見出し画像

OEMはケンカツの最重要戦略

□本記事の構成とケンカツの概要

まず冒頭に記載しておきますと、「最重要」とは「弊社にとって」ということではありません。「建設会社さん及び建設作業員さんにとって」という意味ですので、ご留意下さいませ。
また、これを事業として実証していくわけですから、長々と書き綴る野暮なことはしたくない一方、OEMはケンカツにとって重要な岐路になると考え、どのような意思決定があったのか、内外に示す目的としてこのnoteを公開することとします。
それでは本題へ↓

建設職人マッチングサービス『ケンカツ』をシステムとして複製し、各建設会社さんに個別提供するOEM(おーいーえむ)事業の発表を行いました。

OEMパンフ(合体)

本記事では、概要・サービスプランに加え、実施の背景およびOEMが建設業やマッチングというUXにどのような好影響を与えるか(少なくともそれを期待しているか)を記載していきます。

まず、そもそもOEMの複製元(オリジナル)となる『ケンカツ』(以下、「ケンカツ本体、本体」)について簡単に説明しておきますと、「建設会社と建設職人(協力会社含め)とをマッチングおよび求人採用するためのサービス」となります。
幾つか特徴がありまして↓
・登録や連絡はLINE操作のみ※1で完結
・料金は発注側のみ、職人獲得数に応じた従量課金を採用
※1・LINEとは別に管理システムを用意しており、発注側は管理システムから登録職人の閲覧やオファー※2、案件の公開が可能
※2・案件を掲載して待つだけでなく、登録職人のDBから直接業務のアプローチ(ダイレクトオファー)が可能
・Zoomとも連携し、web会議のURLを簡単かつセキュアに共有可能
・今後も追加開発を実装し、HRに止まらない建設現場や業界のDXツールとして展開
…などが挙げられます。
詳しくはこちらのパンフレットをご参照下さい↓

このシステムを各建設会社専用に複製して提供する事業が「OEM」ということになります。なお、必要に応じて個別開発を実装します。
具体的な利用シーンとしては、自社のLINE公式アカウントに職人情報を集め、「こんな仕事あるけどやりたい人はこの指止まれ」みたいな一斉送信を打って広く募集をかける、そんな仕事の仕方が出来るというわけです。
複製方法としては、LINE公式アカウントが持っているパラメータ、チャネルIDなどとケンカツのシステムを紐付けすることで実現します。複製するLINE公式アカウントの管理はケンカツ上で可能でして、必要な機能は全てケンカツ本体で実装しているため、各社毎の開発費用の負担なく、月額費用のみでご提供出来るわけです。
なお、単にLINE公式アカウントの運用代行ということではありません。ケンカツには、LINE社が公式の管理画面で提供しているオフィシャル機能の補完として様々なオプション機能が実装されていますが、それらを公開して別の事業者も使えるようにする(常識的なことを除き例外は一切なし)、しかも開発費用無料という点で、それなりにエポックメイキングなことと自負しています。


□建設業界内部の高い意欲関心とケンカツの凡庸性

なぜ、このような決断に至ったかをご説明すると、「そのような需要があったから」に他なりません。そして「その方が良いんじゃないか」と思うに至ったからです。

ケンカツは非常に長いβ版を経て今の形になりました。試作なのでその期間は売上が立ちません。この事業に限っては3年以上、赤字を垂れ流しながら続けてきました(言い方悪いですが、弊社にとってはお荷物でした 笑)。
お陰でサービスが中々固まらず、その過程で大手ゼネコンから中小零細の工務店、一人親方まで、ケンカツを持って各地の建設事業者を回ってみると、幾度となく、「ケンカツと同じようなもの(でもちょっと違うもの)を作って欲しい」というお声を頂いたわけです。ある意味、この声が励みになってました。
実はこの業界の社長さんというのはITに対して積極的に動いているorこういうものを作りたいというのを明確に持っているケースが多いです。この実態に対して「建設業界は全体的にITが遅れてて…」みたいな一言で切り捨ててしまうと業界認識が変わってきます。
「マッチングみたいなこと」も割と普通に行われいます。場合によっては建材屋さんや損保会社などが担うケースもあります。どちらかと言うと俗人的な紹介・仲介になるので「マッチング」と言い切ってしまうのは少し違和感ありますが、サービス化・システム化されていなかった、というだけかなと。
いずれにせよ、最初は冗談半分で聞いていたのですが、どうやら本気で欲しがってるぞと。仕組み化した上で自分達で所有したい、それを使って自社や仲間内でネットワークを広げていきたいと考えている事業者が大多数いた(いる)ということです。
ケンカツで実装していることって「LINEでこういうことできたらいいな」という、はっきり言えば誰でも思い付くことです。イメージがしやすい形で提案したことで、潜在的な欲求を喚起したのかなと感じます。「そうそう、これだよ!」と。

