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草の花冠

小学生の時
友だちのお姉さんと
一度だけ
ふたりきりで
遊んだことがある

背が高くて
とってもきれいな
お姉さんに誘われて

まだ小学六年のお姉さんでも
ぼくには立派な
大人の女の人に見えた

草原のまん中に座って
お姉さんは器用に
草花でかんむりを作り
ぼくの頭に被せた
「うん。似合ってるよ、きみ」
「女みたいで嫌だなあ、ぼく」
「そんなこと、ないってば」
くすくす、くすくす
太陽のように笑いながら
そしてじっとぼくを
見つめてたお姉さん

どきどき、どきどき
見つめ返すのが
なんだかこわくて
下を向いてたぼく
草原の風が
お姉さんの長い髪と
まっ赤なぼくのほおを
撫でていった

まだ子どもだったぼくは
気付かなかった
あの日どうして
お姉さんが弟と三人でなく
ぼくだけを誘ったのか
どうせ暇つぶしだよ、きっと

きれいで頭もいいお姉さんは
ぼくの憧れの
年上の 女ひとだった

「あねき、おまえのこと
 好きだったんだぜ、あの頃」

そう友だちから聴いたのは
もう大人になってから

あの日の花冠はなかんむり
あれからどうしただろう
あの日の草原に咲いていた花は
今も咲いているだろうか

そしてあの時
ふたりの間を
吹き過ぎていった風は
今頃どこで
どんなラヴソング
歌っているだろう


※松下友香さんの初恋の詩へのお返しです。


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