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作品のデザインをひねり出す…

どんなものを作るにしろ、デザインの良し悪しは非常に大切です。
そんなことはわざわざ言うまでもないですね。

作家の皆さん、どんな方法を使われてるんでしょうか?

ビジネスであれば、ブレーンストーミングとか、KJ法とか(サラリーマン時代に研修でよくやる…)といった手法があると思いますが、クラフト作品のデザインには、こういった手法は使いづらいです。

大体は、なんとなく頭に浮かぶのを待つっていうやり方なんじゃなかろうか。

かく言う私も、何か特別なことをしている訳ではなく、ふと、頭に浮かんだことを形にしているってことが多いです。

ふと、頭に浮かぶ瞬間がどういう時かって思い起こすと、なにがしかの「用」があって、これを満たすにはどうしたらいいかっていう問いかけから始まっていることが多いです。

ただ、自分が扱っている木材は、その特性上、金属やプラスチックの様に融通が利きにくい面があるので、ここが一つの関門ですかね。

逆に、この不利をうまく乗り越えられれば、新しい分野が広がっているとも言えるかもしれません。

私の場合、

「これ、木じゃ無理じゃね?」

って思うものも、敢えて木で作ることがあります。
定石を無視してるっていうか…
(先人の知恵を軽視してるわけじゃありません。木を扱う知恵は、世代を超えて受け継がれてきた叡智と言える素晴らしいものです。)

「チャレンジャブル」っていうか。

だから、「本当に大丈夫かな?」って思うこともあります。できる限りの対策はしてるんですが、それでもトラブったらと思うと…。

弊工房の定番商品に、木の風車がありますが、これも初めて作ろうと考えた時も、おそらくモノにならないだろうと思っていました。

風車の回転翼は厚みが1mm程度。

これだけ薄くすると、反ったり割れたり捻じれたりといった変形が起こる可能性が非常に高くなります。

板という字をよく見ると、「木」に「反る」っていう字が組み合わされていますよね。

そういいたくなるくらい木の板は反るもので、特に厚みが薄くなるとその傾向は顕著になります。

反った3mm厚の杉板。枕にしている材は直線が出ています。

なので、

作ったはいいけれど「翼のよじれた、さぞかし見栄えの悪い作品」になるんだろうなぁ…

と思っていました。

これまで、私と同じような木の風車を作っている人を見かけた事はありませんが、ひょっとしたら、同じように考えて「初めから無理」って思ったのかもしれませんね。

まぁ、ダメもとで。上手く行かなかったら、「やっぱね…」で済ませばいいじゃん…と。 当時は趣味だったからできたともいえる…(笑)

そう考えて作った一作目がこれです。

アメリカの田舎で今も使われている通称「インデアン風車」がモチーフ

結論として、翼が捩れたり反ったりすることはありませんでした。

木材の変形は、通常、内部に残っていた応力の開放や木材内部の水分量の不均衡によって発生するとされています。

応力の開放については、加工時の配慮で相当程度、軽減することができますが水分量の変化については、使用環境に大きく左右されるため、

人工乾燥を施して、木の乾燥状態を管理したり、
木固め処理を行ったり、
表面を塗膜で覆って、水分の出入りを遮断したり、
変形を抑えるような構造を取り入れたり、
長い乾燥時間(10年単位の)を取って、木の動きが安定するのを待つ

といった対策が取られます。
しかし、これだけの対策をとっても、完璧に動きを抑えることは困難とされています。

木の風車では、人工乾燥材は使っていますが、それ以外に特別な処理は行っていません。
でも、これまで、10年以上にわたって作品を作り続けていますが、変形によるトラブルに出会ったことは一度もありません。

おそらく、ここまで空気中に晒されていると、また、板が薄すぎるために水分の不均衡が起こりにくい事が理由なんだと思います。

これを知った時は、なかなかに「目から鱗」な感覚でした。

固定観念に囚われていると、新しいものは出来ないな…

と実感させられもしました。
分かっている人からすれば、「そんなん、当たり前じゃん!」…かも知れませんが、愚者なので経験からしか学べない…(笑)
※ 本当の愚者は、経験からも学ばない気がするが…

自分が作品作りで意識しているテーマの一つに

「木材という素材の可能性を広げたい」

というのがあります。
木で作られる製品のイメージって、ある程度、固定化されているように思うんです。

なので、

「えっ、これ木でできてるの?」

とか、

「この構造、木じゃ無理でしょ…」

っていう場所にも、敢えて木材を使ってみたい。

もちろん、ダメかもしれないけど上手くいくこともあるかもしれない。
そうして、応用分野が広がったら楽しいなって思うんです。

木材は人が手にすることができる唯一の再生可能な素材

とも言われています。

なので、もっと木の可能性が広がったら良いなぁ…

微力ながら、そんなことを考えながらモノ作りに励んでいます。

金属やプラスチックでしか存在しなかったものが木で出来る。それだけでデザイン的にもフロンティアですしね。(笑)


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