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『同時代ゲーム』を読む(その5)

『同時代ゲーム』大江健三郎

海に向って追放された武士の集団が、川を遡って、四国の山奥に《村=国=家=小宇宙》を創建し、長い〈自由時代〉のあと、大日本帝国と全面戦争に突入した!? 壊す人、アポ爺、ペリ爺、オシコメ、シリメ、「木から降りん人」等々、奇体な人物を操り出しながら、父=神主の息子〈僕〉が双生児の妹に向けて語る、一族の神話と歴史。得意な作家的想像力が構築した、現代文学の収穫1000枚。

「第5の手紙 神話歴史を書くものの一族」

娘よ、今頃になって家族構成を述べるなんて、突然お前の母親は誰なんだ?と問うようなものではないか。想像上の娘を捻出したがいいが、妻は思いつかなかった。そのへんは妙にリアリティになるのも嫌だったし、小説は細部のリアリティから成り立つものにしなければならないというのはこういうことなんだろうな(大江健三郎のコトバだと思うが)。娘よ、それでお前は去っていくのか?

お前が入水自殺して、これを書いていたとしたら本当に悲しくなってしまうだろう(狂気の沙汰だが)。それをフィクションなんだと戻すこと「リペア(repair)」を大江健三郎もやっていたのだ。妹が偽装自殺をしてCIAの目を誤魔化していたとは。アメリカ大統領をスキャンダラス・ネタで脅かす人物だけのことはある。ハニートラップを仕掛けるほどに妹は性的経験が豊富だったんだ。もしかして、私の知らないところではお前もと考えてくない話題だった。

それで兄妹はどうしようか?まあ今の時代は核家族だから、それにシングルマザーならなおさら一人っ子とか、いても大人しい弟ぐらいだろう。反抗期になっては困る。母親思いの弟がということだが、父を憎んでいるだろうな。

そんな兄弟の話。兄弟と書く男兄弟のように感じるが、『同時代ゲーム』では上に兄二人の下は弟で、それに双子の語り手と手紙の受け手の妹だった。兄弟たちは特別なエピソードもあるのだが、物語の中心ではあるまい。一番肝心なことは、父と母は村の外部の人で、母は旅芸人らしかった。

それで子供たちも母の影響を受けたのだがほとんど失敗という人生であったような。成功の可能性が残されているのは双子の語り手の僕と妹に残されているのだが、妹は「壊す人」を産みなおす役割として、僕は物語の継承を繋ぐリリーフ・ピッチャーのような存在なのだ。

そう言えば弟はプロ野球に進んだのだが、このリリーフで失敗したのだった。そして妹の入水という浪漫ある展開だと思ったが、どうにか妹は逃亡しているらしい。フーガ形式か?ザ・ピーナッツ「恋のフーガ」を思い出した。





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