見出し画像

津原泰水さん「約束」が米文芸誌『チェリー・ツリー』(ワシントン・カレッジ発行)に掲載決定

先週、又吉直樹さんのご紹介で緊急重版が決定した津原泰水さんの『綺譚集』(創元推理文庫)所収の短編「約束」が、米ワシントン・カレッジ発行の文芸誌『チェリー・ツリー』第6号に掲載されることが決まりました。

文芸誌『チェリー・ツリー』とは?

初代大統領ジョージ・ワシントンの寄付により、1782年に設立されたワシントン・カレッジは、アメリカで10番目に古い歴史をもつ大学です。『郵便配達は二度ベルを鳴らす』を著したジェームズ・M・ケインも学んだと言われています。

日本とも縁が深いDCには、東京より贈呈された桜の木があり、毎年、桜祭りが行われます。その桜の木にちなんで名づけられた文芸誌『チェリー・ツリー』は、全米で活躍する新進作家、著名な作家による詩や小説、ノンフィクションなどを掲載する雑誌です。

まだ歴史は浅いものの、すでに『ベスト・アメリカン・ポエトリー』に選出される作品が掲載されたり、世界的な詩のアンソロジーのウェブサイト「バース・デイリー」で取り上げられたりなどの実績を上げているそうです。文学賞の候補になる作家も多数輩出しています。

短編集『綺譚集』と「約束」

2004年に単行本、2008年に文庫が出版された『綺譚集』は、文体を極限まで磨き上げた15編を収めた、津原さんの初期傑作のひとつと言われる短編集です。

収められているのは、散歩の途中で出会った少女が解剖されるまでを描いた「天使解体」、祖父殺害を企てる姉と弟の「サイレン」など、美しくも怖ろしい幻想小説の数々。

その中で、<美しい話だ。タカシとエリカは十六歳。夜の観覧車で出合った。>から始まる「約束」は、偶然始まった淡い初恋を描いたほろ苦い青春小説かと思いきや……。タカシとエリカに訪れた哀しい運命、それぞれの顛末を追ううちに、読者は思わぬ場所へ連れて行かれます。最後の二行で異世界へ放り出されたら、もう一度読み返さずにはいられない。易しい文体ながら、魔力に満ちた作品です。

「日本語で書く以上は日本語を極めると心に決め、それだけに言語構造の全く違う欧米での出版は、ほぼ諦めていました」という津原さんの作品だけに、どのように訳されたのか楽しみですね。海外出版、翻訳出版にご興味がある方は、ぜひ続報をお待ちください。

※写真は、装幀家の松木美紀さんよりご提供いただきました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?