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キャットタワーのある家 #8 可笑しな行動
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リビングのドアを開けると、部屋の真ん中で猫がへそ天で足も伸ばした状態で寝ているのを目にする。その度に私は「床に猫が落ちている」と思ってしまう。
テレビなどで流れる動物映像でもよく猫の面白い行動を見るが、ウチでも個性溢れる行動が日々展開されている。
ゆずが気配を隠すようにして足音も立てずにそーっと歩いている時、パンッと手を叩いて大きな音を出すと、ゆずはその姿勢のままで垂直に飛び上がる。昔のギャグ漫画で、登場人物が驚いたときの表現として使われていたのを思い出して、同じだと思って笑ってしまう。面白くてかわいいので、ついつい何度もやってしまうのだけど、その度に驚かしているわけだから、ゆずの寿命が縮まるだろうかとも心配する。でも、面白いのでやっちゃう。
(びっくりしたな、もぅー!)
行動はそれぞれの個性なので、ゆずがやってもあんずはしない事も多々あって、逆もまたしかり。これは「個別の癖」で、「猫の癖」ではないのだ、というのは、多頭飼いだから気付いたことだった。
あんずが四つ足で立っている時に、真横から胴体をチョンッと押すと、倒れないように踏ん張ってから私を見る。
(何するのよ、ママ)
しかし、ゆずは同じようにすると、そのままの姿勢で床にポテンッと倒れる。
(やられちゃった~)
大阪人、特に下町の中年以上の大阪人は、路上で通りすがりに、指でピストルの形を作って人に向けて「バンッ」と言うと、向けられた人の大半は「うぅぅぅ」と言って打たれたテイの対応をするらしい。テレビで「大阪人の生態」としてロケを伴って紹介されていて、DNAレベルで「ボケ」が染みついているとコメントされていた。
埼玉生まれだが早々に大阪で生活することになったゆずは、既に大阪猫として「ボケ」を習得しているのだろうか。
一方、あんずの変な癖は私を悩ませる。発情期のオシッコまき散らし以外は粗相をすることが無く、トイレの中以外でウンチを見たことは無い。問題はウンチの後だ。人間ならばトイレットペーパーでお尻をきれいに拭くが、猫にそんな芸当は出来ないので普通なら自分でお尻を舐めてきれいにする。ゆずは、そうする。
ところがあんずは、テディベアのような姿勢で床に座り、器用にお尻をクイックイッと左右に振って前進し、お尻を床に擦ってきれいにする。おかげで、あんずがお尻で進んだ通りにウンチのスジが伸びていくことになる。更に、外出から帰ってきて床にそのスジを見つけたときには、既にカピカピに乾いたモノとなっている。
消臭除菌剤とぞうきんを手に、あんずの後を追う日々は続く。
(お尻の汚れが気になっちゃうの)