら困ってしまうくらいワンワン泣きながら読んだのだった。

登場人物である藤沢さん(上白石萌音さん)と山添くん(松村北斗さん)。一応架空の自分だけど、たぶんこんな人は身近にいるんだろうなと思わされて。見えない生きづらさを抱えながらも今できることをして淡々と生活している様子、そして、この2人と彼らの職場に流れている生きづらさを包み込む空気に、私も「一人じゃない」と思えたのだった。

人によってここまで捉え方が変わるのかと思ったし、これをサラッと読めた私の隣の彼女は、ある意味幸せかもしれない。

ちなみに、小説の感想を書いたnoteはこちら。

一応、生きづらさ自覚している私が、映画を観ながらもう一歩踏み込んで考えた場面はというと…

たとえば、藤沢さんが友達と転職エージェントの人とカフェで話をするところ。2人はコーヒーを頼むところを彼女はノンカフェインのルイボスティーをオーダーした。本当に飲みたいのはルイボスティーだったのかな。

そのほかに、お家で足湯をしてる場面やヨガの場面があったり。

PMSが和らぐような努力をしているのに、それが功を奏していなくて、すごくもどかしいだろうなと思った。「なんで私はここまで苦労しないとダメなんだ。普通の人もいるのに」って感じてないかな?と。

山添くんの場面でいうと、彼の元同僚の女性(きっと彼女は山添くんに想いを寄せている。もしや元カノ?)が、ロンドンに仕事で異動になったと伝えに来たところ。

山添くんは実はスペックが高くて、以前は大手で働いてたんじゃないかと思った。そしてパニック障害じゃなかったら、彼にもそんなチャンスがあったんじゃないか…って。でも彼は電車にさえも乗れないから、海外なんて到底無理。何かを今、思ったんじゃないかな?とか想像してしまった。

全部、私の考えすぎかもしれないけど(笑)。

 🌛 🌛 🌛

そして、私がこの映画を観ての感想はこんな感じ。

痛みを抱えている人は、その痛みをわかってほしいと思うけど、それは無理ってこと。自分で受け入れていくしかない。

でも辛さを知った人は、人の痛みに敏感になれるということ。

痛みの種類が違っていることも理解したうえで、相手を受け入れられる。

そして、痛みを知ってる人が与えられる優しさは、押し売りではないこと。

必要な人に必要な優しさが届く世の中になってくれたらなぁ…。

🌝 🌝 🌝

原作Loverだった私が個人的に「もう少しここを描いてくれたらな~」と思ったことがあった。

2人(特に山添くん)がそのモノを自覚し抱えるようになったことで、以前からどれだけ生活が一変してしまったかについてへの描写がもう少しあればなぁ〜と。

小説と映画ではキャラ設定も変えられているのかもしれないけど、山添くんのあの一歩引いて冷めてる感じは元からじゃないんだよな。生きやすくするためにそうしてる、そうなったんだよな、と私は小説では感じていたから。

しかし、その山添くんが藤沢さんと出会うことで変わっていく。山添くんも藤沢さんも、互いの「症状の辛さ」は理解できないけれど、「辛さを抱えていることの生きづらさ」があることに気づくことで言動がが変わっていく。

その「痛み」をわかっているからこそかけられる言葉や行動がある。そこには下心や恩着せがましさがない。あの毒ある冗談にお互いどれだけ心が軽くなっているだろうか。

あの2人の生きづらさに至るまでの心情を描いてくれてたら、あの穏やかでゆっくりした雰囲気が流れる中で、私たちが2人の機微な変化とその変化の裏側により深く思いをはせられたんじゃないかな~っと、「なに評論家きどってんだよ!」と言われそうだけど、そんなことを感じた。

少し個人的な意見ヲ言ったけど、タイトルに入っている「夜明け」について語られるあの場面(そして結構な時間を取っていた)には、みんなが心を打たれたのではないかと思う。あのギャルズもいつか思い出すときがくるんじゃないかな。

「夜明けの直前が一番暗い」。

「頑張れ!」じゃない言葉で、こんなに人に希望を与えられる言葉ってあるんだな。言葉の力ってすごいね。


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