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#ネタバレ 映画「ライブリポート」

「ライブリポート」
2019年作品
事件は現場で起きているんだ
2020/6/16 8:48 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

いわゆるB級映画でしょうが、すごい作品でした。

ほぼ全編クライマックスのアクションで構成されています。

刑事・警察ドラマの平均的なアクションシーンは何分になるのか知りませんが、仮に20分だとしたら、99分のこの映画は5本分に相当するのです。

それも、走る、取っ組み合いをする、銃撃をする、カーアクションをする、ヘリコプターにぶら下がるなど、盛りだくさん。

途中、笑いも出てきますが、この手の作品には、(サーカスには何とか)でピエロも必要なのかもしれません。

ストーリー的には、英・米合作の「踊る大捜査線」と言っても良いです。

缶ビールでも飲んで楽しんでください。

★★★★

追記 ( 最初から最後まで目撃することの意義 ) 
2020/6/16 10:06 by さくらんぼ

かつて「ルーツ」(Roots)という人気TVドラマがありました。

それは、主人公の(黒人少年)クンタ・キンテと子孫たちの、何代にもわたる感動の物語です。つまり、黒人奴隷の歴史の悲話で、毎回泣けるのです。

カメラはクンタ・キンテたちが知性も品格もある人間であることを描きますが、白人によって家畜同様に扱われていくのです。

奴隷家族に生まれた子供は、家主によって、家畜を売るのと同じように、遠くへ売られていきます。

その別れの悲しみ。

しかし、売られていった子供たちは、自殺などせず、新しいご主人の下、厳しい制約の中で生きるのです。

そして、やっと築いたささやかな生活。

しかし、生まれた子供は、又、売られていくのです。

やがて現代になり、差別は残っていても、昔のような、露骨な奴隷制度は廃止になりました。黒人でも優秀な人は出世できる時代なのです。苦労の末、そうやって出世したクンタキンテの子孫が、故郷のアフリカに里帰りします。

しかし、もう誰も彼のことを知りません。

故郷には(戸籍のような書類が無いらしく)かわりに口伝でそれを伝える人がいて、その人の、長い長い口伝を聞くのです。

すると、最後の最後に、やっとクンタ・キンテの名前が出てきて、「私はそのクンタ・キンテの子孫だ」と分かってもらえ、号泣して抱き抱き合うシーンが印象的でした。

昔のことで正確には覚えていません。前述した話も記憶違いがあるかもしれませんが、概ねそんな話が中心になっていたように思います。

一つのことを理解するには、現場(歴史)に張り付いて、微妙な空気感まで体験、目撃しなければ、なかなか本当のことは分からないと思います。しかし、私も含め、多くの人は遠くから見聞きしたことだけで批判を繰り返しています。

何かの手続きの時、途中で担当者が変わって、また一から説明しなければならないと、いらいらします。さらに、手間をかけて再説明したところで、最初の担当者と(心情を含めた)同じレベルの理解に到達できるかは疑問です。

ラインは継続させることが大切なのだと思います。

この映画「ライブリポート」の原題「LINE OF DUTY」からは、そんな事を連想しました。

追記Ⅱ ( 映画「ダイ・ハード」 ) 
2020/6/17 9:36 by さくらんぼ

映画「ライブリポート」を観ていたら、遠景に映画「ダイ・ハード」が見えたような気がしました。まだオマージュかまでは分かりませんが。

気のせいだと黙っているつもりでしたが、一晩たってみると、より思いが濃厚になってきたのです。

映画「ダイ・ハード」ではビルから出られない非番の警官の物語で、TVの生中継が重要な役割をしていました。

映画「ライブリポート」では「警官ではない警官」(主人公・ペニーの口癖になっていた)が、ネット配信リポーターと一緒に現場に走るのです。ペニーたちは時間から出られない(時間制限がある)。被害者は閉鎖空間で水攻めでした。

その他にも、いろいろヒントがあるかもしれません。

あまりにかけ離れていると思う方は、映画「ダイ・ハード」のオマージュだと思われる映画「スカイスクレイパー」を中間に置くと良いかもしれません。あれもTVで同時配信でした。

追記Ⅲ ( 映画「ダイ・ハード」② ) 
2020/6/17 14:17 by さくらんぼ

映画「ダイ・ハード」には主人公と心を通わせる外部の黒人警官が出てきました。彼は少年を誤って射殺したことがトラウマになっていました。

映画「ライブリポート」の主人公も事件で子供を死なせたトラウマがありました。そして閉鎖空間(ビルのつもり)で水攻めにあっている少女を救出に向かうのです。

映画「ライブリポート」には、あの黒人警官を白人の主人公に変えた、スピンオフ作品としての様相がありました。

追記Ⅳ ( 事件は現場で起きているんだ ) 
2020/6/18 10:11 by さくらんぼ

主人公の警察官・ペニーは、事件捜査で子供を死なせた過去があります。

不可抗力だったようですが、「子供を死なせた」という事実だけがマスコミを通じて独り歩きし、「悪者」のイメージが出来上がっているのです。

手柄をあげて、そんなイメージの一発逆転にかけようとしたのでしょう。

ペニーが今回の事件で、「現場の近くだから」と待機命令を無視しての捜査中に、これも不可抗力で、誘拐事件の子供の居場所を知っている大人の犯人を射殺し、ますます「命令無視の悪者」のイメージが膨らんでいきました。

そして、よりによって、その子供は黒人警察所長の娘だったのです。所長は激怒し、ペニーを捜査から外します。拳銃も取り上げて。

ペニーにしてみれば、このまま負けを受け入れれば、「悪ダメ警官を自他ともに認めた」ことになり、人生も終わりかねず、到底甘受できるものではありません。

だから孤立無援になっても、いえ、成り行きとはいえ偶然くっ付いてきたリポーターと一緒に、すべてをネットにさらけだして捜査することに掛けたのです。「世論を味方につけることが出来れば、一発逆転の可能性」もありましたから。

追記Ⅴ ( 事件は現場で起きているんだ② ) 
2020/6/18 17:03 by さくらんぼ

>手柄をあげて、そんなイメージの一発逆転にかけようとしたのでしょう。ペニーが今回の事件で、「現場の近くだから」と待機命令を無視しての捜査中に、これも不可抗力で、誘拐事件の子供の居場所を知っている大人の犯人を射殺し、ますます「命令無視の悪者」のイメージが膨らんでいきました。(追記Ⅳより)

ペニーがいくら「現場の近くにいる」と言っても待機命令が取り消されないのは、署長から「干されていた」からでしょうね。

時に上司は、仕事を干したり、逆に増やし過ぎたりするようです。

ちなみに、なぜ警察署長の娘が誘拐されたかというと、今回の犯人(黒幕)の娘が、かつて事件にあったとき、この警察署長は親身になって捜査してくれず、娘を死なせてしまったと…犯人はそう信じていたからです。ですから、今回の誘拐はその報復でした。

追記Ⅵ ( 事件は現場で起きているんだ③ ) 
2020/6/18 17:15 by さくらんぼ

公務員は住民に公平に接するものです。

しかし、映画「シン・ゴジラ」では、「この機を逃したらチャンスはありません」と、まだ避難が完了していないのに攻撃命令をだしましたが、もし、その避難民の中に自分の両親とか恋人がいたら、どうしたでしょう。

映画「終戦のエンペラー」の中にも、日本にいる恋人を救うため、密かに空襲計画の変更をする若い軍人のエピソードがありました。

逆に、映画「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」には、親族を犠牲にするエピソードが描かれています。

公務員とて人の子です。苦しい選択を迫られますね。


( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)



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