![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/144358799/rectangle_large_type_2_9313fd5d39ac56b11dfefe3d5d916e5b.png?width=1200)
安くしても売れない場合は、どうすればよい?
お客様から聞いたおもしろい話です。
「定価200円の商品を150円に変えてみても、売上はたいして変わりません。しかし、同じ商品をセールで170円にしてみると、飛ぶように売れるんです。」
価格が低いものは品質が低く感じる
これは人が安いモノの価値を低く感じ、高いモノに価値を感じるためです。セールをすると「高いモノを安く買える」ことが強い購買欲求に繋がります。
これをステレオタイプといいます。
下記の図は、人や商品に対するステレオタイプを説明したものです。
![](https://assets.st-note.com/img/1717203409365-Y1LJ12FKpc.jpg?width=1200)
あなたの周りに「優しすぎて舐められる人」はいませんでしょうか。
人柄は良いが、能力が低いとレッテルを貼られるため、上記でいう「同情」のカテゴリに入ってしまっています。
しかし逆に仕事はできるが、人柄が冷たかったり、冷徹だったりする人は、ジェラシーの対象になりやすい傾向にあります。
また、エリートで仕事もできて、人格もしっかりしている人は、多くの人から尊敬されます。それは「有能かつ人柄も温かい」からです。
商品にもあてはまるステレオタイプ
これは商品やサービスにも当てはまります。
たとえば、フェアトレードによって販売されているコーヒー豆は、通常のメーカー品よりも品質が劣っているように感じます。
それは、フェアトレードという温かみの要素に対して、無意識に価値を低く感じてしまうのです。
事前活動やNPO活動に参加している人に対して「彼らがボランティアをしているのは、老後の活動として〜、あるいは一般の企業や経済活動から、はじかれてしまった人だから」と無意識に決め込んでいたりもします。
私たちはあらゆるステレオタイプによって、人や商品をパズルのピースのように意識の枠の中に、あらゆる事象を押し込めているのです。
消費者は安さが欲しいわけではない
リンガーハットの事例を紹介します。
2000年代の飲食業界は苛烈な値下げ競争を繰りひろげており、ハンバーガーが59円、牛丼が250円で売っているほどでした。
長崎ちゃんぽんで有名な『リンガーハット』も同様の状況にありました。
2000年代半ばから、小麦粉の価格はずっと上昇していました。そのため2006年には10%ほどの商品の値上げを実施しました。すると2007年頃から既存店の業績が、前期を下回るようになったのです。
そこで経営陣は、「売上が減少したのは、価格が高いから」と仮定しました。
そこで、今度は競合にならって値下げを実行。原材料や野菜は、安く仕入れられる外国産に転換し、味のクオリティを落とすことにしたのです。
すると、値段の安さにつられて、一定の売り上げの盛り上がりはありました。しかし、本来の味やクオリティが好きなファン達は、「味が損なわれてしまった」と失望してお店を去りました。
2008年にはリーマンショックが起こり、さらなる追い討ちをかけ、最大20億円の赤字を計上。リンガーハットは『もう終わった』と囁かれていました。
そこでリンガーハット経営陣を一新し、「野菜をすべて国産化・増量」するとともに、値上げをおこなったのです。
すると「食への安心」「ヘルシーさ」を求める、女性客やファミリー客が一気に増加し、『野菜たっぷりちゃんぽん』は500万食/年間を超える大ヒット商品となりました。
安さではなく「価値」を求めている
リンガーハットの事例では、「安くて低品質なもの」ではなく、「多少高くても、消費者にとって良いもの」を提供することが成功の要因となりました。
家具大手のニトリは「お、ねだん以上ニトリ」というキャッチフレーズを謳っています。これは、ただ価格が安いだけでなく、品質や機能性が高いものを提供していますよ、とアピールしたいためです。
店舗へ行けば、「セール」「特価」ではなく、きちんと「機能性」や「ベネフィット(顧客が感じる商品価値)」について言及していることが分かります。
これも上記の「人のステレオタイプ」を意識しているためです。
低価格のものは、きっと機能性を損なっているから安いんだ、と無意識に思ってしまうことへの対策なのです。
安くしても売れない場合は?
年間15回ものセールをおこなう衣料小売店さんがいました。
セールのたびに折込チラシで「安売り」を行います。当然、その期間中、一定の売上はたつのですが、またすぐに落ち込みます。そこでまたセールをおこないます。そして気がつけば、年間で15回もセールをしている店舗になってしまったそうです。
お客様からは「あそこはいつもセールをやっている」と認知されました。
「すぐにセールがあるからプロパー(定価)では買わずにいよう」というお客様が増えてしまいました。
「セール」には折込チラシや販促POPのコストもかかります。100のコストをかけ、105の売上を回収しつづける、いわゆる自転車操業の状態となってしまったそうです。
そこで「品質」を訴求する方針へ転換。
商品をさわって確かめてもらうように工夫し、機能性をアピールするPOPも順次制作していきました。
すると15回もあったセールは半減し、定価での購入率は約150%も増加しました。
いかにして高く売るか
「安くして売る」ことは簡単にできてしまいます。しかし、そこには必ず利益を削る痛みが伴います。そこに甘んじていると、徐々に、お客様の価値に向き合うという、正しい経営努力ができなくなってしまいます。
営業が楽をしようとすると安くして量を売るという考えになります。高くすると売るの大変なんです。みんなが安売り始めると安売り合戦になります。これが和牛の世界で起きている事。モスもそれに加担している。良くないことだと思っています。 https://t.co/bIwWFprSIT
— 堀江貴文(Takafumi Horie、ホリエモン) (@takapon_jp) December 28, 2022
ホリエモンも言うように、「いかにして高く売るか」は、重要な商売要素の一つです。目先の売上に惑わされず、正しい道を歩んでいきたいですね。
参考になれば嬉しいです。