□「OEMが良いんじゃないか」と思った根拠

とは言え、ケンカツの複製版を同じ業界に提供するということは、競合を自ら増やし、そのシステム優位性を失うことにもなりかねます。実際、そのように感じることもあったのですが、技術を閉じ込めることにあまり意味を感じないようになりました。建設業界全体としてどれだけ進展をするか、その方が全然大事だと思うに至ったわけです(正直言うと、半分はケンカツ単体で進めていくことの難しさを感じた、というのもありますが)。
以下にその根拠を記載します↓

①クローズドで集めたい
建設業にマッチングシステムとして定着させることはそれなりに難易度が高いことだと感じています。前述した通りマッチング自体は日常的に行われていて、その機会が飲み会だったり、Facebookのグループトークだったり、それらはそれなりにワークしているように見受けられます。
それをアプリなどで代替えすることの違いは何かと考えた時、業務情報の秘蔵性を担保しているかどうか、という視点があるのではないでしょうか。秘密保持もあり、不特定多数に見られてしまう形で情報を出すのはうまくない。
ケンカツ本体では「ダイレクトオファー」という形でその要求に応えているのですが、OEMはデータベースなどもセパレートされ、ケンカツ本体にも他のOEMにも入りません。完全に秘匿空間です。

②マッチング結果の責任を誰が取るのか
マッチングして採用した相手に対し、以降の責任のどこからどこまでを誰が取るのか、これを明確にした方が良いと考えます。
マッチングサービスは、あくまでもその機会を提供するところまでが業務なので、それ以降の責任は範囲外という認識です(ケンカツ本体もそうです)。ただ、その認識が希薄な状態でサービスを受けてしまうと、トラブルになりやすいのでは?
OEMは独自に職人や協力会社を集め、自社の仕事に割り当てるわけですから、責任の所在は明確です(その分、システムのリース代しかかからず、成果報酬などを徴収する権利を放棄しているわけです)。

③選択肢が増え、働くことが自由になる
これが一番大きいですが、建設マッチングサービスは、IT企業ではなく実際に仕事を持っている建設会社が回した方がうまくいく可能性が高いと考えています。うまくいく、というのは働き手の流動性が高まる、という点においてです。
少なくとも弊社は単なるIT企業であり、建設業の現場案件や仕事、事業者の繋がりを持っているわけではありません。まずはそれらをかき集めてくる作業が必要です(これがそもそもけっこうな無理強いなわけです)。一方、建設会社さんは既に案件を持っています。働き手だけ見つけてくればすぐに仕事が始まる。このスピード感、話の速さは働き手にとって魅力的なはず。
働く側からしたら、マッチングや求人、人材派遣などのサービスを一つに絞る必要は一切ありません。どこから入っても良く、結果として仕事を得られればそれで良いということになります。
結局、職人の受け皿になるのはIT企業ではなく本業の人たちです。この事実を正面から受け止め、そこをブーストさせる役割を担いたいと考えました。

