2人しか知っている役者がいなかった。岸井ゆきの、すごい女優になった。【鑑賞後感想】『ケイコ 目を澄ませて』
本がそうなように、映画も渋滞している。それに加えてアマプラを知って、自由度がぐんと増した。最新の映画の中では、『NOPE』『アルピニスト』『KAPPEI カッペイ』『鳩の撃退法』などが次に観たい映画群だ。
でもね、見つけちゃった。『ケイコ 目を澄ませて』だ。気になってはいた。
そう、この作品で岸井ゆきは第46回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した。そのことを覚えていた。
岸井ゆきの、彼女をはじめて知ったのは松本潤のドラマ、『99.9』だった。彼女は端役だった。端役? いや、強烈にインパクトがあったから端役とは呼ばないのかもしれない笑 かなりコメディだった。
次に、主演作の、『愛がなんだ』が浮かんだ。コメントがまだ残っている。抜粋する。
コメント:岸井ゆきの、成田凌の演技がとても良かった。痛いところとクズなところが、見事。面白いが、気持ち悪い映画。現代の、もうすぐ30になる恋愛って、こういうのもあるのかもな、と思って震える。+その他のキャストの深川麻衣・若葉竜也・江口のりこも良かった。にしても、ナカハラがテルコに「幸せになりたいっすね」と言ったシーン。いつまで経っても「好きな人」の「好きな人」になれない2人の会話になんだか切ない気持ちになる。テルコの恋愛中毒。
まあ、内容云々よりも、とにかくこの映画のいいところは、圧倒的に役者の演技力だった。
と、観る前にそんなことを思い出した。彼女は演技派だ。そんなことは知っていた。でも少しばかし、あと少し感があった。おちゃらけ感みたいなものがあって、もちろんそれも良さだ、悪い意味じゃない。
さて、本題だ。
2022年
監督:三宅唱
出演:岸井ゆきの、三浦友和
99分
スポーツ
85点 !!
2020年
小河恵子(岸井ゆきの)
生まれつきの感音性難聴で両耳とも聴こえていない。
2019年
プロボクサーライセンス取得
デビュー戦 1R1分52秒 KO勝利
ケイコ(岸井ゆきの)は、実にいい顔をしている。そう思ったね。
時代はコロナ禍だ。みんなマスクしている。唇が読めない。なんと言っているか分からない。世界が、狭くなる……
ケイコの仕事は、ホテルの清掃員だ。
試合後のボロボロ感。
クソみたいな警察官がリアルだった。耳が聴こえない人の生活をリアルに描いていた。インターホン、たれ流れる水。
まるで父親と娘みたいだった。
そう言えば彼女の母と弟は出ているが、父親はみていない。
低予算映画、ボクシング映画の金字塔『ロッキー』を思い出す。この関係、『ミリオンダラー・ベイビー』の方が近いか……(関係ない話だ。忘れてくれていいww)
漂うセピア調。
もうすぐ映画が終わる。あと20分くらいだろう。そのタイミングがわかった。たまらなくエモい。寂しくなった。
よかった。耳が聴こえない映画と言えば『コーダ あいのうた』、あれは90点だった。とても、とてもよかった。
でもね、『ケイコ~』もよかった。全編をとおしてこの映画で知っている役者は2人だけだった。信じられるかい?日本映画だよ?でも、それが本来かもね。もちろん、岸井ゆきのと三浦友和以外の役者さんもよかった。というか、いい作品だった。そして、その中でも
岸井ゆきのが抜群だった。たぶん彼女がまったくの無名だって、その評価は変わらないだろう。そのくらい素晴らしい演技だった。
そもそもこの『ケイコ~』は完全に岸井ゆきの映画だった。彼女のための映画だった。彼女は、本作で間違いなく役者になった。
どんな役者さんだって、それはもちろん作家でもそうだけど、ある分岐点がある。そういう作品がある。とにかく、岸井ゆきのはケイコで、その線を超えた。それがわかった。
あえて言ってみるなら、超生意気なことを言えば、
ラストのボクシングシーンにおいては、音を消して欲しかった。たぶん、僕はもっと入り込みたかった。
と、
本作において岸井ゆきのは素晴らしい演技をした。が、この役、桜井ユキの方が本線かと思った。もちろん、ある可能性の話に過ぎない。
それと、映画を観ながらずっと、なにか既視感のようなものを感じていた。この感じ、この世界観を知っているような……
前に観たことがある。まさにそんな感じだった。
僕は監督の「三宅唱」を調べた。三池じゃないよ、三宅だよww
そしたらなんと『きみの鳥はうたえる』の監督だった!!
僕は思わず、うおおおって、叫んだよね。ああ、監督の色ってあるんだなあそう思った。
興味があったら『ケイコ~』もいいが、『きみの鳥~』もオススメの映画だ。僕のこの映画で石橋静河を知って、好きになった。きみ鳥も85点。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
また次の記事も読んでくれたら嬉しい(過去記事も)。それでは。