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「なぜ」と問われない日本文化のコンフォートゾーンーーラミレスとパットンの言葉から

野球と日本文化

 先日こちらの記事に書いた、ラミレス来日当初のエピソード。

 たくさんの"Why?"に直面するうちに、「郷に入っては郷に従え」を実践し、自身の姿勢を変えて、日本の野球を理解するよう合わせるしかないと決めたラミレス。

 そして彼は通訳から、「野球以外の日本文化にも触れるといい」とアドバイスを受ける。最初はそのアドバイスに懐疑的だったが、徐々に心境に変化が出てきたという。
 野球も、自分が属する文化基準に沿って築き上げられている側面が大きい、と感じ始めたそうだ。

 仮に疑問を感じたとしても、「なぜならそれは『日本の野球』だから」と受容するように自分に言い聞かせ、ひとまず周りに合わせて「わかりました」「頑張ります」という姿勢を持つようにしてみたのである。〈アレックス・ラミレス「CHANGE!(チェンジ!) 人とチームを強くする、ラミレス思考」(KADOKAWA)より 〉

 ベイスターズのパットンも来日当初、ほとんど同じようなことをこちらの手記に書いていた。

Learn to take things in stride, and don't ask "why." Simply respect the Japanese traditions, history, and culture. Sometimes, it’s hard to grasp certain concepts and it’s difficult to not ask “why?” You will most likely walk away scratching your head. But when you find yourself wanting to ask that forbidden question of "why," just tell yourself "Ah, Japanese Style," and all will be right.

 二人は日本において何かに疑問を抱いても、「なぜ」と問うのではなく、「日本のやりかた」として受容することを学んだという。

 ラミレスは著書で、これを「日本文化の象徴の1つ」とし、プロ野球にも深く浸透していると述べる。そして、これに気づけるかどうかが、外国人が日本を理解する上でのキーポイントだとしている。

問われないことのコンフォートゾーン

 外国人の「なぜ」に正面から向き合わず、このような態度を外国人に取らせ続ける。これは日本人にとって、異なる文化から学ぶ機会を減らしていくことにならないだろうか。
 と思う一方で、自分が外国人にこのような態度を取らせない自信が100%あるかというと、ない。

「なぜ」と問われない空気が、きっと日本に住む大勢にとってのコンフォートゾーンなのだ。コンフォートゾーンと気づいていないぐらい、私たちの意識に染みついているのではないだろうか。気づいていないから、「なぜ」と問われると戸惑うのだ。

 自分たちのやり方は時に「なぜ」と問われるものである。そのことを、常に自覚することも必要なのかもしれない。

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