④発注側の調達コストを抑えられる≒働く側の取り分が増える
多重化しがちな建設業界において、建設労働人材の調達を自社主導で行うことで重層化を一枚でも剥がし、コストを抑え、利益確保に繋がると考えています。
冒頭で紹介したように、LINE公式アカウントの中に建設職人が100人200人…1000人と溜まっていたらどうでしょうか?昔働いてくれたあの人、また声をかけてみたいなー(逆に、向こうから声かけてくんないかなー)、そう考えたことがあると思います。
こんな時、働き手の見込みをプールしておくということで、逐一フィーが発生することなく、社内単独で労働者の調整がしやすくなります(もちろん、個人的にLINEやメールで繋がった職人に対して、コピペを用いて同様のことは可能ですが、一斉送信やセグメント配信は出来ません)。
OEMはシステム利用料だけをお支払い頂きますので、調達コストが安定化し、利益幅の拡大が可能になります。逆に言えば、うまくいかなくてもシステム利用料は発生しますが、それにしてもかなり安価な料金体系でご提示出来ているものと考えます。
プラットフォーマーのアルゴリズムではなく、自社のオーナーシップを尊重する、ということです。それが自由に商売することだと思ってるんですよね。
なお、これは、働き手に支給される日給を抑える、という意味ではありません。調達に関する余分な費用を抑えられる、という意味です。直接の発注者が運営することで中抜きになりようがなく、現場で働く職人の労働権利を確保する効果に期待をしています。

⑤抱え込みたい需要にも応じられる(条件付き)
これは議論の余地がありますが記載をしておきます。理想はもちろん、オープンかつ自由な労働環境が好ましいと言えます。
ただ、ビジネスにおいては、繋がった相手とはなるべく専属で仕事をしたい、そういう考えもあるはずです。この欲求自体は否定出来ることではなく、一概に「囲い込み」と切り捨てられない心情があります。むしろ、そういった強固な繋がりを作ることこそが建設会社にとっての強み、資産になると考えます。
ただし、それは双方の思いが一致して初めて成立する商取引です。抱え込みと捉えるか信頼関係と捉えるかは当事者にしか分かりませんが、③の通り働く側に多様な選択肢を提示出来るという点において、OEMはこの課題を解決すると考えます。

⑥開発費負担がない
OEMは原則、システム開発費が発生しません。もし仮に、独自にマッチングサービスやアプリをゼロから作るとなった場合、webアプリで200万円〜スマホアプリだとその倍程度はかかってくると思います(概算かつ弊社独自の試算)。
OEMは、個別開発なしで月額3万円です。年間で36万円。ちょっとしたHPを作り、運用するのとさほど変わりません。

⑦ケンカツの成功体験(失敗含め)を受け継げる
ゴールドラッシュ時代、一番うまくいったのは黄金を探しに行った人ではなく、その人たちにツルハシやデニムを販売する事業者だと言われています。ただ、これはあくまでも自分たちが率先してリスクを背負い、現場のニーズを込めることで始めて成立する考えと思います。
ケンカツと同じようなものは確かに誰でも思い付くかもしれませんが、簡単に作れるわけではないです。採用されたこと=オープンにしている技術仕様に限らず、使われなかった技術、あるいはこれまで培ってきた受託開発案件で獲得した知識や技術資産も総動員しているからです。3年かけたと言いましたが、それだけの時間がケンカツには流れているということです。
A社にとっての金のツルハシがB社には通用しない、みたいなこともあるでしょう。今後も、ケンカツは技術の見本市的な役割として、必要か否かは別に技術検証してみたい機能を率先して実装していくわけですが、そのチャレンジコストをケンカツ本体が被ります。そしてそれは、目に見える成果物以上のものを受け取ることが出来るということです。
実際、ケンカツにはZoomとの連携も実装されてますが、去年の4月、いよいよこれからZoomが本格的に使われる、というタイミングで追加した機能でして、他業種含め相当早かったと自負しています。

