見出し画像

Lucifer 幽霊館の薔薇の庭篇


今日はずっと書きたかったLucifer Luscious Violenoueというアーティストのことを。

画像1

自分も知ったのは随分あとになってからで、CDを買い集められたのも2017年と近年。
ルシファが活動していたのは90年代の終わりで世紀末の頃。

幼馴染の黒羽からCDを借りて知った。
彼女については前回のこの記事に紹介している。

ルシファの歌は独特だから、かなり好みが分かれるというか、ごく一部の人にしか全く響かないと思う。けれど、琴線に触れてしまう人には永遠に忘れられないような存在になってしまうんじゃないか。

好きなバンドは幾つもあるし、あまり多くはないけど行ったライブも良かった。

それでも、ルシファの存在は宝箱の奥にあるような、滅多に付けることのない大切な指輪みたいなもので、他とは違う種類のものだ。


ルシファが出した数枚のCDのなかで、好きなものは『Do you remember the Rosegarden of Hauntedrealm?-幽霊館の薔薇の庭を覚えてる?-』
『薔薇の哲学、堕天の美学』
この2枚。『鎖に繋がれた天使』も好きだけれど、聴きやすいのはこの2枚だと思う。


幽霊館で一番好きなのは『夢の果てまで』

二人で現実から逃げ出して、夢の果てまで行こう、という内容。

アスピリンも精神安定剤もダストシュートに放り込んで行こう。そしてパスポートもない、身分証明もいらない国も名前も持っていけないところへ。だって薔薇がその名を、これきり捨てたとしても、あまい香りならそのままだから。

薔薇の名のフレーズはシェイクスピアが元かな。とても好きなフレーズ。


Velvet goldmine

抱いてる記憶も、切なく溶けてく想いもハードディスクに全部閉じ込め
君の望み通りの僕になってしまいたいのに。君が夢みてるような僕に、成ってしまえたら、いいのに。そして君の望むものと、君の愛するものだけで、世界を、満たすことができるなら

タイトルは映画の事かな?
あのグラムロックをオスカーワイルドで飾り付けたような映画も、とても好き。


WENDY

僕はもう全部見てきてしまった。全てを知ってしまったから、もう朝など見ないで目覚め昼間は悪い夢の中。最終回まで知っている僕の躰は鉛の様で、翼は単なる飾りに変わり、心臓だけが喘ぐ。
どうやら僕は大きくなって、大人になってしまったから、もう妖精たちの仲間じゃなくて、地面の上で足掻いてる。
ねえ WENDY、いつか君も僕と同じ大人になる。その日、君の羽根は何処へ消えてしまうの?


インナーチャイルドみたいに、こんな自分がずっと居るけど、この想いがいちばん強かったのは少年装が似合わなくなった時。似合ってない格好ならしたくなかったから、もうしなくなったけど、本当に好きだった。実際、他人から見て当時似合っていたかは判らないにしても。

画像2

これがそういう格好としては最後だった。写真用だからこれで外出はしてないけどね。

今はそれでも、その歳その歳の美しさや在り方はあるはずだと思えるようにはなったので、服装の部分についてだけは苦しくはなくなったかな。あまり着飾らなくなったし。けど、きっとまた生きれば生きるほど寂しい思いもするんだろう。

他の曲も全て好きで、手紙を書く時に聴くことが多い。

ルシファの甘く中性的な声と容姿、世界観は本当に綺麗で、未完成の少年少女の美しい揺らぎを、繊細に造ってる。
性別や年齢に戸惑う時期を閉じ込めたような円盤。

文学や映画の透けて見えるような言葉の並べ方も、萩尾望都や竹宮惠子、長野まゆみ、ギムナジウム文学に惹かれる人にはきっと届くものがあると思う。人間の穢さや社会の現実に抗う葛藤の切なさが美しく描かれているように感じる。情景が浮かびやすくて、秘密の花園の薔薇の木陰や、香り立つ花々の色彩、孤独の夜闇、積み重なった古い本、風に揺れる窓辺のカーテン。そんな場面を観てるみたい。

歌い方としては、宝塚テイストのミュージカルを聴くような感じかな。
好みな人は少ないんだろうと思うけれど、ルシファを書かないわけにはいかないってくらい、大切なアーティスト。

夢みるように歌い、感情に息を詰めて、音楽から香りを連想させる事ができるひと。現実味の無い、記録の少ない、今はもう消息すら解らないひと。自分にとって、なんだか下弦の月のアダムのようなアーティストだ。ネット社会に照らし出されてしまいきる寸前に、ルシファは時を留めることに成功したのかもしれない。


薔薇の哲学の方は、物語の一枚で、長くなるので記事を分けよう。


これまでサポートくださった方、本当にありがとうございました!