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マッチ一本歌事のもと

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連載歌物語『マッチ一本歌事のもと』、男子高校生が繰り広げる短歌バトル!
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記事一覧

マッチ一本歌事のもと(最終話)

マッチ一本歌事のもと(最終話)

これまでの物語。

次の決戦へ!

オレは次の日、俳句部から抹消された。フミコとのメールも途絶え、フミコも行方知らずだ。そんなオレの情報源は柳棚だけになっていた。あの後、俵田が圧倒的に相手をのした後に反省会が開かれてオレの除名が尺八から伝えられたという。誰も抗議するもんは居なかったのか?それがお前らの「絆」だろうと思った。人のことは言えない。オレもフミコを見殺しにしたのだから。いや、フミコが身を捨

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マッチ一本歌事のもと(第七話)

マッチ一本歌事のもと(第七話)

これまでの物語。

いざ勝負!

さっそく先鋒の柳棚が歌を読む。この歌会のテーマは「絆」だった。五人の代表メンバーがそれぞれ一首ずつ短歌を出し合って勝敗を決めるのだが、採点はわが校の顧問の尺八(釈青空先生)、相手校の顧問へんな格好の爺さん(アリワラノナリヒラとかなんとか言っていた)、そしてわが校OBのプロ歌人である頭加塚邦夫(ずかづかくにお)というやつだった。当然、頭加塚はわが校贔屓なのだ。柳棚の

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マッチ一本歌事のもと(第六話)

マッチ一本歌事のもと(第六話)

これまでの物語

歌会始め

オレはフミコの言われるがままに放課後部室に行くと学年が同じ一年の柳棚国男に手招きされた。
「フミコを部活を辞めるんで、お前を指名だってな」
「………フミコが部活を止めるって、どういことなんだ!」
「部活だけじゃなく学校を辞めるんだから、家庭の事情だろう。貧困家庭とか?」
「フミコの家は金持ちだぞ。それにオレのメールにはそんなことは書いてなかった!」と修一はメールを見せ

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マッチ一本歌事のもと(第五話)

マッチ一本歌事のもと(第五話)

休みん俳『勝手に企画』

『同じ月を見上げて』

『マッチ一本歌事のもと』

朝、目覚ましより先に一通のメールで起こされた。上条フミコからだ。そのメールを読んで、おれの眠気は一気に吹っ飛んだ。

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今日は白百合女学園との対抗歌会です。五人の代表者によって短歌を詠み、

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マッチ一本歌事のもと(第四話)

マッチ一本歌事のもと(第四話)

上条フミコの歌論は、「もだえ神」の巫女になることだ。まず「もだえ神」というのは俺だったら寺山修司。俺がすべてを捧げられる人物(神)をイメージする。そしてそれを世界に布教したいと行動するのが「もだえ神」に仕える巫女としての役目だという。だから「もだえ神」にとってこの世界は悪魔の棲む世界なんだ、と上条フミコの論理。

そして、上条フミコの「もだえ神」は中条ふみ子となる。その方法だが「本歌取り」という和

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マッチ一本歌事のもと(第三話)

マッチ一本歌事のもと(第三話)

上条フミコの家はスタジオを兼ねたビルだった。けっこう金持ちの娘なんだと思ってしまった。応接間なのか骨董品が並んでいるような部屋で瓶コーラの自動販売機があり、コインを入れたフミコに何を飲むか聞かれた。セルフだからというのを、セフレと聞き間違えてドキマギする。

俺は彼女のコーラも持たされ階段を上がっていくと彼女の部屋に入った。そこは必要最低限のものしかない閑散とした部屋だった。白い壁、白い天井。白い

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『マッチ一本歌事のもと』(創作ノート)

『マッチ一本歌事のもと』(創作ノート)

登場人物設定

寺川修一(歌名)。寺山修司の歌集を読んで短歌に目覚める。母と二人暮らし。父は売れない作家。高校一年生。短歌部所属。上条フミコ(歌名)に短歌を猛特訓されて、ライバル高校歌会デビュー。相手校は小野マチコ率いる白百合女学園だった。屈辱的な敗戦の結果、それまで以上に短歌に目覚めていく。熱血漢。漫画的。まあヒーローだから。

上条フミコ(歌名)。中條ふみ子の生まれ変わりだと信じる女子高生。寺

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マッチ一本歌事のもと(第二話)

マッチ一本歌事のもと(第二話)

「やっぱ女史の歌は奇抜ですね」と眼鏡男が言う。
「上句でいにしえの日本に思いを馳せながら最後で現代っ子なのよね」とデブ女が答える。こいつら漫才師なのか?男の方はいまどき牛乳瓶の底のような眼鏡で、女は派手な着物を着ていた。正月なのはわかるが、まだ成人式でもないのに。

「アイツは、柳棚国男。おっべか野郎だわ。アイツまだ童貞よ」そんな上条ふみ子の言葉に俺はドギマギした。俺もまだ童貞だ!それよりお前はも

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マッチ一本歌事のもと(第一話)

マッチ一本歌事のもと(第一話)

寺川修司はマッチを擦っていた。俺は父の本棚からこぼれ落ちた本の見開きページにこの魔法のコトバを見つけたのだ。さっそく母に「マッチはないか?」と問う。百円ライターじゃいけないのだ!

「燐寸(マッチ)なんてあったかなぁ。あなた放火でもする気?未成年は煙草は駄目よ!」
「マッチというものを擦ってみたくなったんだ。この本………」と俺は父の本を母に示した。
「寺山修司?懐かしいわ。それでパパを勘違いしたの

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