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No.2がNo.1

戦略コンサルタントのアップルです。

今回の記事では、ナンバー1ではなくナンバー2が実はおいしいということをいくつかの視点で書いてみます。

幼少期に祖父から言われた言葉

アップルは祖父母と同居していました。毎晩の食卓もよく祖父とともにすることがありました。祖父は酒飲みだったので、酔っぱらいながら小学生の私にいろんな話をしてきました(やや絡み酒なので、めんどくさいと思うこともしばしばありましたが笑)。

ある日の晩、祖父は唐突にこう言いました。

「アップル、お前は将来ナンバー2を目指せ」

いろんな話を聞いて、そのほとんどは忘れているのですが、なぜかこの話だけ覚えています。小学生のアップルなりに何かピンとくるものがあったのでしょう。

なぜ、ナンバー1ではなくナンバー2なのか?

理由は、ナンバー1は責任を取らないといけないからということでした。祖父は歴史小説が好きだったので、戦国時代を題材にした小説を色々読んでいました。戦国時代の武士の責任の取り方は切腹です。そして、率先して責任をとって切腹をするのはナンバー1です(無論、ナンバー2以下も連帯責任で切腹することもあったでしょうが)。

ナンバー1というのは見栄えは良いが、このように責任も取らないといけないのでうまみがあるポジションとは言えない。だからナンバー2がちょうどいいんだ。こんなような論旨だったと思います。

その頃は小学生だったので、「へー」と話を合わせていたくらいだったと思いますが、わかりやすい話だったこともあり記憶に残りました。

今の時代も、例えば企業が不祥事が起こすと、真っ先に責任を取るのは社長です。社長が感知し得ないところで不祥事が起きたとしても、立場上頭を下げたり、自らを一番重く処分する(責任をとって職を辞すなど)しきたりがあります。

政治でも、一番責任を問われるのは内閣総理大臣です。大臣が不祥事を起こしたとき「総理の任命責任はどうなんだ!」と追及されるのはよく見る光景です。

このように、現代でも、ナンバー1というのは常に責任をとるリスクにさらされており、確かにみようによってはおいしいポジションとは言えません。

ナンバー2の3つの旨味

以上は組織の中の人のナンバー1、2の比較論ですが、例えば企業の業界シェアのナンバー1、2の比較論もあります。主に企業のナンバー2を念頭に、ナンバー2の”3つの旨味”について書いていきます。

  ①ナンバー2に対しては期待値が低い

ナンバー1は目立ちます。一方でナンバー2というのは、ナンバー1に比べればかなり目立ちにくいです。

よく引き合いに出される例は、世界の山の標高ランキングです。最も高い山がエベレストであることは誰もが知っています。では2番目に高い山は?と聞かれると答えられない人がぐっと増えます(答えはK2)。このように、ナンバー2はナンバー1に比べて格段に目立ちにくいです。

ですが、これは、逆の考え方をすれば、「ナンバー2に対する期待値は低い」とも解釈できます。期待値が低いからこそ、ナンバー2が何かをしでかすと「すごい!!」と称賛されます。ナンバー1が同じことをするのよりかなりのインパクトをもって称賛されます。

分かりやすい例が、東大と京大の比較です。日本のナンバー1の大学は東大、ナンバー2の大学は京大と言われていますが、東大卒の人がノーベル賞をとっても世間の反応は「まあ東大卒の人だから、順当だよね」という感じになりますが、京大卒の人が(科学系の分野で)ノーベル賞をとると「やっぱ科学分野での京大はすごい!」という反応になります。この背景にはナンバー2に対する期待値の低さ(逆に言えばナンバー1に対する期待値の高さ)があるように感じます。

期待値が低いからこそ、評価されやすい。
これがナンバー2のメリットです。

  ②判官びいきの応援を受けやすい

日本人は判官びいきの国民性があるといわれます。弱い立場にある人に対して同情を寄せたり応援しようとする心理があります。

ナンバー2が、「打倒ナンバー1」というチャレンジャー精神で何かをしようとしていると、自然と応援したくなります。そういう味方を付けやすいというのもナンバー2のメリットでしょう。

  ③自由にとがったことができる

これはかなり大きなナンバー2のメリットだとアップルは考えます。

ナンバー1には「バランス」が求められます。例えば業界トップ企業だと、業界を背負う立場として、バランスを逸した、言い換えれば「とがったこと」がやりづらいです。

一方で、ナンバー2には「我が道を行く」ことが許されます。業界を面白くするためのちょっととがった新たな取組をやりやすい立ち位置にいます。ナンバー2のビジネスにおける基本戦略は差別化戦略なので、業界トップに差別化するために常に新しいことを仕掛けないといけない立場にあるとも言えます。

例えば、携帯電話業界をみても、業界2位のKDDIはとがった取組をしています(業界1位はドコモ、3位はソフトバンク)。CMひとつとっても、ドコモが真っ当なCMを流しているのに対し、KDDIはおもしろおかしい三太郎のCMを流して尖りを出しています。

ナンバー2は、王者ではなくチャレンジャーだからこそ、自由にとがったことをできるし、自由にとがったことをやらないといけない立場にある。これもナンバー2のある種の魅力だと思います。

ナンバー1というのは1つのモノサシで測った結果

このように、ナンバー2にはナンバー1にはない数々の旨味があり、あえてナンバー1を目指さない方がハッピーという考え方も十分あると思います。

ナンバー1というのは、ある一つのモノサシで測った結果でしかありません。業界トップという意味でのナンバー1は、「業界シェア」というモノサシでトップであるということ以上でも以下でもありません。

例えば「自由にとがったことのやりやすさ」という別のモノサシでは、ナンバー2>ナンバー1という捉え方もできるわけです。

ナンバー1になれるけどあえて目指さず、ナンバー2のポジションに納まり続ける。そんな生き方があってもよいのではないかと思います。


今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!



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