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出会いについて たとえばおかひじき たとえば祈りの音楽

すばらしい出会いとは、突然やってきます。

それは向こうからやってくる場合もありますが、たいてい私の中の私という犬がここ掘れわんわんと鳴いて、そう?ちょっと面倒だけどじゃあ掘ろうかしら?と腰を上げると、なんとまぁこれはこれはすばらしいものに出会った、となるわけです。

鳴けば、かなりの確率でそうなります。

因みに私の中の私という犬は、本田選手が言うところの、心の中のリトルホンダとは異なります。このくだり要るかな。

出会ってきた素晴らしいものはさまざまですが、主には人や芸術との出会いこそが人生をいろどり豊かにしてくれる大切なものだと考えていました。

しかしながらあの頃叫ばれた、そして今後も何かあればきっとまた叫ばれるであろう不要不急とは一体誰にとっての不要不急なのかと、さまざまなものが分断された中で私の中の私という犬はしょんぼりと尻尾を垂れ下げておりましたが、その中で出会ったのが「食」でした。

「食」って人にとっては生命を維持するための役割だけじゃなかったのだ、と。

これまでもそうであったはずなのに、当たり前のように毎日それがあるものですから、わた犬(何やそれ)が感知も検知もせず見落としていたのです。

分断された世界の中で、食べるものを作るしあわせや誰かと一緒に食べるしあわせを、更には両親が身体を悪くしたことで、何も気にする事なくおいしくごはんが食べられるしあわせを、わた犬が発見しました。


例えばそれらとの出会いは、日常のほんの些細な場面で訪れます。


先日、いつもとは違うスーパーに立ち寄る機会があり、そこで生まれて初めて目にしたのが『おかひじき』でした。

店頭POPに書かれた内容を読み、一見すると海藻に見えるけどどうやら野草らしいという事を知り、ユニークなその見た目と100円というお手頃価格に興味をそそられて、何に使うかも決めていませんでしたがひとまず購入してみました。

自宅に帰り、調理法を調べるべく袋の裏に記載されている文章に目を通してみると「お料理前の下ごしらえ」が丁寧に紹介されていました。


はじめに根元を1cmほど取り除き、流水でさっと洗ってください。


オーキードーキー!まずは根元カットね!



もじゃ


いや根元どこ。
私には全部が根元に見えるけど?

ネックレスのチェーンが絡まったレベルの絡まりじゃないし、複雑な人間関係の絡まりより絡まってる。

何かトンチでも利かせればこの謎は解けるのだろうかと、しばしもじゃもじゃを凝視していました。
これは何か私に与えられた、重要な“問い”かもしれない、と


どのぐらい時間が経ったでしょうか、私は1つの解に辿り着きました。
悟りではありません、血眼になって「おかひじき 根元」「おかひじき 根元 ほぐし方」と検索しまくった結果です。


1つ1つ、ほぐしていくしかない。

このような便利な世の中になりますと、複雑で手間のかかる事をまさか地道にやっていくなんてそんなバナナと敢えてダジャレを挟みつつ冷笑しがちなのですが、それが答えなんだという事もあるのです。

えー…ほんまにそうなんかな。
そんなバナナ。

私はおかひじきに安易に手を出した自分を少し恨みながら、ちみちみとほぐし、根元らしき部位を発見しては取り除きました。
そして、途中放り投げ出しそうになりながらも、何とか1つの料理へと昇華させました。


『おかひじきと梅肉のおにぎり〜いぶりがっこ添え〜定食』

器の落ち着きの無さがすごいし
三つ葉が明らかに溺れてる


まだくすぶってんの?

くすぶってんじゃない、いぶってんの。

おいひい。
もぐもぐ。

最高に、おいひい。

おかひじきのシャキシャキとした歯応えがアクセントになり、時折感じる梅肉の酸味との相性もバッチリです。

また1つすばらしい食材と出会えた事にとても満足しています。


そして最近、中村佳穂さんというミュージシャンを知りました。

細田守監督の『竜とそばかすの姫』がAmazonプライムで公開されましたので遅ればせながら鑑賞しましたところ、私の中でストーリーや作画など全てを凌駕したのが、主人公の声でした。

おやおやワンワンと、この素敵な声の持ち主は誰なのだと掘ってみたところ、中村佳穂さんというミュージシャンを知り、YouTubeに辿りつきました。

『忘れっぽい天使/そのいのち』

この曲たちに、この歌声に、救われる人がどれほどいるだろうかと想像してみます。やり場のない“どうして”に、一つの光の道筋を示してくれているようです。

重みのあるフレーズと、言葉遊びのような軽く跳ね上がるフレーズとが入り混じっていて、人が感じる言葉にならない想いのようなものがあるとするならば、それを掬い上げるような祈りが込められた歌でした。

そしてご本人がとてつもなく素敵な存在であるという事が伝わってきます。

何においても、それを作り出す人の生き様といいますか総合的な観点から見た素養というものが染み出すからこそ、作品を通じて私たちの心が動かされるのだと改めて感じた出会いでした。

私は音楽に詳しいわけではありませんが、それでもいくつかのとりわけ愛する曲があります。 

たとえばそんな音楽を通じた、人との繋がりやコミュニケーションなんかがありますと、それもすばらしい出会いだと、わた犬は尻尾をパタパタふりながらとても喜んでしまうのです。


それにしても例えのコントラストがえぐい。


#日記  , #エッセイ , #料理 , #おかひじき , #音楽 , #中村佳穂 , #出会い





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