ドイヒーなおやつを持って帰省するゴールデンウィーク
ゴールデンウィークに関するダジャレを教えてください
ChatGPTに訊ねるとものの数秒で丁寧な解説まで添えられた3つのダジャレが返ってきました。
なるほど、と。
どういう意味、と。
因みに私の予定はノーメダル級です、と。
天才かて。
深夜1時、その日夕方からの帰省を前に重たい気持ちを抱え込んだままベッドに潜り込んで、ChatGPTと戯れるもクスリとも笑えず薬にもならないダジャレにため息をつき、少しでも気持ちをアゲるにはどうすればいいんだと考えていました。
大型連休には帰ってきて欲しい、などといった両親からの要請があるわけでもなく、いい大人ですので好きに自由に過ごせばよいわけなのですが、いい大人になればなるにつれてそうもいかなくなるのがどうやら性分のようです。
年老いた両親はともにここ2年の間で病気や怪我を患い、2人で自立した生活ができてはいるもののやはり心配は尽きません。
彼らの老いと直面しなければいけない憂鬱を抱えつつ、こういった大型連休の数日間は寝食をともにする事に決めています。
それはもう義務やら奉仕やら情やらが複雑に絡み合った先にあるもので、歳をとるとはそういう事と切っても切り離せないのだから腹を括ってできる限り最善を尽くしていこうと前向きに捉える一方で、超ド級の田舎にある実家の空気やそこに暮らす両親というのは、幼少期から時間が止まったままのようで、そのノスタルジーの海に溺れないよう、気持ちを張りつめておかねばならないのです。
せーので肺に息をいっぱい溜めて、
どぼんと海に飛び込んで、
数日したら水面に顔を出して、
思いっきり息を吸う。
そんなイメージでしょうか。
朝目が覚めてノロノロと亀の歩みで身支度を始めたところ、ふとキッチンにある小麦粉の袋が目に止まりました。
デュラム小麦粉。
数週間前に、店頭でそのやわらかな黄色に興味を惹かれて思わず買ってしまった小麦粉は、何を作るか決められずにキッチンの棚に置かれたまま、今か今かと出番をまっていました。
スコーンでも焼いて帰るか。
手作りであれば塩分制限が必要な父も安心して食べられるし、控えめな甘さが好きな母もスコーンなら喜ぶだろうという思いつきでした。
デュラム小麦粉でうまくいくのかわからないけど、失敗したとて両親に食べさせるだけの話しなので問題はないという心の声はしまっておき、私は早速材料を計量して作り始めました。
粉類が入ったボウルに角切りにしたバターを投入し、手ですりつぶように混ぜていきます。
ポロポロからサラサラの手触りになったら、牛乳と卵と塩をほんのひとつまみ入れて生地をまとめていきます。
早速明らかにいつもとは違う手触りを感じて不安を覚えましたが、もう後には引けませんのでそのまま前に進むしかありません。
生地を冷蔵庫で寝かせている間に帰省の準備を進めていると、予想以上に予約した新幹線の時間が迫っている事に気が付き、慌てて生地を型で抜いて180℃で30分焼きました。
焼き上がる頃にはもう家を出ねばならず、火傷しそうに熱いスコーンを一体何に入れて帰省すれば良いのか、迷う時間もないのでとりあえずジップロックに入れたあと、封をあけたまま手提げの紙袋へ放り込んで家を飛び出ました。
猛ダッシュで在来線を乗り継いでようやく新幹線の駅に着き、ギリギリ車輌に乗り込みました。
席に座って手提げ袋の中を見ると、窒息しそうなスコーンズが息も絶え絶えこちらに何かを訴えかけているようです。
私はひとつ取り出して、恐る恐るひとくち頬張ってみました。
そうだなァ。
銅メダル噛んだらこんな歯応え?
メダルはもういいって?
そんなスコーンをたずさえて、実家へと到着しました。
迎えてくれた母に紙袋を差し出し、家で作ってきたけれどかなり硬いので基本的に自分が朝ごはんとして食べるつもりなのだが、もし食べるなら半分に割って焼き直して、と伝えました。
「aotenちゃん、お母さんスコーン大好き。今食べていい?」
そう言って袋から取り出した母に、めちゃくちゃ硬いから絶対に割ってから食べて!と、まるで危険物を扱うかのように注意喚起すると、にっこり笑って手で半分に割り、一口ぱくりと食べました。
「aotenちゃん、味はおいしいけど、お母さんが知ってるスコーンとはちょっと違うみたい」
2023年、ゴールデンウィークの幕開けです。
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