青い絵のはなし。
2016年3月
上野の東京都美術館へ、ボッティチェリ展へ。
モネの時と同じ友人に付き合って貰った。
ボッティチェリは意外と少なくて、ボッティチェリの師匠と師匠の息子、ボッティチェリがいた工房の人の作品と、関連作品が多かった。
この時代の絵は板に描いたものが多くて、保存や移動が難しいらしい。
とはいえもちろんボッティチェリも色々あったわけだけれど、でもあの今回の展示のメインである聖母子のインパクトが凄くて、他のは正直よく憶えていない。
背景に描かれたボタニカルアートに近いような薔薇が綺麗だったなぁとか、そんなことはなんとなく憶えてたり…
聖母子の絵は思ったより遥かに小さかったんだけれど、すごく存在感があって綺麗だった。
そこだけ四角く別の空間が繋がってるみたいに目を引く。
奥行きのある絵で、ラピスラズリを使った深みのある青がとても鮮やかで。煌めく金の刺繍は本物みたいに浮いて見えた。
あの絵があまり鮮やかで、他の絵は印象が薄くなってしまった。
ラピスラズリを使った顔料はウルトラマリンと呼ばれていて、海を越えてきた青っていう意味が込められていると読んだことがある。
きっとたくさんは使えなかったろうから、絵も小さいのかな…? 他の事情があったのかもしれないけれど。
クレオパトラのアイシャドウもラピスラズリだったけれど…ラズリは青や空の意味。天空と冥界の神オシリスの石。
昔から夜空のようで大好きな憧れの石だ。
師匠の息子の絵も、透けるような白皙の肌の美しい絵で、柔らかくてとても綺麗だったんだけど、宗教画としては柔らかすぎる印象があった。
ボッティチェリの絵は無表情に近くて、線も明瞭に見えるような、厳粛さがある感じ。
前にドイツのクリスマスマーケットを特集した番組で観たけれど、クリスマスまでの一ヶ月、エンゲルシュピールってイベントで、市庁舎の窓に街の子供の応募の中から選んだ子に天使役で立って貰うってやつ。
なかなか天使役なんて出来ないんだけど、選ばれた子は子供の憧れだと。
そして、その窓に立って天使を演るには、優しく微笑み過ぎたらダメなんだと言っていた。
親しみやすさより、近寄り難い美しさがなければならないって。
ボッティチェリを観た時にそれを思い出した。
ボッティチェリのほうが、宗教画としては相応しいのかもしれないなって。
西洋美術館の常設へも行って、こちらはとても数が多かったから、色んな絵が観られた。
有名な画家の絵も色々あったけど、特に強く印象に残るものは無かったかな…
名画と名高い作品ていうのは、やっぱり名画なんだなぁと改めて感じたりした。同じ画家でも、それは全てが名画ってわけじゃないんだなと。もちろん好みはあれど。
ルーベンスもあって、自分の中ではやはり大多数がそうであるようにネロのイメージがなんとなくあるくらいで、記憶が適当でダヴィンチみたいな絵だったような曖昧な記憶しかなかったんだけれど
あったのは宗教画じゃなくて色合いがロココ調な感じで…こんな色の画家だったのかと意外だった。
この日の後、ある人から天使の本を頂いて、見てみたらルーベンスのも載ってた。やっぱり明るい色を使っていて、タッチもルネサンス期とは全く違う絵だった。
美術鑑賞の後はあの有名なアメ横を通って、また喫茶丘に行った。ここの卵サンドの塩加減がおいしい。
場所を変えて、駅のカフェでもゆっくり話せた。
お互い現実の中で生きる事と、夢の美しさとのバランスが取れずに不安定に生きているよな、と思った。
お互い今はもうきっとそういう感性に割り振れるものがずいぶん磨耗してしまったね。
だけど他のどんな絵より青いこの絵の記憶に君がいてくれて嬉しいよ。
ありがとう。あとはルノワールの絵のことを書くね。
これまでサポートくださった方、本当にありがとうございました!