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クライアントに対する仮説思考の重要性

戦略コンサルタントのアップルです。

仮説思考についてはこれまでもいくつか記事を書いてきましたが、今回は一般的な仮説思考とはちょっと毛色の違う仮説思考の話をします。クライアントに対する仮説思考です。

※過去の仮説思考に関する記事はこちら

クライアントに対する仮説思考とは、「クライアントが何を考えているのか。何を期待しているのかに対して仮説を立てること」です。コンサルティングの仕事はクライアントワークなので、クライアントの期待値を把握し、それを乗り越えるようなアウトプットや支援をしていく必要があります。クライアントの期待値を超え、満足いただくための「起点」となるのがこの仮説思考になります。極めて重要な仮説思考と言えます。

クライアントが何を考えているか、何を期待しているかは、わざわざ仮説など立てずに聞けばいいじゃないか?そう思われるかもしれません。ただ、事はそう単純でもありません。以下のような3つのケースに遭遇するからです。

ケース1.相手とあまり話す時間がとれない
ケース2.相手が口下手
ケース3.相手自身がモヤモヤしていて言語化できない

順に説明していきましょう。

ケース1.相手とあまり話す時間が取れない

クライアントの役職上位者(社長や役員)ともなると、皆さん基本的にはお忙しいので、たまにしか直接話すことができないケースも多いです。例えば3ヶ月の期間のプロジェクトの中で、中間報告会と最終報告会+αの2~3回しか話せないケースもよくあります。その場合、極めて限られたコミュニケーションの中で、プロジェクトに対する期待を察知する必要があります。断片的な発言から、その真意をどう仮説するか。ここの洞察が求められるというわけです。

ケース2.相手が口下手

役職層を問わず表現力には個人差があります。言葉巧みに丁寧に考えていることを伝えてくれる人もいれば、口下手で何が言いたいのかわからなかったり発言量が少ない人もいます。役員などの役員上位者でも(多くはありませんが)口下手で何を考えているのかわかりづらい人もいらっしゃいます。

そういう口下手な相手の場合は特に、情報のノイズが多いもしくは情報量が多いので、腹の中で何を考えているのか、本当は何が言いたいのかについてこちら側が仮説を立てることが求められるわけです。

ケース3.相手自身がモヤモヤしていて言語化できない

戦略ファームが請け負う仕事は、大体経営イシューのど真ん中で、非常に難易度が高いものが多いです。特にプロジェクトの序盤は、答え仮説もはっきり見えず、暗中模索の状況が続きます。そういうとき、クライアント自身も何が気になっているか、何が引っ掛かっているかわからないことが往々にしてあるのです。もやもやしているが、そのもやもやが何なのかすらわからない。だから戦略ファームに対して明確に課題感やリクエストを言語化して伝えられない。こういう状況は非常によく生まれます。

何でもやもやしているのか。
もやもやの原因や背景は何か。

クライアント自身すらわかっていないことを、コンサルタントが先回りして「おそらくこうじゃないですか?」と言語化してあげることが大事で、そこにも仮説思考が求められます。これがうまくいくと「そうそう引っ掛かってるのはそこなんだよ!」と有難がられますし、それをきっかけにプロジェクトがぐっと前進することもあります。

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以上の説明からクライアントに対する仮説思考がとても大事であることがご理解いただけたのではないかと思います。ほかの仮説思考と同様にクライアントに対する仮説思考も経験値がものを言います。コンサルティングファームでも、一般には パートナー > シニマネ・プリンシパル > マネージャー > コンサルタント の順にクライアントに対する仮説思考が強いです(まれに、パートナーなのに「え?!」と思うような仮説や見立てをしてしまう人もいますが笑)。

この仮説思考が強いシニアがプロジェクトにいると、プロジェクトが炎上することはまずないと思います。火種が生まれた時点で察知して火消しできるからです。また、クライアントの期待値にミートすることにフォーカスしてワークできるため、作業の無駄や手戻りが減ります。すなわち生産性が上がります。

クライアントのイシューや論点に対する答え仮説を立てる力と同じくらい、クライアントに対する仮説思考は大事です。アップル自身にとってもさらに強化していきたいと考えている成長課題の一つです。

なお、この力はコンサルタントだけに求められるものではなく、営業の仕事、経営者の仕事など、人に対する洞察が求められる仕事には共通して必要とされるものです。デキる経営者はデキる営業マンは、ほぼもれなく相手の心を先回りして掌握する力に長けていると思います。


今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!

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