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短編小説 | (笑)

あのとき、先輩は若かった。それなら、わたしだってそれなりに若かったと言えるでしょう。
あのころは、就職する場所は、一生を捧げる嫁ぎ先だと思って探せと、よく言われたものでした(笑)。だからわたしは、雰囲気とか、福利厚生なんかをよくよく調べたのです。最終的には「相性」だなんて、働いてみないとわからないところまで踏み込んだような気になったりして。だけど、わかるわけ無いですよ。わからない。それでも、あちらからのアプローチもあったりして。相思相愛の様相で、めでたく就職しました(笑)。
あとから知りましたが、わりと人気のある就職場所だったようですよ。

だけど、そこでどんな良いことがあったかといえば、大したことはなかったように思います。わたしに関していえば、です。
わたしは同僚に恵まれました(笑)。とくに同期の女の子たちとは、休みの日にも和気あいあいとしていましたよ。今となっては青春の1ページです。
そんな青春の中に、ひとりの先輩についての思い出があります。

先輩は線の細いひとでした。当時人気だったアイドルグループにいてもおかしくはない。だけど、実際はいなかった・・・・・ということが、大きな違いなのでしょう(笑)。男なのに、という言い方はよくないと思われるでしょうが、その時のことですから批判を恐れずに言います。男なのに・・・・、いつも笑顔でした。そして、裁縫が得意でした(笑)。

先輩のご両親は公務員だそうです。先輩は物腰がやわらかく、しんが強かった。だけど、洟をすするときに豚の鳴き声のような音を立てるところが下品でした。きらい・・・だったと言ったほうがいいかもしれません(笑)。
先輩はひとつしか先輩でないのに、仕事でわからないことは全部訊いてくれと言いました。知っていることはすべて教えてやるとも言ってくれました(笑)。年はひとつしか変わらないのに、とても頼りになりました。

そんな先輩を、わたしは好きになりました。だけど、そのときすでに、先輩とわたしの同僚は恋仲になっていたようです。わたしはなにも気が付きませんでした(笑)。常々、先輩からは、物事を俯瞰して見るように言われていましたのに。わたしは、先輩に申し訳なく思いました(笑)。同僚の彼女に対しては何を思ったかと訊かれれば、何も思いませんでした。だって、彼女は、そのあとすぐに振られてしまったのですから。

先輩は転職をしました(笑)。同じ職場に彼女がいては、とても仕事にならなかったのでしょう。先輩なりに、彼女のことを大切に思っていたのです。ところが、先輩はあろうことか、転職先で浮気をしてしまいます(笑)。彼女を裏切ったのです。先輩の浮気相手は看護師で、可愛くって、しっかり者でした。私的なメッセージの交換をしている間に仲良くなってしまったのだそうです。
そうなれば、先輩は自分の気持ちに嘘をつけなくなりました。だから同棲中だった彼女を家から追い出して別れたのです(笑)。全く容赦ない人でした。だけど、こんな話でさえ、先輩は私たちに包み隠さず伝えてくれるのでした。なんとも滑稽です。先輩は、自分を俯瞰して見ることが出来なかったのでしょうね(笑)。




[完]


#短編小説
#まねぶ

試み
①人の文体を真似る
②(笑)の使い方を面白がる。



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