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ビジネスモデル転換を阻む壁

戦略コンサルタントのアップルです。

日本の大企業にはビジネスモデル転換の必要性に直面しているところが多くあります。例えばトヨタであれば、人が運転する自動車の製造販売から、自動運転システム、さらにはMaaSへのビジネスモデル転換に直面しています。また例えば不動産デベロッパーも、人口減少やコロナを背景に、建物を建てて売ったり貸すというビジネスモデルだけではじり貧になっていくことは必至です。トヨタと同様にサービスビジネスを厚くしていくなどのビジネスモデル転換に直面していると言えるでしょう。

このようにビジネスモデル転換の必要性に迫られている企業はたくさんありますが、実際にビジネスモデル転換がうまく進んでいるところは数少ない印象です。多くの企業はビジネスモデル転換にチャレンジしつつもうまくいかず悩んでいます。まさにそういう悩みに対して戦略ファームがご支援するケースも多々あるわけですが、ご支援の結果ただちにビジネスモデル転換がスムーズに進んでいくかと言えばそうでもありません。ビジネスモデル転換というのはそんな生易しいものではないのです。

では具体的にビジネスモデル転換を阻む壁にはどのようなものがあるのでしょうか?アップルの経験上3つの大きな壁があります。本記事ではそこをご紹介したいと思います。

1.ビジネスモデリングのスキルの欠如

ビジネスモデル転換の起点になるのは、自社の新たなビジネスモデルの絵を描くことです。商品やサービスをどう変えるのか?儲けのポイントをどう変えるのか?このあたりを白地から再設計する必要があります。

たとえば、製造業であれば、これまではモノ売りで儲けてきたわけですが、サービス・ソリューション売りにどうやって転換するか?といったことを考えないといけません。これを考えるのはとても骨が折れます。ザクっとした絵なら書けるかもしれませんが、リアルに成立する事業のビジネスモデルとなると、詰めるべきことは多岐に亘りそう簡単には描けません。

ビジネスモデリングの相応のスキルと経験が必要になりますが、それが欠如しており、リアリティのある絵が描けない。これが最初に直面する壁です。

2.ビジネスモデルを具現化する実行力の欠如

ビジネスモデルは「行けそう、儲かりそう」なものが描けたとしても、その次に実行の壁が立ちはだかります。描いたビジネスモデルを詳細に検証し、フィジビリティをチェックするところもかなり手間がかかるため、組織としてコミットし潤沢なリソースを投下しないと前に進みません。また、事業を立ち上げる段階でも、様々な観点での整備・準備が必要になります。

具現化する実行力が欠如していると、上記のような手間のかかることを一つひとつつぶしていく途中で息切れしてしまったり、何とか立上げまでもっていったとしてもスピードが遅すぎて競合に先を越されてしまったりします。これが2つめの壁です。

3.ビジネスモデルを変えたくない社員の本音

上記の2つは大きな壁ではありますが、とはいえスキルや能力の問題なので、スキル・能力を有した人を内部育成・外部獲得していけば徐々に乗り越えられるようになっていくものです。さらに根深い「真因」とも言うべき大きな壁が、ビジネスモデルを変えたくないという社員の本音です。

改めてトヨタを例にとって説明しましょう。トヨタの社員のほとんどは「快適でワクワクするようなクルマ」を作って世に届けたくて入社しているはずです。自らドライブやクルマがすごく好きで、趣味が高じてトヨタに入社されている方も多くいることでしょう。

ただ、世の中の変化に伴い、人間が楽しむクルマを製造販売しているだけでは立ち行かなくなりつつある。したがって会社として存続するにはそれ以外の事業も手掛けていかないといけない。これが今置かれている状況です。

だからといって自分がやりたかったクルマ作り以外の仕事をするのは嫌だ。組織の論理としてビジネスモデル転換しないといけないことはわかるが、自分は引き続きクルマ作りをやりたい。本音としてはこう思っている人が少なからずいるでしょう。

組織を構成する社員のうち一定割合がこのように本音で思っていると、ビジネスモデル転換には「魂」が入りません。つまり、モチベーションやマインドの壁がビジネスモデル転換を阻む根深い壁としてあるとアップルは感じています。

じゃあどうすればいいのか?

ビジネスモデルを変えたくないという本音をブレイクスルーするためには「外の血を大胆に入れる施策」が必要になると思います。次世代の新たな事業についてはM&Aで取り込んでしまうとか、治外法権化した別組織を作り、そこに外部から採用した人たちを大量投入して進めていくとか。ただし、当然既存組織とのハレーションも起きるので、これを実行するためにはトップの強いリーダーシップやマネジメント力が不可欠です。

これはちょっと前に流行った「両利きの経営」という本に書かれていることとも通じます。既存の事業・組織・社員を右利きとしたとき、ビジネスモデル転換を進めるのはいかに左利きを作り強くしていくかということになりますが、右利きの人たちに無理やり左利きをさせようとしてもスキル・能力・マインドの観点で無理があります。左利きをバコっと外から持ち込む方が現実的ということです。

今回はここまでです。

あなたの組織では、ビジネスモデル転換が進んでいますか?
進んでいないとしたとき、どんな壁があるからですか?

ぜひ、コメント欄にでもお寄せください!

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