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読書録📚撤退論

政治へのアンテナを立てるシリーズ。
内田樹さん編、15人の寄稿者による
日本の"撤退論"を読んでいます。

✅2100年の人口は、4771万人

総務省によると、今から80年の間に人口は7000万人減少する(中位推計)。
年間90万人、毎年県が一つずつ消滅していくペース。
海外からの移民で補えるか?

✅日本人は、移民を受け入れる成熟度に達していない

日本在住の外国人は、現在290万人(出典)。
たったそれだけなのに、外国人技能実習生への暴力事件、入管での人権無視事案など、日本社会は「異邦人」の受け入れ能力が悲しいほど低い。

「他者」と共生できるほどの市民的成熟度に達していないうえ、そもそも緊急に必要なことだと認識されていない。
人口減を移民で補うのは不可能。

✅"国力低下"を直視する為政者がいない

日本の為政者は、
「失政を絶対に認めない」
が成功体験として記憶されており、そのスタンスを崩そうとしない。

国力低下にどう対処すべきか?
という"撤退シナリオ"を議論しようとしない。もしくは、国民に開示する気がない

✅日本は"老人国"で世界のトップを走る

先進国は次々に老人国化している。
中国の中央年齢は今37.4歳でアメリカと同じだが、2040年には今の日本のレベル(48歳)に達する。
韓国も2019年の5165万人をピークに人口減、2065年には高齢者比率は日本を抜いて46%に、OECD加盟国首位の老人国になる。
その高齢化トップを走るのは日本。

内閣府HPより

だからこそ日本には、
「子どもが生まれず、老人ばかりの国」においても、"人々が豊かで幸福に暮らせる"制度モデルを、世界に対し提示する義務がある。

だからこそ、高齢化社会でも人々が幸せに暮らすための"撤退論"を論じる必要がある。

***

以上がまえがきです。
15人のうち、とりあえず内田樹さんの撤退論を読みました。
以下まとめ↓

✅シナリオは「集中」か「分散」

人口減に対処する政策的なシナリオは

「列島内に人口過密地と過疎地を作り出す
or
「列島内の津々浦々に広く薄く分散

の2つしかない。

どちらが適切化の議論がないまま現在の日本では、都市圏への資源の一極集中が着々と進められている。

五輪、万博、カジノ、リニア、すべては
「都市部への資源集中」につながる。
(新幹線や橋も同様)

「コンパクトシティ構想」「デジタル田園都市構想」「スマートシティ構想」
すべて「資源を地方都市へ集中させ、それ以外の里山エリアを過疎化・無住化する」シナリオ。

✅中学生たちが口にする不安

「わが県内の人口減少地では、行政サービスが次第に削減されています。過疎地に住む県民は、都市部に住む県民より冷遇されても仕方がないのでしょうか?」
と内田さんに質問した中学生。

JRの赤字線の廃線。
道路やトンネルの老朽化。

都市部の納税者は、補修に税金を投じることを受け入れるだろうか?

都市一極化が進めば、過疎地はどんどん切り捨てられる。スマートシティも人口減には抗えない。

✅資本主義の前提は「過密」と「過疎」

人が"過密な"状況を作れば、雇用条件を引き下げることができる。
新卒一括採用、就職情報産業による情報管理で「求人に対して圧倒的に多い求職者」が人為的に創り出されている。

過疎地から「地域住民」がいなくなれば、「地域住民の反対」もいなくなる。
これはビジネスにも有利。

✅「野生」と「人間」の領域を分ける過疎地

里山は、野生の自然と人間の文明の緩衝帯。
そこに里山消滅リスクがある。
ガードマンに警備させたり、鉄条網を張ったり、コンクリートの壁を作るくらいでは、野生の侵入は止められない。
人間がその環境を糧として生活していることが必要。
「囲い込み」論者はこのことを理解していない。

おわりに

27年後の2050年の平均年齢は51.3歳(出典)。

参院選で当選した人の平均年齢56.6歳は、83歳になっていると考えると、未来のことより今の短期の利益を優先してしまいたくなる気持ちもわかるような気がします。

みんな最終的には高齢者になりますが、これから生まれてくる若い人たちが頑張って働いたお金を、
「特に困ってはいないけど、もらえるお金だしもらっとくか〜」
と医療費や年金として受け取っている今の制度のままではもう回らない。

日本は完全に回らなくなった状態からしか変われないのではと、私は諦めの境地から政治に興味を持てなかったのですが、こうやって、自分さえいなくなった未来の日本のことについて真剣に考えている人がいるんだよなと、私も、私なりの意見を持ちたいと思いました。

あと13人分の撤退論がとても気になる。
じっくり読みながら、一緒に考えつつ自分の意見を構築していきたい。

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