見出し画像

しなやかに、洒脱に、プロジェクトをつづけていく。「だじゃれ音楽」は止まらない!

東京アートポイント計画」のプロジェクトのひとつ、「アートアクセスあだち 音まち千住の縁(以下、音まち)」で展開中の野村誠『千住だじゃれ音楽祭』。音楽家の野村誠さんと共に、地域の人たちが気軽にだじゃれを言い合い、そこから音楽を生み出し、市民と共に作り上げる音楽プロジェクトです。別々の言葉をつなげることで生まれるパワーや意外性から、新しい音楽や新しい作曲方法を見つけています。

現在は、参加型のオンラインフェス世界だじゃれ音Line音楽祭 Day1を、2020(令和2)年10月31日(土)に開催するべく準備中!実は、このイベント実施に至るまでには、予定していたプログラムの延期や中止、内容検討など、さまざまな紆余曲折がありました。壁にあたっても、ユニークに進みつづけてきた「千住だじゃれ音楽祭」の道程をご紹介します。

2014年、1010人の演奏者によるコンサート「千住の1010人」を実施。いざ、再演へ。

「千住だじゃれ音楽祭」では、2014年に足立区千住地域の魚市場・足立市場で1010人の演奏者による市民参加型コンサート「千住の1010人」を開催。楽器はもちろん、鍋や瓦、キャッチボールなどといった演奏パートも設けられ、壮大な「だじゃれ音楽」が奏でられました。

「千住の1010人」は、千住の1010人 in 2020年と題して、2020年度にその再演を目指していました。昨年2019年度より、野村誠さんによる《帰ってきた千住の1010人》の作曲、近隣の墨田区や台東区とも連携した演奏者募集活動など、1010人での演奏を目指した準備が進んでいました。本番は2020年5月31日(日)。野村さんや事務局が出演者スケジュール、足立区内の他のイベント状況、過去の天気統計情報等々…とにらめっこしながらついに決まった日程でした。

2020年冬、訪れたコロナ禍。下した判断は「本番だけやっても意味がない」

参加者も徐々に集まりはじめ、いよいよ練習がはじまるぞ、というタイミングでやってきたコロナ禍。やむなく2019年度内の練習・活動は中止になりました。次に判断を迫られたのは、「5月の本番をやるかどうか」。当初は春先の状況が全く見通せず、今後感染が収束するのか、拡大するのか分からない状況でした。もしかしたら状況が好転して、本番だけならできるかもしれない。でも、練習の回数が減るのは確実。そもそも、みんなで新しい音楽をつくりあげていくプロジェクトなのに、本番だけやって意味があるのだろうか。主催者同士で話し合いを重ね、出した結論は秋期への延期でした。

我々の決断は延期であって、中止ではない。我々「千住だじゃれ音楽祭」の9年間は、予想外のハプニングや無茶振りの連続で、みんなそれらを乗り越えてきたから今がある。だから、今こそ、我々のこれまで培ってきた柔軟力を発揮する場面だ。ぼくたちの企画で、計画を変更しなかったことなんてない。これまでの9年間、ぼくたちは、前向きにどんどん変更してきた。変更に対応して即興で演奏するし、変更に対応する柔軟なマネジメントをしてきた。だから、本番が5ヶ月先に延期になったことだって、前向きにとらえられるはずだ。5ヶ月準備期間が増えることで、ぼくたちの企画を、さらに面白く充実したものに変更できるチャンスだ。
(2020年3月23日 延期発表時の野村誠さんのメッセージ)

1日限りの本番をやることそのものよりも、そのプロセスで生まれてくるものを大事にするため、「千住だじゃれ音楽祭」は改めてスタートを切りました。仕切り直しのゴールは、2020年10月31日(土)
※10月10日(土)でゾロ目を狙う案もありましたが日程の都合で月末に。

