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【講演会レポート】続・バレンタインに愛の話をしよう。兵庫ひきこもり相談支援センター阪神ブランチ「ひきこもりと愛」(後編)

前編からの続き)

引き続き「ひきこもりと愛」の講演会レポートの後編として、質疑応答の内容からいくつかピックアップしてご紹介する。最後には思わぬサプライズが…!

「ひきこもりと愛」チラシ

ここからは小島先生が質問を読み上げて、渡辺さんと泉さんがメインで回答する。小島先生は講演内容と繋げながら、カウンセラーならではの回答を述べる補足的な役割を務める。

当事者やご家族からの生の声に、3人はどう答えるのだろうか。

Q.ひきこもりの居場所の見つけ方を教えてください。

A.
渡辺:居場所ごとに人や環境が違うので、相性もあるかと思います。「こうしたらいい」という方法はないかと。偶然の出会いや、動いていく中で化学反応が起こるケースもあると思います。

泉:双方向の相乗効果により、愛が深まると思います。自分が理解したときに、相手も理解してくれる。ですので全力で理解してほしいと一方的に求めると、関係が破綻すると思います。理解したい人が1人でもいる場所を見つけることが、近道になるのではないでしょうか。

小島:渡辺さんが居場所に行き続けたことで自分なりの接し方がわかったように、粘り強く行き続けることで、やり方がわかる場合もあると思います。

Q.愛には色々な種類がありますが、お二人は「愛」というとどんな愛を思い浮かべますか?

A.
泉:それがわからんのですけども(笑)どうしても一般的な恋愛や親子愛に引きずられますが…僕は散歩によく出かけるんです。散歩のとき鳥を見るのが好きで、可愛いんですよね。可愛いと思うのも、愛の一部かなと思います。

渡辺:やはり親子愛や恋愛かなと。特に子どもに対しては理屈ではない感覚なので、これが愛かなと思っています。

Q.彼女の作り方を教えてください!

A.
泉:見ての通り登壇者はおじさんばかりなので、ここで聞いても偏りがあると思いますが…(笑)少なくとも、人と関わる場を持ち続けることではないかと思います。

渡辺:人と会う機会を持つことが大事です。そこから始まるので。また、その人を理解したいと思うかどうかも大切ではないでしょうか。1つでも共通点があれば、次に繋がるかなと思います。

最後に、岡本さんからサプライズが発表された。なんと、泉さんの奥様から愛についての質問にご回答いただき、それを読み上げるという。

「え?僕だけですか?渡辺さんは?」と戸惑う泉さんに会場から笑いが起こる。

岡本さんによると、渡辺さんからは「恥ずかしいから(奥さんに聞くのはやめておきます)」と言われ、泉さんだけになったそうだ。さらに登壇者は男性だけなので、女性からの視点で愛を語っていただくという目的があったという。

さて、泉さんの奥様からは一体どんな回答が飛び出すのだろうか。

Q1.翔さんと出会われて、どこに魅かれたのか教えてください。
A. 出会いは大学のサークルでした。先輩であった夫は、私が入会してすぐに「北海道で農業をする」と言って自転車で旅立って行きました。今までの人生で出会ったことのないすごい人だと感じて、素敵だと思うようになりました。

Q2.翔さんといて、よかったなと思う瞬間があれば教えてください。
A.一緒にいて安心してもらえていると感じるときや、夫が弱っているときには、私が隣にいられてよかったと思います。それから、同じものを大切にしていると思えたときに、この人が一緒にいてくれてよかったと感じます。細かい瞬間については書ききれません…。毎日、一緒にいられてよかったと思っています。

Q3.翔さんといて、ここはちょっと気になる、変えてほしいなと思う瞬間があれば教えてください。
A.頑張りすぎていっぱいいっぱいになってしまうことが多いので、よく心配になります。

Q4.結婚しようと思われたきっかけがあれば、教えてください。
A.大学生活を共に過ごす中で、自然とこの先も一緒にいたいと考えるようになっていたと思います。籍を入れるという意味では、夫が大学院の研究で高知県に長期滞在することになったのがきっかけです。ついて行って一緒に暮らしたいと思い、周囲に対して説得力を持たせるために結婚を決めました。

Q5.奥さんにとって愛とはどういうものでしょうか?どういう影響を与えるものとお考えでしょうか?
A.愛する人がいることで、結果的に強くなれると思います。ただ何かのために愛したり、愛のために何かをしたことはなくて、いつのまにかそこにあったものでした。

この奥様の回答を聞いたときに、私はそこに確かに「愛」があるなと感じて、心があたたかくなった。泉さんご自身はなぜ愛されているかはわからないとおっしゃっていたが、奥様は確信を持って愛していらっしゃるのだなと感じた。

男女には性質の違いの傾向があると仮定した上で推測を言わせてもらうと、男性の方は愛されている理由はよくわからないことが多いが、女性の方は愛の理由に確信を持ってパートナーを選んでいるのではないか。お二人の話を聞いて、ふとそう思った。

最後に、小島先生のカウンセラーならではの質疑応答の答えでレポートを締めくくらせてもらう。

Q.ひきこもってしまう仕組みは何でしょうか?

A.私はひきこもりに仕組みはないと思っていて、1つの人間のあり方だと思っています。例えば専業主婦である方が主婦である仕組みを聞かれても、答えられないでしょう。それと同じで、ひきこもりはその人が「必要な状態」です。また、渡辺さんがご自身の不登校経験をマイナスからプラスに思うよう変わったとおっしゃっていましたが、先の未来から振り返ると、自分の人生の意味が変わります。「どう」捉えるかで変わってくるのです。

「ひきこもりは1つの人間のあり方」という言葉は、目からウロコだった。私自身、自分の過去のひきこもり経験を何となくネガティブに捉えていたことに気づいた。しかし、ひきこもり経験自体に「良い・悪い」はないのだ。それは他人が決めることでもなく、自分の捉え方次第で変わることなのだ。

当初は「愛」というと壮大で掴みどころのないものだと思っていたが、この講演会を聞いて愛の一端が見えたように思う。
愛とはお互いが理解し合う中で自然と生まれ、そこに「ある」ものであり、心や魂が近づくことが愛なのではないか。また、親から子への「無償の愛」もある。兎や鳥を可愛いと「愛でる愛」もある。

色々な愛の可能性を考えさせられた講演会だった。

末筆ではあるが、講演会レポートのアップにあたっては主催者の岡本さんのご厚意により、泉さんの奥様への質問と回答の文章をご送付いただいた。心からお礼を申し上げる。

講演会があたたかい雰囲気に包まれていたのは、ひとえに岡本さんの人柄によるものだと思う。

この講演会のレポートが、読者にとっての「愛」を見つけるきっかけになれれば幸いだ。

※タイトル画像はフリー素材「PexelsのLeah Kelleyによる写真

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