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書ける・書けないより大切なことは?古賀史健『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』

子どもの頃は読書が大の苦手で、ハリーポッターが流行ったときもわずか2ページで断念した私が、こんなぶっちょい本を読了できた。
その本の名前は…

古賀史健『取材・執筆・遂行 書く人の教科書』

本をこんな角度で撮ろうと思ったのは初めてです。

題名の通り、これは「書く人の教科書」。書くための技術や方法がたくさん紹介されています。あとがきを読むと、古賀さんがどれだけの想いでこの本を書かれたのかが伝わってきました。

「だから私は、この本を読んでいる間はずっと”背筋ピーン”の状態だったんだな…」という感じです。「一言一句たりとも逃してはいけない」と思う内容で、とにかく集中力がいりました。

集中して自分の身体に染み込ませるように、丁寧に丁寧に読みましたが、1回読んだぐらいでは頭に入らない。一生かけてもこの本の片鱗くらいしか体得できないんじゃないかなと思いました。

ところで、みなさん。教科書を読んで感動したり、不安になったり、そして勇気をもらったりすることってありますか?

普通はありませんよね。でも、この教科書にはそれが全て含まれていました。書くための技術や方法が書かれている本なのに。

読み進めれば進めるほど、「『書く』ことってすごいな、深いな」と感動を覚えつつ、「私はライターをやっていけるのだろうか?」という不安がどんどん募ってきました。武器を渡されても、それを使いこなせないのではないか…そんな気持ちです。

この本は全476ページ。459ページまではそんな思いで読み進めていた私でしたが、最後の10ページで、まさかの、泣きそうになったんです。

たぶん古賀さんはわかっていたのでしょうね。読んだ人の中には、私のように不安で心が覆われてしまう人が出てくるだろうって。

ここまで技術と方法について盛りだくさんに書かれていたのに、最後の10ページで古賀さんは「よき自信家であれ」と”こころ”について語ってくださっているのです。

たとえ根拠があろうとなかろうと、自分という人間に自信を持つことー自分という人間を信じることーは何より大切だと思っている。ライターにいちばん必要な力だとさえ思っている。

古賀史健『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』

あなたはなぜ、ライターになったのだろうか。あるいはなぜ、現在ライターをめざしているのだろうか。どうしてわざわざ、なにかを書こうとしているのだろうか。(中略)あなたはなんとなく、これといった根拠もなしに、「自分にもできそう」と思ったのだ。だからライターをめざし、ライターになったのだ。
(中略)
そう、ライターをめざしたり、名乗ったりしている時点ですでに、あなたは根拠なき自信家なのだ。

古賀史健『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』

ここでは「あなたは自信をもって大丈夫!」とは書かれていません。「自分自身で自信を持つこと」の大切さが全力で訴えられています。

ライターとは孤独な仕事。だからこその叱咤激励だと感じました。

謙遜しがちで、自信が持ちにくい私でさえも、「よし!私も自信家だ!」って強制的に背中を押されました。

上手く書けなくてもいいわけではないけれど、自信を持ってひたむきに、自分なりに頑張っていけばいいんだ。勝手に「自分は向いてない」という刻印を押さなくていいんですよね。

きっとこれから、私はこのページを何度も読み返すでしょう。

書くことを仕事にしたいと思っている人は、この本を読まない理由はありません。ハリーポッターを読めない私でも読めたので、大丈夫!読めます。

技術・方法はもちろん、「書く」を仕事にしている・していくあなたの心の支えになる言葉がたくさん見つかるはずです。



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