ウルトラマン

あなたは知っていましたか
人類のほんとうの敵が何だったのか

それは遠い宇宙からやってくる
凶暴な怪獣なんかではなくて
ほんとうのこの世界には
そんな怪獣なんか
どこにもいなかった

だからあなたは
四角い白黒のTVの中でだけ
たたかっていたんですね
ひとりぼっちで
カラータイマーを
ピコピコいわせながら

あなたが
TVの世界からいなくなり
それから大人になったぼくは

けれどあれから何度も
スプーンをこの手に握り締め
何度あなたに変身できたらいいだろうと
望んだことでしょう

だって怪獣なんか
どこにもいないはずなのに
この世界はみんな

あなたの救いを
まっているのです
今も

そしてやっぱりぼくは
ウルトラマンにはなれないまま

テーブルの上
食べかけのカレーライスへと
もてあましたスプーンを
もってゆくしかありません

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