Franz Kafkaの墓標/雨月日記

F.Kafkaの墓標

Franz Kafkaの墓標
 
 「僕が死んだら、一切の作品は燃やして下さい。」
 
 その墓標には何が書かれているのであろう。裏切りの中で生きてゆくことは、悲しみのない存在ということに他ならない。
 
 F. Bauerへの手紙は、他人の手で書き直しても誰にも届かない。Prahaの街を歩く幽霊に、風は吹いていない。
 
 F. Kafkaに、僕もまた。つまりは、それを書かなかったから、そうでもないと思われた。
 
 僕は彼の最初の本を、墓石に見立てて苦瓜を買いに行き。部屋に戻って墓前に供え、それから背を向けて詩作を続けた。
 
 『僕が生きているなら、全ての作品を燃やさないで下さい。』

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