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蒼月海里
2021年1月22日 19:32
東京都心には、巨大な地下迷宮があるという。 しかも、その迷宮にはたくさんの人が生活を営んでいて、街のようになっているのだ。「だって。この都市伝説、本当かなぁ?」 中学校の教室で、女子三人組がスマホを片手に噂していた。「信じるか信じないかは、あなた次第ですってやつ?」 ポニーテールにした女子が、おどけるように言った。タレントの口調を真似ていたが、「似てないし」と仲間のロングヘアの女子か
2021年1月9日 17:34
東京の地下には、《何か》がいる――。 女は、泣いている赤子を抱きながら走っていた。 雑踏から逃げるように、人の視線から逃れるように。 靴はとうに脱げ、アスファルトで傷ついた靴下はボロボロだった。「ごめんね、ごめんね……」 女はひたすら、泣いている赤子に謝っていた。 もう、我が子に食べさせてやることは出来ない。貯金も底をついてしまったし、頼れる両親ももういない。ようやくのことで、異常
2020年12月31日 17:41
ツグミという少女の友人の知り合いが、行方不明になったらしい。 ネット上でも、同僚の知り合いや、兄弟の友人の知人が行方不明になったという話が散見された。共通するのは、彼らは地下鉄に乗って何処かに行こうとしていたことだった。 ツグミの秘密基地は、迷宮のような地下世界に繋がっていた。それは何処までも続いていて、人ならざるものが蠢いているということをツグミは知っていた。「みんな、何処に行ったん
2020年12月30日 17:52
東京の地下には、《何か》がある――。 延々と続く下り階段を降りると、提灯の灯りが私を迎えた。 地下街だ。 古ぼけたコンクリートの壁が途切れ、通路の左右に提灯をぶら下げた店が並んでいる。 酒と、焼いた肉のにおいが漂っていた。 空っぽの胃袋には、かなり堪える。何処かで食わせて貰えないかと思ったものの、何処の店も満席だった。 灯りはぼんやりとした提灯のみで、地下街は薄暗かった。 客は