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ガザは映画の向こうの世界なのか?

ガザ 素顔の日常』(2019年/アイルランド・カナダ・ドイツ)監督:ガリー・キーン、アンドリュー・マコーネル


〈緊急再上映〉
地中海に面した美しいビーチ。サーファーやラッパーに普通の大学生たち。
あなたの全く知らないガザ地区へご招待!


あなたはガザ地区と聞いたら、どんな場所をイメージするだろうか?「世界で最も危険な場所」「紛争地」「ミサイル」「戦車」など危険な戦争のイメージを思い浮かべるのではないだろうか?そんなあなたはこの映画で全く違うガザの一面を発見することだろう。穏やかで美しい地中海に面しているガザの気候は温暖で、花やイチゴの名産地。若者たちはサーフィンに興じ、ビーチには老若男女が訪れる。海辺のカフェの飛び切りハイテンションな店主に朝会えば、間違いなく誰もが幸せな一日を過ごせるはずだ。他にもタクシー内で歌う人々やあふれる想いを叫ぶ若いラッパーに、妻が3人、子どもが40人いる漁師のおじいちゃんなどが登場する。こんな個性豊かなガザの人々にきっと魅了されるに違いない。

「平和が欲しい。ただ普通に暮らしたい。」

東京23区の6割ほどの狭い場所にパレスチナ人約200万人が暮らすガザの住民の約7割が難民で貧困にあえいでいる。イスラエルはガザを壁で取り囲むのみならず、2007年以後は物資や人の移動も制限する封鎖政策を続けており、陸も海も空も自由が奪われたガザは「天井のない監獄」と呼ばれる。2014年と2018年の戦争では、多数の学校、病院、家屋、発電所などが破壊され、多くの命も失われるなど、ここには命の保証もない。それでも日常を力強く生きようとする人々がいる。19歳で現実逃避するためにチェロを奏でるカルマは海外留学して国際法や政治学を学びたいと考えている。14歳のアフマドの夢は大きな漁船の船長になり兄弟たちと一緒に漁に出ることだ。「欲しいのは平和と普通の生活」。ガザの人々は普通の暮らしを今日も夢見ている。

一年前に上映された映画を再び観ていた。その間に確実に変わったことは今はもうガザには笑顔はないだろうということだ。そのリアルさが胸を突く。例えば映画の中に出てくる爆撃の音は、TVでは感じられない数倍も凄くて、現実にはそれ異常に酷いのだろうと思わせる。

彼らは生きているのか?そんな疑問が今これを書きながら感じてしまう。その反対側に住んでいる我々は『ゴジラ』の新作を観て騒いでいるのだろうか?『ゴジラ』のせいではないが。

映画の無力さ、言葉の無力さ、平和の無力さを感じてしまう。それは『ゴジラ』を観ても観なくても変らない。ただ今この時にガザがイスラエルによって爆撃されているかもということだけである。

日本政府はアメリカの属国なのでイスラエル側である。そういうことははっきりさせた方がいい。すでに戦争協力者の国なのだ。映画の中の笑顔の人々の幸せを祈るか?どう祈れるのだろうか?

意識を変えていかなければと思う。もうほとんど限界の世界なのだ。ガザは映画の向こうにある世界なのかもしれない。

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