桜井線

きらきらの地平線
いなほの線上をひた走る風が
降りそそぐ太陽光線と
重なる場所

田園街のステーション

風という名の電車が
降りしきる太陽の
子どもたちを乗せて走る

走るうちに流れ去るのは
いつも四季と人間の影だけ

きらきら地平線上にある
いくつかの無人ステーション
降りた人も乗り込む人も
そこが駅だと気付かない

それが電車だったことも
気付かずに

自分たちが生命いのちだったことも
吹きすぎていったのが
風だったことも

そして気付かない
気付かずに誰もみな
年老いていった

そんな人々の様子を
ただ眺めながら
今日もワンマンカーの
二両電車が音もなく
無人駅を
通過してゆくだけのこと

あの日
見習い鉄道員だった少年が
ベテラン運転手となり

あの日
少年の恋した少女が
今はひとりの
おばあさんになった

それだけのこと

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