2020年春。今できる「だじゃれ音楽」を、今できるかたちで奏でる。

仕切り直し後、まず取り組んだのはオンライン企画。もともと本番が予定されていた5月31日(日)に、「第4回 だじゃれ音楽研究大会《オンライン》― “千住の1010人 in 2020年”に向けて―」を実施しました。国内・海外から演奏者がリモート出演。オンライン上でトークや「だじゃれ音楽」演奏を繰り広げました。

また、8月5日(水)には、野村誠さんがアーティスト・コレクティヴ「Nadegata Instant Party」の3人と対談する、アーティストクロストーク「ひょうたんから駒が出るようなはなし― まち、人を動かす、名づけられない『作品づくり』について ―」もオンラインで実施しました。

2020年夏、好転しない状況。全ての大規模プログラムが中止

2020年10月31日(土)に開催に向けた準備がはじまろうとしていた夏、東京都内での感染者数は増加の傾向にありました。「千住だじゃれ音楽祭」の主な舞台である足立区内でもクラスターが発生。「音まち」として、大規模なオフラインのプログラムを実施することが困難な状況となりました。再び主催者間で話し合いを重ね、「千住の1010人」を含め、事業として大規模プログラムの中止が決定しました。

2020年秋。思い切って方針転換へ!

オフラインイベントとしての実施見込みは立てられない。そんななか、「だじゃれ音楽」をどうやって奏でていけるのか。思い切って方針を転換し、オンライン演奏をベースに、映像を撮影・収録し、音楽作品を制作するプログラム「千住の1010人 from 2020年」へと活動をシフトすることになりました。ハレとしてのイベントに到達するために向かっていくのではなく、もう今から、だじゃれ音楽を奏ではじめてしまったらいい。そんな方向転換でした。

2020年一度きりのイベント(in 2020年)から、時間や空間を拡張し、2021年以降の音楽をみなさんと考え、実践する「千住の1010人 from 2020年」へ。
(2020年10月9日 再始動のお知らせより)

2020年10月31日、「世界だじゃれ音Line音楽祭 Day1」開催!

「千住の1010人 from 2020年」の第1弾として、それぞれの場所からオンライン演奏を楽しむ参加型フェスティバル「世界だじゃれ音Line音楽祭 Day1」を、10月31日(土)に開催することになりました。

掃除機と民族音楽、カーテンとアコーディオンといった異色のコラボレーションから、手づくり楽器をつくったり、本をパタパタひらいて演奏したり、香港やインドネシア、タイのゲストと共演するユニークなセッションまで、盛りだくさん。当日の様子はYouTubeにてライブ配信されるほか、自分の好きなワークショップを選んで事前申し込みをすれば、演奏に参加することもできます。

紆余曲折、試行錯誤を経て、改めて一歩を踏み出そうとしている「千住の1010人 from 2020年」。ご視聴はもちろん、ぜひ実際の演奏にもご参加いただけますと嬉しいです。

だじゃれは、音楽は、コミュニケーション。
見ているだけももちろん楽しいですが、実際に演奏者として自分が音楽の一部になる瞬間は何ともいえないグルーヴ感があります。
オンラインという気軽に参加できる機会を生かし、ぜひ「だじゃれ音楽」の世界に一歩足を踏み入れてみてくださいね!

世界を変えるためにいろんな戦い方があると思うけど、僕らは「だじゃれ音楽」によって世界を変えようとしているんです。「世の中を変える気があるのか?」と思われる戦い方かもしれないけど、だじゃれ音楽を通じて生きやすい世界を作れると思ってるし、今後も諦めずに続けていくし、そこから真にユニークで新しい音楽を生み出していこうと思っています。
(野村誠インタビュー「だじゃれで超える分断。音が繋ぐ人。『だじゃれ音楽祭』のロマン」cinra.net、2020年3月26日)

▼東京アートポイント計画についてもっと知りたい方はこちら


ありがとうございます!嬉しいです。
10
(公財)東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京所属。東京アートポイント計画プログラムオフィサー。「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」、「ファンタジア!ファンタジア!-生き方がかたちになったまち-」を担当。長距離通勤中。隠し技はクラリネット。