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夜行バス

気づいたら3月を迎えていた。

最近の自分の生産性の低さとそれを改善できていない現状に対する焦燥感が強まっている。けどこの焦りは、そもそも生産性の低い人間は良くない、という資本主義的思想に少なからず影響を受けているが故のものだろうし、その思想は脱成長主義的な思想から考えると必ずしも妥当なものではないのだから何も焦る必要はない、と、相変わらず口だけで実行力の伴わない私の分身が囁いている。こいつは、思い込みの解除という点では役立つが、概して改善しなくてもよいエクスキューズを生み出し続けているだけの存在なので、基本的には厄介なのである。

昨日、社会人になってから2回目の夜行バスを利用した。
大学生の頃はお金もなく、大阪⇔東京間の新幹線代が馬鹿にならないので、大変お世話になっていた。そのため、夜行バスの乗車時間をいかに居心地の良いものにできるか、ということに思考とリサーチを重ねており、乗車前後のハックも十分に身に着けていた(例えば、乗車前に銭湯に浸かって副交感神経を優位にしておく、バスの中で脱いでも使用体積が小さいためにより足を伸ばしやすいスニーカーではなくローヒールパンプスを履いていく、など)。

今回も、大学時代に培ったハックを携えて利用してみた。
しかし、である。いつも通り銭湯でリラックスして、ローヒールのふかふかパンプスを履いて乗っても、うまく眠りにつけなかったのだ。その根本原因として、背中と腰の地味な痛みが増大していたことがあった。バスの席をいくらリクライニングしようとも、リクライニングの傾斜に限界があり、その痛みが軽減されることはなかった。

自分がアラサーを迎えた人間であることを、これほどまざまざと痛感させられたことは初めてだったように思う。身体は嘘をつかない。どんなハックを活用しようとも、日々蓄積された姿勢の癖や脂肪には抗えない。自分の身体のコンディションを、大学生の頃のものと同じだと捉えてはならないのだ。

結局、Netflixで韓国ドラマを2話分観ることによって背中と腰の鈍痛から気を紛らわせ(おかげさまで『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』全話完走しました、너무 좋아な作品で激推しです!!)、いよいよ疲れたら寝るという、不健康な方策によって乗り越えた。

しかし、自宅に着いて暫くしたら普通にベッドで横になっていて、意識が戻った頃にはお昼になっていた。

己の生産性の低さを嘆いている人間が取るべきではない行動ばかりを取っていた。

多分、もうこの先、夜行バスを使うことはない。

社会人になってから学生時代よりは金銭的に余裕があるはずなのに、約3500円の節約のために夜行バスを選択した自分の愚かさ。しかもその3500円は、乗車前の銭湯と、1人で何となく入ったお店で食べたホルモン焼き+ハイボールでむしろマイナスとなっている。

やったら普通に新幹線の自由席の方が安いて。ほんまにアホすぎる。

とはいえ、夜行バスの待合場でマンウォッチングして、それぞれの人のこれまでとこれからを(勝手に)想像する時間や、深夜に外の乗り物で移動している特別感は、アラサーになっても好きだということを再確認した。

でも今後は、数千円をケチることなく、アラサーの身体に合った移動手段できちんと移動し、きちんとベッドで睡眠を取ることを決心した。


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