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チグリス・ユーフラテス

かなしい時もしずかに笑い
うれしい時も心しずかに

目を閉じて
いくつもの
生まれてから今日までの
かなしみを指折り数え
まっくらな夜空に映し出すよに

ひとつずつ
わたしの心から取り出して
まるであたかも
わたしのかなしみが
一粒一粒夜空を照らす
星となるように

大きく夜空に手を広げ
これはみんな
わたしのかなしみ

はるか遠い昔人々は
こんなにいっぱい
かなしい思いを
かみしめながら

生きていたんですね、と

遠い未来の子どもたちが
いつか夜空を見上げながら
ほめて、くれるように

だから今はまだ
この夜空をかなしみで
いっぱいに満たしながらでも
生きてゆこう
あなたと生きていこう

今は
あなたと生きていこう
チグリスとユーフラテス

わたしとあなたのかなしみが
空に映って
遠い異国の人々は
それを、銀河と名付けた

わたしたちが
深いかなしみに泣いている
それが
わたしたちが流す涙だ、とも
気付かずに

空に映し出された
わたしたちの涙を
きらきらまたたく
希望の星、だと
人々はその胸に抱きしめ
祈り、生きた

そして今も
この星の上にみんな
生きているから

やっぱり生きてゆこう
あなたと生きていこう
チグリスとユーフラテス

あなたと生きていこう


※イラク戦争当時の詩です。

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