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愛知妖怪短編集 ゆるこわ

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愛知妖怪奇譚 亡国の児戯

愛知妖怪奇譚 亡国の児戯



 遊園地に、美しい骨が落ちていた。
 木のバットほどの長さがあり、石膏彫刻のように白くなめらかな線を描き、生きる意志があるかのごとく硬かった。
 廃墟と化した遊園地。夕暮れ、懐旧に捕われ侵入したものの、やはりここにはもう管理者はなかった。行政も放置しているようだ。ただ、管理者があるとすれば――目の前にいる、赤い着物の少女であろうか。金色の髪飾りがチラチラと輝いている。近所の子供であるはずがない

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愛知妖怪奇譚 やろか水、襲来

愛知妖怪奇譚 やろか水、襲来



 畦道を歩いていると、田んぼのほうから誰ともなく「やろか、やろか」と聞いてくる声がする。うっかり「はい」と答えてしまうと、その村に大水が来る。
 そんなのを「やろか水」と言う。
 そして、そんなのが、一人暮らしをする妹のアパートの蛇口に現れた。夜中に妹が一人でいると「やろか、やろか」と聞いてくるそうだ。誰かと一緒にいるときは出ないらしいが、そうそう毎晩友達を呼ぶこともできないし、残念ながら彼氏

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