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ご・ほ・う・びの日

そうですね、『自分へのごほうびの日』は大体年間60日ぐらいでしょうか。
計算すると平均、毎月5日/毎週1日ってことになりますよね?
って自分甘やかしすぎやろ!!

とまあ面白くない冗談はさておき。

だいたい毎月1回、私にとって最大級にワクワクする日があります。
それは、自宅から電車と徒歩で約40分〜50分ほどのところにある、大好きなおやつ屋さんの大好きな『パンプキンプリンのタルト』を買って食べる日です。

結局普及しなかったプレミアムフライデーのように、“毎月この日“と決めているわけではありません。少なくとも月に1回はそれを食べたいというひたすら純粋な欲望から発生する、いわば『自分へのごほうびの日』なのです。

私はちょうど1年ほど前に、Instagramでそのお店を知りました。
こじんまりとして温かみのある店内もさることながら、果物や野菜を使ったシンプルで華美に飾らない、素材そのままの魅力が際立っているおやつたちは、とても興味深いものでした。

早速休みの日にお店へ向かい、そこで出会ったのが『パンプキンプリンのタルト』です。

それを食べた時の衝撃たるや…私の語彙力ならびに表現力では、とても語ることができないのですが、「この世に存在する物質で、これまでこの世に存在しなかった驚くほど美味なものを創造する、そなたの名は何と申すのじゃ!!」と厨房にいるパティシエに向かって叫びたくなるほどのものでした。捕まるね。

とにかく、一口で大ファンになりました。

プリンと言っても、つるんとしたプリンではありません。
パンプキンを使ったそれは、ざらっと、そしてまったりとした舌触りで、口にいれた瞬間程よい甘さとパンプキンの香りが広がります。プリンの上には甘くない生クリームと、小さなハーブ(ローズマリー?)が添えられていて、一緒に口に含む事でまた違った味が楽しめます。
タルト部分もザクっとした生地の食感が良く、プリンとその下に敷かれたスポンジとの相性が最高な、奇跡の一品なのです。

本当は毎日だって食べたいぐらい大好きなのですが、さすがにそうはいきません。数年前に一度、驚くほど体重を増やしてしまった事があり、それ以来日々の糖質量をある程度抑えているので、滅多に甘いものは口にしていません。
それ故に、この『パンプキンプリンのタルト』は私にとって、とてもスペシャルな1日をもたらしてくれる特別なおやつなのです。

それを買いに行こうと決めたある日、私はいつものようにウキウキしながらお店に向かいました。雨が結構降っていましたが、外出するのも全く苦になりません。

足元をビシャビシャに濡らしてお店に到着すると、店内に3つほど設けられているテーブルで、20代ぐらいの若い男の子と女の子が向かいあって食べていました。

私は彼らの席を通り過ぎ、ショウケースのあるレジへと進みました。そこには美味しそうなシフォンケーキやいちごのショートケーキ、桃のタルト、チーズケーキなどたくさんのおやつが並べられていて、きらきらと輝いています。右から左まで、上から下まで、1つづつ全部ください!って言いたい。

「お決まりになられましたら、お声がけください」

もちろんもう心は決まっているのですが、店員さんのいつもの一言を聞いて、輝くそれらをしばらく眺めながら、次来た時にまだ食べていないおやつも買おう、とニヤついていました。

すると背後から、男の子の声が聞こえてきました。

「めっちゃ美味しいな。俺、幸せやわ」

すると女の子も言いました。

「うん、私も幸せ」


ちょっと、ちょっとちょっとちょっと!!

OH MY GOD最高やん!!

もう今振り向いたら私の背後にいる2人の周りには、ありとあらゆる美しい花が咲き乱れ、太陽の光が燦々と輝き、白い鳩が空高く飛んでいるに違いありません。

誰かと素直な気持ちで、幸せだねって言い合うことが人生の中で何回あるでしょうか。言い合わなくてもいい、しみじみと幸せだな、と思う瞬間って何回あるでしょうか。

私は、たくさんの人にそんな貴重な瞬間を与えるおやつ、それを創り出すパティシエってやっぱりすごい、と改めて思いました。
で、名は何と申すのじゃ!!(しつこい)

「俺、このお店が近所にあったら毎日来てしまうわ」

わーかーるぅーその気持ち。あなた方も遠方から来ちゃった系?

背後から聞こえる男の子の声に心の中で相槌を打ちながら、『パンプキンプリンのタルト』を箱に詰めてもらって、お店を後にしました。

またビシャビシャになって帰宅した後には、美味しいコーヒーとスペシャルなおやつによる、至福のひとときが待っていました。

ああ、私も、幸せ。


#日記 , #エッセイ , #おやつ , #パンプキンプリンのタルト , #スイーツ , #パティシエ , #幸せ , #ごほうび





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