⑧全体最適も個別開発によるハウスルールを拾うことも出来る
ケンカツは、マッチング(人材獲得周り)という限られた業務のみならず、もっと深いところ、日常業務をデジタルの力で効率化していくことを目的としています。今後も、あらゆるIT企業とのAPI連携を見込んでいますが、その時、それらを一つのアプリケーションの中で実装するのは難しいです。マッチングと日常業務は本来、相反する業務だからです。
また、建設現場には共通の業務や課題はもちろんありますが、本当の意味で課題を解決しようとすると、個別開発するしかない局面が多々出てくるはずです(冒頭で例を出した通り、「ケンカツと同じようなもの(でも違うもの)」というのはそういうことです)。ハウスルールと呼んでいますが、ケンカツ本体は建設業全体としての役割を担うため、個別機能の実装に応じることが出来ないこともあります。じゃあ、その都度、毎回ゼロから作り直していくのか。
これらの問題を解決するためには、個別アプリケーションを複製し、必要に応じて個別開発が出来るような形で設計をする、そのニーズに応える目的がOEMにはあります(この場合、個別開発扱いとなり、開発費用が発生します。)。
建売か注文住宅かみたいな例え話をしていますが、確かに注文住宅の方がこだわったものは作れるでしょう。ただ、その都度設計をしていくため、コストがかかります。建売でも雨風凌げればそれで良いという人もいるし、その中で多少の個別カスタマイズも出来れば尚良いと。
余談ですが、プログラミングをすることなく、ツールを用いてオリジナルのアプリやサービスを作成する工法をノーコードと呼び、HP制作などでは一般的になってきました。ケンカツOEMはノーコードなのか、ということですが、結論としてはノーコードサービスではありません。それをやるにはもう少しインテリジェンスを積む必要があると考えていて、現状では個別開発に頼るしかない状態です(時間やお金がかかります)。

⑨ケンカツ本体との連携
上述した通り、OEMで集めた職人さんをケンカツ本体とごちゃ混ぜにする、当たり前ですがそういったことはありません(と言うか、LINEの仕様上、むしろそれは技術的に不可能です)。
ただ、連携という可能性を探っていきたいとは思っています。それは、OEM→ケンカツではなく、ケンカツ→OEMということでして、ケンカツ本体の職人さんに対してOEMのLINEをおすすめする取り組みは実施していこうと考えています。

⑩ケンカツは建設事業者ではない
この事業展開の前提に、ケンカツを運営している株式会社INJUSはあくまでもシステム開発会社であり、建設事業者ではないということが挙げられます。弊社が自ら職人を調達&組織化し、施工をするということをしません。なので、利益相反になりません。
だからと言って、ケンカツ本体の役目が終わるわけではありません。建設会社ではない弊社だからこそ、フラットかつニュートラルな立ち位置として、サードマンとしてのポジションを担っていきたいと考えています。

□マッチングから労務者調達システムへ、UXの転換

以上、OEMは試してみるだけの価値ある取り組みだと声高々にアピールをさせて頂きました。
とは言え、マッチングサービスが増えたところで、あるいは自社専用のマッチングサービスを持ったところで、実際に働き手が増えるわけではありません。実用するための労力やコストは必要になってきます。
ポイントは、突出した一社が出現すると言うより、外部依存することなくどの事業者でも手軽に環境が構築出来る、という点だと思います。これが潜在的なニーズと考えます。

そして、この傾向は建設業に限った話ではありません。弊社はシステム開発会社として一括見積もりサービスに登録している関係で毎月80件〜100件程度の開発要望を見ておりますが、発注や相談の数で最も多いのがマッチングです。「これだけ世にマッチングアプリがあるにも関わらず」です。つまり、マッチングサービスというのは「誰が運営するか」でサービスとしての可能性が高まると、そう考えている事業者が多いということです。例えば、もっと踏み込んで専門性や地域性の高い小規模のコミュニティサークルのような形でのマッチング需要があるということ。
そして、当事者が自らサービスオーナーになるOEMは、もはやマッチングではない。派遣でも求人採用媒体でもハローワークとも異なる、全く新しいUX「従業者調達装置」のような全体像で考えています。

マッチングアプリとの違い

ケンカツ本体はマッチングとして、OEMは労務者調達システムとして、異なるUXのハイブリッドでサービス展開を通して、建設業における課題に多角的にアプローチ出来るんじゃないかと期待をしています。

最後に、この「業界単位で一つLINEを作って複製していく」というビジネスモデルそのものがケンカツの妙味であり、新規性の高い取り組みと言えます。スマホアプリの場合で同様のモデルは難しく、アプリケーション部分をLINE公式アカウントで実装しているケンカツだからこそ、実現可能なビジネスモデルとなります。
「弊社単独でやるのか」という問題はさて置き、他業種横展開はあると思います。なお、これはまだ独り言ですが、看護師の日雇い派遣が解禁されるとのことです。

□サービス内容

_336導入の流れと料金

コラボ等、お問い合わせご要望は下記より、お気軽にご連絡下さい↓
https://controller.kenkatsu.tech/partner.html


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?