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健気な連想ゲーム

問題を出そう。
「リレーでバトンを渡すための範囲の事をなんというか?」
中学生でこの問題を通った方がほとんどではないだろうか?正解は「テイクオーバーゾーン」である。なんとなく聞き覚えがあるだろうか。単純な暗記問題だ。僕は「テイクアウトゾーン」と書いた。持って帰るな、渡せ。教科担当だったか友人だったか、そんなツッコミをされたはずだ。隣の隣の席のコミネ君も同じ回答をしてたっけか。なんなら隣のクラスのヤマザキ君は「テイクオフゾーン」と書いていた。飛ぶな、走れ。

また中学生の問題を出そう。
「日露戦争後から大正末年にかけ、政治の世界を中心に現われた民主主義的、自由主義的傾向を大正( )という。( )に入るカタカナを答えなさい。」
言わずもがな「大正デモクラシー」である。カタカナというワードが大きなヒントになっている。僕は「大正ロマン」と堂々と書いてバツをもらった。苦手な社会のテストで、なぜかこれだけは合ってると自信を持って書いただけに少しだけ凹んだ。愚かな少年である。

興味のない分野への勉強は苦手だ。誰しもそうだろう。特に体育の後眠くなった授業中なんて風が気持ち良く、陽が差し込んだ教室の席で見た夢は心穏やかなものだったはずだ。

だがその朦朧とした意識の中でなんとか覚えている記憶の糸口から、言葉を繋ぎ知っている正解を捻り出す。中学生の記憶の連想ゲームから導き出された誤答たちは、自分で言うのも何だが、何となく健気で愛おしいものである。
可愛げがあるこの間違いを、生徒想いのあの先生たちは微笑みながら採点していたのだろうか。懐かしい笑顔になんだかまた会いたくなってしまった。お変わりなく、元気で過ごされているだろうか。

最後に問題を出そう。
「伊藤博文を暗殺した韓国人の名前を答えなさい。」
正解は「安重根(あんじゅうこん)」である。選択していた教科によっては聞いた事のない名前かもしれない。僕は当時答えられず空欄でバツをもらったはずだ。答案返却の際、友人はピカーっとした満面の笑みで「ジャン・ソニー」と書かれた答案を僕に見せてきた。

お前のそれは、さすがに可愛げがない。

無題220-20220902045104


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