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女性に対してウラミツラミがあるような劇だった

『シンベリン』ウィリアム・シェイクスピア/小田島雄志 (白水Uブックス (34))

滑稽、悲哀、苦悩、歓喜、陶酔……。奇蹟としか言いようのない深い洞察力によって人間のあらゆる感情を舞台の上に展開させたシェイクスピアの全劇作を生きた日本語に移した名翻訳。

シェイクスピアは女性蔑視主義者だというが、まさにこの戯曲は女性蔑視の言葉で溢れている。よくもこれだけ並べられるものだと思ってしまう。

女の性情だ。たとえば、嘘をつく、これはどう考えても女だ、おべっかを言う、女だ、人を欺く、女だ、情欲、淫らな思い、女だ、女だ。復讐心、女だ、野心、貪欲、さまざまな形をとる虚栄心、侮蔑、がつがつした物欲、悪口、移り気、その他

シェイクスピア『シンベリン』

まだ続くが、これは女を男に変えても通じるな。

これはシェイクスピアが全てつくったのではなく共作ということだった。共作部分もシェイクスピアのそれまでの作品の影響を受けているようで(パロディ劇としているが)シェイクスピアをよく知る人物が関わってると思う。セリフはシェイクスピアより劣っている(そこはよくわからないが翻訳者がいうのでそうなんだろう)と言うので弟子筋なのかと思う。

ロミジュリの薬の話から悪女の王妃、ハムレットの亡霊、シーザーのローマ軍との活劇、男装する姫とか最後の強引なまとめが『終わりよければ全てよし』のようだった。善悪がはっきりしているのが登場人物が多すぎる。中心になるのは姫のイモージェンで彼女の貞操を試す劇となっている。

上流階級の女性は貞操であれみたいな話だし、その罵声が女性蔑視というのか時代のせいなのかかなり酷いから今ではあまり上演されないのかな。あとピザーニオの忠義心かな。活劇としてもローマとの戦いで面白かった。イモージュの恋人がイモージュを殺してしまったとイギリス軍で活躍したり、最後はローマ軍の捕虜となったりするのだ(確かに盛り込み過ぎるというのはあるかもしれない、名前もローマとイギリスでは変わる。でも今の人はこのぐらい盛り込んでいたほうが面白いかもしれない)。悲劇から喜劇となるロマンス劇(最後は大団円のハッピーエンド)だという。

『ダロウェイ夫人』の最初のシーンに影響を与えたとか(よくわからなかった)。これを読むきっかけもアリ・スミス『冬』で言及されていたからだ。シェイクスピアのイギリス文学に与えた影響の大きさを知る。


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