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狼像で、コロナ収束祈願

新型コロナウイルスの感染が日本でも深刻になりつつあった2カ月前から、私は「コロナ収束祈願」として、毎日1体づず、日本全国の狼(お犬さま)像の写真をtwitterにあげ続けています。今日で62日目になります。

どうして狼像なのか、という理由は少し説明が必要かもしれません。そもそも狼信仰の神社が全国にはたくさんあること自体、知る人ぞ知るで、一般的にはあまり知られていないのかもしれません。かく言う私も、10年ほど前に狼信仰について聞くまで、そんな信仰があることを知りませんでした。しかもいまだに続いていることを。

狼信仰の話を始めると、それだけで長い話になってしまうので、ここでは簡単に触れておきます。まず東日本の狼信仰の総本山と言っていいのが埼玉県秩父市に鎮座する、今はパワースポットで有名な三峯神社です。ここが狼信仰の神社で、狛犬の代わりに守っているのが複数の狼(お犬さま/御眷属様)像なのです。

そこで三峯神社/狼信仰の御利益は何かというと、時代とともに変わってくるのですが、最初は、狼は鹿や猪から農作物を守ってくれる益獣でもあり、そんなことから狼は山の神の使いとして敬われてきました。その後、江戸では、火事や盗難除けとして信仰されました。

そして江戸時代にコレラが流行ったときは、コレラ除けとして狼信仰が用いられたのでした。どうしてコレラ(疫病)と狼が結びつくかというと、コレラは、「コロリ」と呼ばれ、「虎狼狸」「狐狼狸」などとも表記されました。原因もわからず次から次へと人が倒れていく様子を目の当たりにして、人々はパニックになり、コレラの流行は、この世のものではない異界からの魔物の仕業だと思われました。

時代背景として、攘夷思想や安政2年の大地震、3年の風水害などの自然災害もあり、社会不安が広がっていました。日本を侵そうとする異国が、「千年モグラ」「アメリカ狐」「イギリス疫兎」を使ってコロリを蔓延させているという妄想を生んだのです。

そこで狐の魔物を退治してくれるのは狼しかいないということになりました。もともと狐憑きという精神的な病には、昔から狼(頭骨)が効果があるという信仰もあったのです。狼なら三峯神社だ、ということで、狼のお札をもらうために人々が殺到しました。狼のお札とは言っても、これは生きた狼と同じ意味があり、このお札を村で祀り、コレラ除けを祈願したのでした。もちろん狼信仰だけではなく、コレラ除けとして、ありとあらゆる神社祈願、護摩加持祈祷、廻り念仏、正月・祭礼のし直しなどが行われた中のひとつですが。

今回のコロナ禍でも、山梨県富士吉田市小明見に鎮座する三峯神社では、この江戸時代のコレラ除けにあやかって、新型コロナウイルスの撃退祈願祭を行い、地域住民らが感染予防を願ったというニュースがありました。(2020年3月3日付けの山梨日日新聞)

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それと皆さんもご存知のように、アマビエという預言獣がSNSで流行り、アマビエの絵をあげる人が後を絶ちませんでした。(私もあげました)それは和菓子になったり、置物になったり、書籍になったりしています。残念ながら狼像を毎日あげるのは私だけのようですが。

もちろん、狼(お犬さま)が本当に疫病(新型コロナウイルス)除けになるなどとは思っていません。でも、お犬さまに祈願するのは、自分の中にあるお犬さまのイメージ(例えば強さ)を借りて、このウイルス禍を乗り越えるぞという、自分の覚悟の確認なのです。これはオリンピック選手が、自分が優勝することをイメージする、イメージトレーニングと似ているのではないかなと思っています。

それと毎日朝に1体づつあげることは、規則正しい生活を送るためのルーティンでもあります。ともすると、曜日さえ分からなくなって、体内時計が狂いやすいので(そのことによって心身の健康を損ないます)、せめて毎日やることを決めて、必ずやる儀式、というふうに意識して、自分の生活のリズムを壊さないようにしています。もちろん、犬の散歩は欠かしませんが、それはコロナ禍以前からやっていることなので、無意識的です。

また、アマビエなどの流行り物は、深刻な状況でも楽しめる心の余裕として、精神衛生上いいことでしょうし、このイメージトレーニングを集団でやることでもあるでしょう。新型コロナに負けないぞという覚悟と、みんなで頑張ろうという連帯感の表明なのです。

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