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#ネタバレ 映画「ふたつの部屋、ふたりの暮らし」

「ふたつの部屋、ふたりの暮らし」
2019年 フランス・ルクセンブルク・ベルギー合作
口説くという介護
2022.4.19

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

若い頃に観た舞台「やっとかめ探偵団」を連想するようなお話です。

ある女性・マドレーヌは、男性と結婚生活を送っていましたが、うまく行かず、やがて夫は先立ちました。実はマドレーヌはLGBTで、アパルトマンの向かいの部屋に住むLGBTの独身女性・ニナと、長年、秘めたる恋人同士だったのです。

二人は、この機会に部屋を売り、ローマに引っ越そうと計画を立てましたが、その時、マドレーヌが脳卒中!?に。

ニナは自分こそがマドレーヌに最適の介護人だと思っています。恋人の自分にしかできないパワーと手段があるとの確信を思っていますが、マドレーヌにはプロの、ビジネスライクな介護人が付いています。

その介護人は失職したくありません。さらに、マドレーヌの娘たちはLGBTへの偏見・差別もあります。

そんな中、人生最後になるかもしれないこの恋人を、簡単にニナも諦めるわけにはいかないのです。

ニナにはセリフと普通のお芝居がありますが、マドレーヌは微表情と視線の動き、そして、わずかの体の動きで、感情を表現しなければなりません。親切な解説もなく(良い事です)、観客は自分で推理しなければなりません。

マドレーヌは何を思っているのか、記憶はもどるのか。

視点が稀有な作品ですし、他人事ではない「老いと恋」という観点からも、観ておきたい作品の一本だと思いました。

★★★★☆

追記 2022.4.19 ( お借りした画像は )

「老い」で検索してご縁がありました。少し大きめの画像ですので自動的に少しカットされました。その後、手動で少し上下しました。ありがとうございました。

追記Ⅱ 2022.4.21 ( 鍵がカギ、か )

脳卒中で一見認知症状態になったマドレーヌが、介護人がドアの鍵をかけ忘れて外出したすきに行方不明になったり、そのマドレーヌをさがして飛び出したニナが、今度は自分の部屋の鍵をかけ忘れ、泥棒に入られたり、介護人の代理人がニナの部屋のドアを叩き「約束の金を払え」と言ったり、マドレーヌとニナは向かいあった部屋に住み、これ見よがしに二つの玄関が見えたり…。

そして、「部屋は心の記号」でもありますから、マドレーヌを介護してリハビリするのは、「マドレーヌの心に入ること」でもありました。さらに、マドレーヌの娘にLGBTを理解させる(ニナを認めさせる)のも、娘の心に入ることです。

以上から、この映画の主題は「鍵」であったのかもしれません。鍵を開けなければドアは開かないという。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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