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台湾から来た少女はマレビトだった?

『ボーダレス アイランド』(2021/日本/台湾)監督岸本司 出演リ・ジャーイン/朝井大智/中村映里子/城間やよい/ホン・チーヤン/吉田妙子

解説/あらすじ
台北旧市街で母と二人暮らしのロロは、日本のお盆に当たる【鬼月】初日の朝、古い本のページの間に挟まれた一枚の風景写真を見つける。その裏面には、顔も知らない日本人の父の名前が。父は、母と生まれたばかりのロロを捨て、沖縄へ帰ったのだと母から聞かされていた。「一度父に会い、真実を確かめたい」。ロロは日本語を勉強中の友人アーロンをサイクリング旅行に行こうと誘い、母の猛反対を押し切り父の故郷沖縄へ旅に出る。写真を手掛かりに目指した「みらく島」は、奇しくも旧盆の三日間、外部の者は島に立ち入ることを禁じられている島だった。ロロとアーロンは半ば強引に船へ乗り込み島へと向かう。旧盆初日「ウンケー」の日。島でロロたちが目にしたものは、不思議な”人々”の姿だった…。

coco映画レビュアー

台湾と沖縄の合作映画。日本というより沖縄は台湾の方が文化的には親しい感じがする。旧盆の風習も日本本土とは違うように思う。死者を受け入れるのは同じだが、その変遷が台湾→沖縄→日本とあるような。

柳田国男は旧盆の風習はもともと仏教的なものではなく先祖を祀るというのは日本の風習だと書いていたがどうなんだろう?

やはり折口信夫が言うように「ニライカナイ」(海の向こうにある楽園)から信仰もやってきたと考えるのが妥当かなと思う。その土地で変化したにしても、根本的な先祖を祀るというのは変わらないような気がする。

沖縄の陶芸家に取っては、その「ニライカナイ」は台湾だったのだ。しかし彼はそこに行く勇気がなかった。だから台湾の恋人と別れなければならなかった。しかし、台湾に渡ろうと決意した日に交通事故で死んでしまう。その二人の間に出来た娘が父を探しに合いに来るというストーリー。

一枚の写真から始まるロードムービー的なストーリー。そこに写っているのが灯台というのが、後から考えると深い意味を持つ。

沖縄でも島によってそれぞれ風習が違うようで、それは多様性ということだろう。ここでもノロの系譜(先日見た『『沖縄久高島のイザイホー』参照)と言えるような巫女が登場してくる。

島のノロの娘であるナツは島の風習が嫌で島を出て根無し草的に彷徨うのに戻ってきたのだ。彼女がノロの娘であるということを証明する物語でもある。根無し草の彼女は、「ウンケー」と呼ばれる成仏出来ない死者たちと共通性を持つのだ。だから彼女も「ウンケー」(今風だと彷徨えるゾンビだが)を呼び出してしまうことが出来たのかもしれない。

台湾では旧盆を鬼月と呼ぶ。それは沖縄の「ウンケー」と近いのかもしれない。何らかの理由で根無し草になった死者が鬼(ウンケー)となる。そういえばメキシコの「死者の日」とか、キリスト教とマヤ文明の風習が混じったような風習は各国にあるのだろう。

noteでそんなアメリカの葬式事情を伝えてくれた
Ringoさんの記事も面白かったので参考に(ちょうど映画を見る前に読んでいた)。

映画に話を戻すと、途中からゾンビ映画になるが『カメラを止めるな』の手作り感があった。そういえば中国の「キョンシー」は「ウンケー」の系譜だよな。あれは御札を貼れば大人しくなるのだが。仏教よりも道教的なものなのかな。

a.wikipedia.org/wiki/キョンシー

最後は上手く纏めていたと思う、まとまりすぎかな。台湾の女優も可愛かった。台湾の近代化と裏路地の感じは沖縄感(那覇あたりの市場)を感じさせるような(昔の日本のイメージかな)。

エンディング曲


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