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基本に忠実に、コンクールで問われる真意

フランスレストラン文化振興協会(略称、APGF)note編集部員です。
APGF公式note、今回は、メートル・ド・セルヴィス杯に4回出場経験のある小川 淳一様からの示唆に富むメッセージです。
是非、小川 淳一様の貴重なコンクール挑戦を通じて得たすばらしい経験談をお楽しみください。


ホテル宴会サービスの仕事から教わった「仕事の心構え」

 昔、新人時代に経験したこと、その当時の先輩方から教わったことというのは、たとえ年月が過ぎようとも鮮明に覚えているものです。

 私の場合、20歳でリーガロイヤルホテルに就職し、宴会サービスへ配属されました。

歳が10歳、20歳も離れた先輩方や上司から厳しく教わったことは、「宴席前の抜けのない周到な準備」「正確な仕事とスムーズな業務の引継ぎ」でした。

 宴会サービスの特性上、90%は事前準備で決まるとの言葉通り、綿密なミーティング、後輩への業務指示など、宴席の成功には数多くの準備が必要でした。上手くなるために、当時は難しいご宴席の前日は、泊まり込みで翌日の宴席へ備えたものでした。

 しかしながら、上手くいかなかったときは、宴会キャプテンとしての力量を問われます。例えると、パーティーのお席で水をこぼした後輩スタッフが居たときは、事前に水のサービスを指導しなかった自身の責を問われ、セミナーで多数のお客様の誘導が詰まれば、人員配置のミスがなかったかを問われます。このことから、「もし自分がより良い采配が出来れば」を常に考えるようになりました。

 失敗したときには他人を責めたりすることなく、自身に何が足りなかったかを考えたほうが、スキルアップに繋がるだろうと感じました。

このことは今でも仕事の心構えとして、後輩に伝えたい事の一つです。


フレンチレストランの世界

 25歳からは自ら志願し、レストランシャンボールへ異動。コミ・ド・ランを経験。

配属後、任されたのは料理の運搬、レストランの什器備品の清掃・メンテナンス、チーズワゴンの片付け、そして、お客様への料理の説明。

 当然、見るもの全てが初めての世界、先輩方の食材やワインに対する確かな知識と、それを決して得意そうに見せることなく、お客様に対して優しく気遣いのある柔らかな対応

当時の先輩や上司の姿は、今でもはっきりと目に焼き付いて鮮明に覚えています。


コンクールに挑戦するきっかけ

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 28歳からは深くフランス料理のレストランサービスを追求したく、大阪・中之島のレストランヴァリエへ転職しました。お迎えからお見送りまで、接遇を任されるようになり、この頃から、レストランにおけるお客様満足とは何かを日々考えるようになりました。

 与えられた環境の中で自身が出来る最大限のパフォーマンスを発揮することこそが、チームの中での私の役割だろうと感じました。

その中で、前職で、先輩方がメートル・ド・セルヴィス杯に挑戦する姿を目の当たりにしていた私にとっては、おのずと“コンクールに挑戦する”ということは、自然なことでありました。


コンクールで得たこと

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 過去に4度、メートル・ド・セルヴィス杯に挑戦しておりますが、一度、決勝の経験はあるものの、準決勝敗退や、前回は予選敗退という惨敗を喫しました。

しかしながら、コンクールは結果が全てとは思っておりません。関西、ひいては全国に、同じ目標を持った仲間や活躍する先輩方がいらっしゃり、さらには、心から応援し、祝福し合える仲間が出来たこと。このことは私自身、誇りをもって言えることです。

 コンクールや講習会の中で、仲間とレストラン談義をした翌日、レストランに持ち帰り、新鮮な気持ちで明日からまた頑張ろうと思えることは、何事にも代えがたいことだと感じます。


基本に忠実に、コンクールで問われる真意

 メートル・ド・セルヴィス杯で問われることは、高度なサービス技量を競う大会という一面の他に、基本に忠実に、お客様に向き合う為の準備の大切さ、その心構えから問われます

「基本のテーブルセッティング」を各回、講習会から学ぶ目的もその一つであり、私が日々のレストラン営業に於いて大切にしているところも、レストランの開店前の準備です。

 店先からホワイエ、ダイニングに至るまで清掃が行き届き、着席したテーブルは、がたつきが無く、カトラリーのセッティングが毅然と出来ている事、そして、それらをこなすだけのスタッフへの教育が行き届いていることも重要です。

 レストランサービスを勉強する若手スタッフにとって、フルーツカービングやデクパージュなど、華やかなところを目標にすることは大事ですが、ふと足元を見たときに、お客様をお迎えする前に、日々の慣れから、お迎え準備が整っていないことは、お客様の満足を損なう大きな要因となり得ます。

 コンクールへの出場とその経験は、基本に忠実な仕事へと、自分を導いてくれます

決して驕ることなく、謙虚な気持ちと素直な心で日々の業務と向き合い、チームで確かな仕事が出来れば、その気持ちはお客様の満足へと繋がるはずです。


リピートしていただけるお店づくりへの想い

 レストランヴァリエでは「謙虚な気持ちと素直な心」を大事にしています。お客様へはもちろん、スタッフ間でのやりとりも同じです。

 先輩方から指示や指導を受けたとき、「業務を押し付けられた」と感じるか、「新しいことを教わった」と感じるかで、捉え方は大きく変わります。謙虚に受け止められるだけの自分磨きがまずは必要なことです。

 後輩へ指導する際も、ひとつ階段を下りて、同じ目線で指導することは教える側のマナーでもあると考えます。

 お客様に対しても、基本を忠実にお迎えの準備を整え、毎日懸命にお客様と向き合う。その先にある信頼される店づくりこそが、リピートしていただけるレストランであろうと考えております。

 コンクールの出場はレストランサービスの基本から見つめなおす良い機会となります。4回出場したその経験から、ますますコンクールの発展を願っております。5回目の出場は、より多くのライバルとめぐり逢い、競えることを願っております。

大阪・中之島 レストランヴァリエ
マネジャー  小川 淳一

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フランスレストラン文化振興協会(APGF)
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