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#ネタバレ 映画「ビッグ・ウェンズデー」

「ビッグ・ウェンズデー」
1978年作品
子供から尊敬される大人になる
2015/9/11 21:46 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私の映画レビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

何がきっかけなのか忘れましたが、その昔、友人に「『ビッグ・ウェンズデー』のレビュー書きはしない」と、たわむれに約束をしたような気がします。でも、もう時効だと思いますので、そろそろ書いてみたいです。彼が覚えていても、きっと許してくれると思いますから。

この映画は大好きで、公開当時(1979年)にリアルタイムで2~3回観ました。私も青春を自覚しないほどの、青春ど真ん中でした。その後、レンタルLDをVHSにダビングしたり、LDを買ったりし、今ではDVDでコレクションしています。

でも、最近観てないのですね。

10年ぐらい前に観たときが最後でしたが、その時は、歳月の流れに、あまりの懐かしさと、己の青春が終わった哀しみを同時に感じ、いたたまれなくなり、逃げてしまった記憶があります。

私にとっては、懐メロを聴いた時のように、最高に胸が痛い一本なのです。

いろいろなシーンが胸に残っています。

その中でも、青春の中、大人の生き様を考えさせられたシーンが、今、中年になっても、重く思いだされます。

それは、性格の弱い、主人公のMatt(ジャン・マイケル・ヴィンセント)が、酒浸りで、ホームレスの様な生活を送っていたときの話です。

そんな自堕落な彼でも、サーファーの先輩であり、サーフショップの店主でもあるBear(サム・メルヴィル)は、包容力のある父親のように優しい友人でいてくれました。

ある日、酒に酔い、千鳥足でサーフショップに入ってきたMattをBearは歓待しました。ちょうどそのとき、店の外には、サーファーとしてのマットを尊敬する子供たちが数人集まり、中をのぞきだしました。

それに気づいたBearはMattに「大人になることは辛い。でも見なさい、彼らは君のことを尊敬しているんだ(彼らの夢をこわしてはいけない)」。正確では無いかもしれませんが、概ね、そんなセリフを、温かく語るのです。

あの言葉は私にも刺さりました。

あの時の私はMattの立場に、そして今はBearの立場に近いのですが、今の私にはBearの様な大人のセリフが吐けるでしょうか。それを思うと恥ずかしくなります。

大人は、子供から尊敬される存在を目指さすのが理想なのです。

この映画「ビッグ・ウェンズデー」の主題はここにありそうですね。

波は人生の試練の記号、サーフボードの上で美しく立つことは、試練に負けないで、すくっと立ち上がり、美しく振る舞うことの記号でしょう。

これは、人生の後半戦を生きている私にとっても、いまだに追いかけている作品なのでした。

★★★★★

追記 ( ホームレスだからこそ ) 
2016/1/28 10:00 by さくらんぼ

> それは、性格の弱い、主人公のMatt(ジャン・マイケル・ヴィンセント)が、酒浸りで、ホームレスの様な生活を送っていたときの話です。
> そんな自堕落な彼でも、サーファーの先輩であり、サーフショップの店主でもあるBear(サム・メルヴィル)は、包容力のある父親のように優しい友人でいてくれました。
> ある日、酒に酔い、千鳥足で、サーフショップに入ってきたMattをBearは歓待しました。

映画の終盤近くに、ちょうどこれと対になるようなシーンが出てきます。

一時は羽振りの良かったBearも、事業に失敗し、離婚して、今は本物のホームレスになっていたのです。

その姿を見るに見かねて、Mattが「自宅で一緒に暮らさないか」と誘うのですね。

でもBearは笑顔で丁寧に断ります。

たまには少しぐらい力を借りてもいいじゃないか。なぜ、断ったのだろう、と当時の私は思ったものです。

でも、あの時のBearのセリフは映画の主題と直結していたのですね。

君たちの、私に対する尊敬の気持ちが一番大切だ」とのセリフが。

施しを受けることは、哀れみを受けることかもしれず、Mattから尊敬の気持ちが消えてしまいかねないから断ったのですね。

追記Ⅱ ( ボロは着てても… ) 
2016/1/28 10:22 by さくらんぼ

>「君たちの、私に対する尊敬の気持ちが一番大切だ」とのセリフが。

そして、これは映画のラストにも出てきます。

伝説の大波に乗ろうとしている3人組を丘の上から見ている群衆。側ではゴミ箱をあさりながらBearも見ています。いつしか群衆の中の一人の少年とサーフィンの会話を始めたBear。

Bearがサーフィンに詳しいので「おじさんもサーフィンやるの?」と少年に聞かれてしまいました。

そのときBearは答えます「いや…ただのホームレスさ…」と。

あれは、自分はサーフィンとは関係ない事を強調し、3人が尊敬される存在であることを守ったのですね。

追記Ⅲ ( ONとOFFは切り替えて ) 
2016/1/28 10:42 by さくらんぼ

またキーワードの「尊敬」は、映画の冒頭に出てくるシーンでも語られていました。

泥酔状態のMattの脇を二人がかりで抱え、三人は階段を降りてきます。

そしてビーチに着くと、「ここからは一人で(海へ)行け!」と、命令口調でMattは言われるのですね。

サーファーたるもの、少なくともビーチにおいては尊敬される存在でなければならない。泥酔し醜態をさらすのは許されない、と言う事でしょうね。

追記Ⅳ ( あゝ、青春 ) 
2019/3/12 16:22 by さくらんぼ

三人組の、一番の主役だった、ジャン=マイケル・ヴィンセントさんが、2019/2/10亡くなりました。73歳でした。ご冥福をお祈りします。


( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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